テレビ会議システムの活用と僻地校の情報教育の推進

情報教育推進グル−プ
鹿児島水産高等学校 武 一正,徳田 一彦
キーワード テレビ会議,離島,僻地,ホームページ作成,学校間交流


インターネット利用の意図−テレビ会議システムの活用−
 平成7年度からパソコン室の電話回線をISDN回線に切り替えてテレビ会議システムの活用について研究を重ねてきた。
 最初は,鹿児島市内の講演会会場と薩摩半島の西南端に位置する本校とをINSネット64回線で結んで講演会の模様を中継するという本県では初めての実験に参加した。
 鹿児島市内での講演会の様子を本校の図書室に設置した大型スク−リンのテレビに映し出して本校の生徒たちが視聴し質問するという形態であった。
 その後,テレビ会議システムの設置校が増えてきましたので,ここ数年は宮崎市立本郷小学校や本県の郡山町立郡山中学校との交流を毎年続けるようになった。
 また,今回初めて本県の離島の僻地校である奄美大島本島の瀬戸内町立「久慈中学校」との交流にも取り組んでみました。

僻地校の情報教育の推進
 鹿児島県内の多数の僻地校にも最近になって新型の高性能なパソコンが取り入れられ,通信回線もINSネット64の回線がパソコン室にも設置されるようになった。パソコンの教育への活用も始まろうとしている。
 そこで今回は,僻地の3校のホ−ムペ−ジ作成に本校の生徒たちの実習も兼ねてホ−ムペ−ジ作成ソフト「ホ−ムペ−ジ・ビルダ−」を活用して取り組んでみた。
 それぞれの学校には,ある程度資料を提供して貰いながらモデル案を作成して現地で技術講習会を開催しながら,その学校のホ−ムペ−ジを立ち上げるという取り組みであった。3校はいずれも生徒数の少ない僻地の学校であった。


1 テレビ会議交流授業・その1(相手校:宮崎市立本郷小学校指導案抜粋)
(1) 目標
(a) 我が国の水産業について関心を持ち,水産業に従事する人々の工夫や努力について意欲的に調べることができるようにする。
(b) 漁港の特色について漁場などと結びつけて考えたり,育てて獲る漁業の広がってきたわけを漁場の縮小,魚群の減少と関連させて考える。
(c) 主な漁港や漁場,漁獲量などを地図や資料などで調べ,我が国の水産業の特色をまとめ,表現することができるようにする。
(d) 我が国の水産業の特色や国民の食生活の上で水産資源が大切であることを理解できるようにする。
(2) 指導観
(a) 学習する児童たちは,我が国の水産業に対する関心は高く,日常の食卓で目にしている魚について,どこで,どんな方法で,どんな種類の魚を,どのくらいの量,獲っているのかなどについて,グループ別に調べていきたいという欲求は大きい。
(b) これまでの教育機器活用については,パソコンを解決のためのヒントを得る手段や表現活動の道具として活用し,大変意欲的に取り組んでいる。また,フェニックスによるテレビ会議システムを活用した学習について,まだ5年生では行っていないが,4年生のときに数回取り組み,意欲的に取り組んでいた。パソコン操作には個人差が見られるが,徐々にその能力は高まりつつある。
(c) 指導にあたっては,単元の導入において,ビデオなどを使って水産業に携わる人々の漁の様子に触れさせ,様々な気付きや疑問をもとに,興味や関心を高めながら学習問題を設定していきたい。
次に,我が国の主な漁港や漁場,漁獲高などの様子を地図や資料などで具体的に調べたり,水産業の盛んな地域の具体的事例をインターネットなどを活用して調べる活動に取り組めるようにしたい。これらの活動を通して,我が国の水産業の特色や水産資源の重要性の理解を図ったり,水産業に従事している人々の工夫や努力に気付くことができるようにしたい。
(d) 特に本時学習においては,具体的事例として養殖や栽培漁業を中心とした育てる漁業について,水産業に従事する人々の工夫や努力の背景について話し合う活動を通して漁業環境の変化に対応して,国民の食料確保のために漁業従事者が水産資源の保護育成に努めていることが理解できるようにしたい。展開後半では,テレビ会議システム「フェニックス」を活用し,鹿児島県立鹿児島水産高校の先生の話を聞いたり,質問をしたりして水産資源の確保の大切さについて考えることができるようにした。

