防災教育の取組みを世界に向けて発信する
− 「総合的な学習の時間」における防災教育からの試み −

高等学校全学年・総合的な学習
兵庫県立舞子高等学校
地歴公民 三浦 巡   理科 石井 和則
maiko-hs-ad@hyogo-edu.yashiro.hyogo.jp
http://www.hyogo-edu.yashiro.hyogo.jp/~maiko-hs/
キーワード 高等学校,総合的な学習,防災教育,ホームページ


インターネットの利用の意図
教員の立場からの総合的な学習の時間における防災教育の取組み及び生徒の立場からの防災教育の取組みをホームページで発信する。今後,他校との防災教育や総合的な学習の教育実践の交流や防災についての生徒同士の交流が期待できる。


実践事例1 総合的な学習の時間における防災教育の取組み
教員の立場からの総合的な学習の時間における防災教育の取組みの実践事例を紹介する。
防災教育は以下のような理由から「総合的な学習」にふさわしい題材である。
(ア) 人命に直接かかわる問題(教育の根幹)
 → 防災の基本は「自分の命は自分で守る」
(イ) 人のいるところに起こるから災害
 → 人の関わりから学ぶ(人権・思いやり・やさしさなど)
(ウ) 教科の統合による社会的実践(ボランティア活動等)
(エ) 地域と関わることができる教育
(オ) 幼・小・中・高の一貫した教育
(カ) 阪神・淡路大震災を教訓とした学習
ただ紙面の都合からすべての学習指導案を紹介できないため,残りの学習指導案は本校のホームページ http://www.hyogo-edu.yashiro.hyogo.jp/~maiko-hs/ を御覧いただきたい。

1 授業のねらい・指導目標
総合的な学習の時間における防災教育の取組みが2年目を迎え,継続的にまた多様に行うことをテーマとする。今年はより興味・関心を深めるために,「自ら主体的に動く」をメインテーマにして教科・LHR・特別活動からのアプローチにより,防災教育を総合的な学習活動としてとらえることができるように設定した。

2 指導計画
平成11年度1回目は,プレテストから導入・展開1〜4・ポストテストと展開した。(実践チャート図を参照)

3 学習の展開
3.1 プレテスト・導入(50分)
(1)内容
 (ア) コンセプトマップ作成
 (イ) 太陽光発電システムの見学
 (ウ) 昨年度の実践ビデオの鑑賞
(2) ねらい  防災教育の興味・関心・認識度をはかる。
(3) 学習活動
 (ア) コンセプトマップとは何かを理解する。
 (イ) コンセプトマップの作成手順を理解する。
 (ウ) 作成する。(15分)
 (エ) 太陽光発電システムの設置場所へ見学に行く。
 (オ) 太陽光発電システムの概要を聞く。
 (カ) 昨年度の実践ビデオを鑑賞する。
(4) 実践上の評価
 (ア) 個々の防災教育に対する興味・関心・認識度を理解するには大変役にたった。
 (イ) キーワードを厳選し,手順を理解させれば,あらゆるプレテスト・ポストテストに使用できる。
 (ア) 本校に太陽光発電システムが設置されたのを実感し,感動があった。
 (イ) 太陽光発電システムを通じて,防災教育に興味をもった生徒がいた。
 (ウ) 実物を見せることは,あらゆる教育にも有効であることが理解できた。
ビデオ鑑賞について
 (ア) 同級生や,同校教師が出てくるたびに生徒は興味関心を示していた。
 (イ) 防災教育にいろいろな方法があることが生徒には理解できた。
(5) コンセプトマップ(概念地図)の手順
 (ア) 中心のキーワード(ここでは防災教育)から出発して,関連するラベルを書き加えて線で結ぶ。
 (イ) 線に関連する意味を簡単な文書で書く。
 (ウ) 最初から書いてあるキーワードに線を結んでも良いし,新たなラベルを作って結んでも良い。
 (エ) キーワードやラベルから何本の線で結んでも良い。
 (オ) 中心のキーワード(ここでは防災教育)から離れないように心がける。

3.2 展開1(1) (240分)
(1) 内容
 防災教育とは何か(1)
(2) ねらい
 (ア) 防災教育について学ぶ。
 (イ) 防災について想像し,考え,つくりだす。
(3) 学習活動
 (ア) グループをつくる。(2人から6人)
 (イ) グループであらかじめ決めておいた防災パンフレットの内容を模造紙に書く。(各班でパンフレットを参考に,説明や絵を書く。)
 (ウ) 完成した模造紙を教室に展示し,作業の遅れている班の部分を,作業の早い班が手伝う。(模造紙25 枚)
 (エ) 文化祭時に作成した模造紙を見て,防災教育を学び,互いの出来具合について意見を述べる
(4) 実践上の評価
 (ア) 思った以上に生徒が興味を持って,取り組んだ。
 (イ) 自ら震災時の写真やビデオを持参し,積極的に参加する生徒がいた。
 (ウ) 絵を書くことが好きな生徒は,多くの絵を丁寧に書き,すばらしいものができた。