2 テレビ会議交流授業・その2(鹿児島県郡山町立郡山中学校指導案抜粋)
(1) 指導目標
(a) 先輩の進路選択の時の気持ちや進路先でがんばっている姿を通して,前向きに自分の人生を切り開いていこうとする気持ちを持たせる。
(b) 自分自身が進路を選択していくのに必要な条件を考えさせる。
(c) 現時点での自分の職業希望について,その希望理由を考えさせることで検討・吟味させる。
(d) 働くことの意味について再認識させることで職業観を深めさせ,職業生活を通しての将来の生き方について考えさせる。
(2) 本時の目標
(a) 実際に高等学校で学んでいる生徒の話をテレビ会議を通して聞き,質問をすることにより上級学校についての理解を深め,よりよい進路決定の方法を考えようとする。
(b) テレビ会議をする上でのマナーや礼儀を知ることで,目上の人に対する態度を身につける。
(c) テレビ会議システムの利用について
 
生徒が進路について調べていく場合,身近な人からの伝聞やパンフレットなどから主に情報を得ている。最近では,インターネットを使い幅広い情報を得ている生徒もいる。それに加えて,今回テレビ会議を使うことで興味関心が高まるのはもちろんのこと,今知りたいことや悩みを離れていながらにしてリアルタイムで質問し聞くことができるようになる。このような生きた情報を得ることで進路を検討していくよい動機づけになると考え,授業を設定した。
(3) 評価
(a) 上級学校についての理解を深め,よりよい進路決定の方法を考えようとすることができたか。
(b) テレビ会議をする上でのマナーや礼儀を正しく行うことができたか。

3 僻地校の情報教育の推進(3校)
 
*瀬戸内町立久慈中学校,*上甑村立平良中学校,*西之表市立古田中学
指導学校名:鹿児島県立鹿児島水産高等学校・情報教育推進グループ
講習内容:パソコンの操作,ホ−ムペ−ジ作成技術,情報教育全般について
相手先学校名:瀬戸内町立「久慈小・中学校」(三明 敬典校長)
894−1851 鹿児島県大島郡瀬戸内町久慈253番地
       期日:平成11年11月13日,14日の2日間
相手先学校名:薩摩郡上甑村立「平良小・中学校」(政倉 豊敏校長)
鹿児島県薩摩郡上甑村平良377番地2
       期日:平成11年12月9日,10日の2日間
相手先学校名:西之表市立「古田中学校」(金久 誠次校長)
鹿児島県西之表市古田1225番地
       期日:平成12年1月13日14日の2日間

4 上記の3校での主な講習内容は下記の通りである。
(1) パソコンの操作等を指導した後以下のような内容について実施した。
(a) ホ−ムペ−ジとは,(b) ホ−ムペ−ジの作成,
(c) ホ−ムペ−ジビルダ−の起動,(d) 文字の入力と編集
(e) イメ−ジの作成,(f) 作成したホ−ムペ−ジの保存
(g) ホ−ムペ−ジのソ−スの確認,(h) ホ−ムペ−ジの作成とリンクについて
(i) 鹿児島県総合教育センタ−へデ−タを転送する,
(j) FTP(ファイル転送)について,(k) 今後の更新について
(l) 電子メ−ルソフトについて,(m) 電子メ−ルの送信と受信について
(n) 情報教育全般について,(o) テレビ会議システムについて
(p) ホームページ作成ソフト,画像関係ソフト等について,
(q) その他データ管理やパソコン操作等の普段の疑問について質疑応答
(r) 最終的に「鹿児島県総合教育センタ−のサ−バ・コンピュ−タ」の中に作成したホ−ムペ−ジを立ち上げるまでの指導と確認であった。

5 *「上甑村立「平良小・中学校」の概要」*
 東シナ海に浮かぶ甑島(こしきじま)は「鹿の子百合」の群れ咲く豊かな自然環境に恵まれた島である。当校は,同一敷地内に幼・小・中の校舎が四季折々の草花に囲まれて立っている。同一校長のもと,生涯学習の基礎を培い地域住民との連携を工夫した開かれた学校経営を推進している。教職員は,新しい学力観に立つ確かで豊かな学力を,生徒が修得するよう実践的研究を累積しており,学力水準もきわめて高い。
 人口は,男性196名,女性208名,合計404名の漁業を中心として生計を立てている集落である。戸数は192戸で生徒数12名の複式の2学級の構成であった。また,子供の教育に対して関心が高く,高校進学率も昭和49年度卒業生以降ほぼ100%に達している。

6 *「西之表市立「古田中学校」の概要」*
 本校は,種子島の内陸部にあり,海抜約120mの古田盆地に位置している。
西之表市街地より,約11kmの距離にあり,緑に囲まれた古田小,鴻峰小の小学校区より成り立っている。
 気候は高温多雨であるが,冬季は降霜もあり,島内の最寒冷地といわれている。古田校区,鴻峰校区が11の集落に分かれ,盆地の一部や丘陵斜面,台地等を利用して農耕が行われている。大部分が農家で専業農家が60%を占めている。

 主要作物は,水稲,さつまいも,さとうきびで,特産物としては,全国一のはしり新茶としての番屋峰の茶が最も有名で,そのほか,タバコ,柑きつ類等がある。
 校区民は,人情に厚く,親切かつ穏健で,学校教育に対しては極めて協力的である。
 人口は,287世帯 男子330人,女子376人 計706人 生徒数は14名であった。

7 *「瀬戸内町立「久慈小・中学校」の概要」*
 明治7年に開校し瀬戸内町内でも歴史の古い学校である。(今年で開校124年目)
また,町内の学校では珍しくプールやナイター設備を備え学校・地域教育活動に大いに活用している。また,学校の前は四季折々に美しく表情を変える久慈湾,後ろには緑深き山を控え大変自然にも恵まれた環境にある。戦前には帝国海軍の連合艦隊が集結した場所としても有名な湾である。瀬戸内町の中心,古仁屋から約26kmの距離にあり,学校のある久慈集落内に郵便局,公民館分館さらには教員伝習館跡があり住民は教育に大変関心・期待を持っており協力的でもある。鹿児島からは8時間の行程である。
 訪問したその日は,定休日にもかからず職員全員で迎えていただき,その上に夜まで研修に参加していただきその熱心さと熱意に感激しました。

8 利用環境
(1) 使用機器
 クライアントパソコン
50台,サーバーコンピュータ:3台
 液晶プロジェクター:1台,放送機器:一式,ビデオカメラ:1台
 
カラープリンター:3台,プリンター:7台,スキャナ:3台
(2) 周辺機器
 テレビ電話:2台,デジタルカメラ:2台,ビデオカメラ:1台

(3) 稼働環境
 LAN接続パソコン:35台(64K・インターネット接続)

(4) 利用ソフト
 ワード,エクセル,一太郎,花子,ホームページビルダー,パワーポイント,インターネットエクスプローラ,ペイントショッププロ,フォトクリューEX,ビジュアルべーシック,ウルトラCプロ

 実践を終えて
 
テレビ会議システムを活用しての交流授業は,ここ数年間お互いに実施しているのでスムーズ行われた。
 
水産業については,本校としても「作り育てる漁業」に力を入れており,栽培工学コースの先生方と連携を取りながら今後も継続して実施出来たらと思っているところである。
 
また,本校としても水産業関係団体とも連携して栽培漁業の各種の研修会等でも活発に研究発表を行っているところである。今後は,教育現場との連携を一層深めていきたいと思っている。
 
本校の高学年の生徒達にとっては,パソコンの活用と,ネッワークを活用した取り組みのシステムについて大変勉強にもなり,21世紀のシステム・エンジニア養成にも動機付けが出来たと思っている。
 
鹿児島県内の離島僻地の小規模な3校を廻って情報教育に関する講習会を開催してきた。県内の学校も最近になって新型のパソコンやINSネット64の回線も敷設されネットワークの活用について取り組みが始まろうとしているところである。今後の取り組みの動機付けになり,パソコン活用が始まれば幸いである。

ワンポイントアドバイス
 テレビ会議システムを活用した交流授業には,相手校が必要なので普段から担当者同士の緊密な交流が必要である。小学校との場合は,事前の打ち合わせと指導案の交換や事前のリハーサルをおこなった方がいいと思う。
 中学校との場合は,司会も進行も生徒同士に任せた方が緊張感があり,中身の充実した実践活動が可能だと思う。

 

参考文献
 
宮崎市立本郷小学校指導案,郡山町立郡山中学校指導案,本校の栽培工学コースの資料

利用したURLなど
 
鹿児島水産高校(http://www.kasuiko-hs.makurazaki.kagoshima.jp)
 宮崎市立本郷小学校(http://www.mnet.ne.jp/~hongo/welcome.html)
 薩摩郡上甑村立平良中学校(ttp://www.edu.pref.kagoshima.jp/jh/Taira/top.htm)
 薩摩郡上甑村立平良小学校(ttp://www.edu.pref.kagoshima.jp/es1/Taira/top.htm)
 西之表市立古田中学校(http://www.edu.pref.kagoshima.jp/jh/Furuta/top.html)
 大島郡瀬戸内町立久慈小・中学校(http://www.minc.ne.jp/kasuiko/kuji/kuji.htm)