3.3 展開1 (2) (50分)
(1) 内容
 防災教育とは何か(2)
(2) ねらい
 コンピュータを使い,防災教育を学ぶ。
(3) 学習活動
 (導入)(ア) コンピュータ1台に一人ずつ席につく。
(イ) コンピュータの始動の手順を聞き,CD-ROM(Quake Busters)を作動する。
 (展開1)(ア) 配布されたワークシート (「明日に生きる」実践事例集掲載)を記入しながら,ステップ1よりステップ6までをCD-ROMにより学習する。
(イ) ワークシートがわからないところはもう一度フィードバックする。
 (まとめ)感想を書く。
 今回使用したCD-ROM「Quake Busters」は山口大学と国連地域開発センターが東海地震対策に制作され,東京都や神奈川県,静岡県などの自治体や地域の防災教育に活用されているものである。
(4) 実践上の評価
 (ア) 生徒が生き生きと授業を受けており,感想文もほとんど肯定的であった。
 (イ) コンピュータ授業では,進度も各生徒に応じて行うことができて良かった。
 (ウ) シュミレーションが視聴できることでリアルで飽きさせなかった。
 (エ) 互いにあらゆることを教え合いながら進んだので連帯感がでた。

3.4 展開1 (3) (50分)
(1) 内容
 防災教育とは何か(3)
(2) ねらい
 (ア) 災害時にボランティアは何があるかを考える。
 (イ) 災害時に自分に何ができるかを考える。
(3) 学習活動
 (導入) (ア) グループをつくる。(4人から6人)
(イ) 震災時のことを思い出し,その時のことについて班で話し合う。
(ウ) 震災時の話を教諭からも聞く。
  (展開)(ア) 災害時のボランティアを思いだし1人5つ以上をメモ用紙に記入する。
(イ) 班でメモ用紙を持ちあって,まとめて模造紙にボランティアの内容を書く。
(ウ) 黒板に模造紙を掲示する。
(エ) 班の話しあった内容を発表する。
  (まとめ)(ア) ボランティアの内容と種類・重要性について復習する。
(イ) この授業を終えて実際災害時に何が出来るかを,原稿用紙にまとめる。
(4) 実践上の評価
 (ア) ボランティアについての内容や種類・重要性を考えることができた。
 (イ) 震災時を思いださせ,防災教育の重要性を再認識した。

3.5 展開2 (50分)
(1) 内容
 (ア) インターネットの基本知識の会得
 (イ) インターネットの情報収集・発信
(2) ねらい
 (ア) インターネットについて学ぶ。
 (イ) 災害時に学校が通信システムの拠点となった場合に,インターネットを実際に処理する。
(3) 学習活動
 インターネットの基礎知識を学ぶ。
 WWW,電子メール,掲示板,阪神大震災でインターネットが普及
  (展開)(ア) 災害時にどのような情報が必要かグループ討議をしながら,インターネットで情報を収集し,意見をまとめる。
(イ) 災害時にどのような情報を発信するべきかをグループ討議をしながら,インターネットで情報を収集し,意見をまとめる。
  (まとめ)
今日の話が現実に必要な時がやってくることを心に留めておき,インターネットを実践的に使える力をこれからも養うことを学ぶ。
(4) 実践上の評価
 (ア) 昨年はインターネットの設備がなく,CD-ROMからの情報の取り出しであったが,本年度は設備が整い,実践的な授業ができた。
 (イ) 防災教育だけでなく情報教育としても大変役にたった。
 (ウ) 情報教育に対して,生徒も大変関心が強く,学校教育においての重要性を感じた。

3.6 ポストテスト (20分)
(1) 内容
 (ア) コンセプトマップの作成(プレテストと同じ)
 (イ) 防災教育を振り返っての感想
(2) ねらい
 防災教育をする前と後では,生徒がどれほど興味・関心・認識度を深めたかを評価する。
(3) 学習活動
 (ア) 最初に行ったコンセプトマップを行う。(15分)
 (イ) 防災教育を振り返っての感想を書く。(5分)
(4) 実践上の評価
 (ア) 理解度・関心・認識度が少し上がったという生徒が約7割であり,非常に上がったという生徒も入れれば,約8割強あった。
 (イ) 昨年度と同様,同じコンセプトマップを行うことでかなりラベルと線の量がほとんどの生徒において増加し,理解度・関心・認識度が上がったことが立証された。 (プレテストのところを参照)

実践事例2 生徒によるホームページ作成の取組み
 生徒会およびコンピュータ同好会による生徒会主宰のホームページを作成し,本校の特徴である太陽光発電の施設の紹介や防災教育の取組みなどの情報を発信する取組みを紹介する。

1 取組みのねらい
太陽光発電の紹介のページを作成するにあたり,生徒に取材をさせ,生徒達自身でホームページを作成することにより,防災についてより身近に感じさせる。そして,今後,他校との交流ができることを期待している。

2 取組み内容
平成11年9月にコンピュータ同好会が発足し,生徒会とコンピュータ同好会が連絡を取りながら,生徒会のホームページの製作に着手した。
太陽光発電の施設の取材を行い,原稿を書き,太陽光発電の紹介ページなどを製作した。
週2回放課後の活動で,部員もコンピュータに始めて触れる生徒もいたりして,思うようには進まず,平成11年度の取組みとしては,ホームページ作成までになってしまった。

3 成果と課題
生徒達自身が発信者になり,生徒会による太陽光発電の紹介のホームページが製作することができた。生徒会活動とクラブ活動での活動が主体のため,生徒の自主的な活動に任せているために,情報を発信するまでで終わり,交流するところまではできなかった。今後,各地の高等学校と防災についての交流を行っていきたいと考えている。

ポイント・アドバイス
 平成10・11年度においてカリキュラム的に体系づけて教育実践を行ったが,各学校,先生が気軽に教科・LHR・特別時間割で柔軟にいかして欲しい。
 まずやってみることが大切である。

参考文献
 「明日に生きる」
 防災教育実践事例集
 Quake Busters
   兵庫県教育委員会
   兵庫県教育委員会
   山口大学と国連地域開発センター