モデル校実践報告[3]− 「子どもの広場(電子会議室)」を活用した学級間交流 −横浜市立飯田北小学校 |
キーワード 小学校,インターネット,ひろば,電子会議室,学校間交流
神奈川県横浜市立飯田北小学校における「子どもの広場」での学級間交流の様子を、教師のしかけと子どもの変容に焦点をあてて報告する。
第5学年1組(30名)
授業時間: 1時間(説明時のみ)
休み時間: 中休み10:15〜35(20分間)
昼休み12:55〜13:15(20分間)
放課後: 2:30〜3:00(ときどき)
その他: 自宅からのアクセスについては自由
第1コンピュータルーム: 15台
教室: 1台
各家庭
10月半ばから2学期終わりまでの活動の経過と内容を、表1に示す。
月/日 |
活動内容 |
具体的な活動 |
10/13 |
第1回「子どもの広場」関東分科会 |
|
10/14 |
子どもたちへの説明 |
これまでにも子どもたちは,学研の「サイエンスQA広場」の掲示板を活用しているので掲示板の使い方についての質問はなかった。フォーラムに「ゲーム」「テレビとアニメ」「どうぶつ大好き」など子どもたちの興味の湧くものがたくさんあったので,開始を心待ちにしていた。 |
10/24 |
児童用IDおよびパスワードの決定・送信 |
1人1人がIDを持つこと,自分のパスワードを自分で決めることが初めてだったので,とても嬉しそうであった。 |
10/25 |
アクセス開始 |
登録が完了したので,やってみたい子どもから自由にアクセス開始。書き込みについても特に限定せず始めた。 |
11/13 |
一斉に利用 |
自由アクセスでは,利用者が偏ってきたので,説明を加えてから,全員が好きな |
11/14 |
自由に利用 |
一斉での説明前よりも利用者数が増える。 内容についての制限は設けなかったが,「であいゾーン」だけでなく,「まなびゾーン」にも発言するように声かけを行う。 |
「まなびゾーン」への発言 |
「まなびゾーン」への発言も少しずつ増えてくる。(アジア!,米作り,ふるさと自慢) |
|
11/30 |
第2回「子どもの広場」関東分科会 |
「まなびゾーン」活用についての話し合い |
12/1 |
「ふるさと自慢」で御陵小との交流が始まる。 |
御陵小学校の書き込み(御陵の玉ねぎを植えてみませんか?)に対してのコメント(玉ねぎの苗希望)を書き込む。 |
12/5 |
御陵小より玉ねぎの苗が届く。 |
喜びと驚きの声があがる。書き込んだので送ってもらえると思っていたものの,実際にいただいたものを見ると不思議な感じがしたようである。これまでサツマイモが植えてあった畑をすぐに耕しはじめた。 |
12/8 |
御陵小よりいただいた玉ねぎの苗を植える。 |
玉ねぎの苗を植える(図1)。子どもたちはうまく育ったらどんな料理を作ろうか話し合っていた。
図1 送られた玉ねぎを植える |
12/11 |
御陵小へのお礼を書き込む。 |
デジカメの写真(図2)と一緒に,玉ねぎの苗のお礼を書き込む。
図2 玉ねぎの苗をありがとう |
12/12 |
「米作り」で出町小との交流が始まる。 |
出町小Iさんの発言をきっかけに,モデレータの方々の取り計らいによって出町小との「世界の米料理」についての交流が始まる。 このあと12月20日御陵小のクリスマス会に向けて,活発なやりとりが続く。 |
12/16 |
「世界の米料理」用の食材を出町小へ送る。 |
グループごとに材料(図3)についてのコメントを沿えて食材を箱詰めした。子どもたちは,自分達が作ったときよりも緊張していた。
図3 ジョンズの材料 |
12/21 |
御陵小からの書き込み |
御陵小からの「クリスマス会成功」の書き込みをわがことのように喜ぶ。 12/12〜23の間の両校の書き込み 飯田北小から出町小へ 71通 出町小から飯田北小へ 65通 |
本学級は,5年生30名の単級のためクラス以外の5年生とふれ合う機会がほとんどない。また,クラスがえもないので友人関係もマンネリ化してきている。この「子どもの広場」を通して他の5年生とふれ合い,気の合う友達を見つけられたこと,その友達と情報交換できたことは本学級の子どもたちにとって一番の財産であると言える。いろいろな人とのやりとりを通して,友人関係が広がり,子どもたちの考え方や視野も広がったと感じている。
子どもたちは,書き込むとすぐにRESがつくと考えている。また,RESがつかないと,飽きてしまったり,発言することに自信がなくなったりしてそのコーナーに立ち寄らなくなってしまうことがよくあった。なぜRESがつかないのかを考えさせることも大切だと思うが,初めての,または慣れていない子どもには逆効果になってしまうことがある。(実際にあった。)今回は,教師やスタッフが裏(子どもたちには見えない部分)で情報交換をし,それを受けてモデレータの方々が子どもたちの発言に迅速に対応してくれたことで,初めての子達でも楽しむことができたと思う。
子どもも大人も人に何かを教えてあげて感謝されるのは気持ちがいい。(1)に書いたこととも重なるが,本学級は単級であるためにクラスの情報,自分の情報はすぐに伝わってしまう。また,教えてあげる子や教えてもらう子もだいたい決まっている。ところが「であいゾーン」の中では,いつもは友達から教えてもらっている子が,教える側になって他の学校の子に自分の持っている情報を教えてあげている発言が多く見られた。普段は,書くことが苦手な子が休み時間に,友達の質問に答えるために一生懸命キーボードをたたいている様子がとても印象的だった。
今回の実践は,本学級の子どもたちにとってとても意味のある取り組みであったと感じている。ただし,こういった実践ができたのは,子どもにとって使いやすく柔軟なシステムとスタッフ同士の情報交換があったからこそだと言える。こういった電子掲示板を使った交流では,この二つのどちらも欠くことはできないだろう。システム面では,操作性・内容どちらも現段階では大変満足できるものであったが,この形で完成というわけではなく,今後も子どもたちの意見を吸い上げながらより使いやすいものへとかえていく必要があるだろう。また,モデレータにしても,子どもたちが慣れてきたから,後はすべて子どもたちだけに任せてよいと言うわけにはいかないだろう。もちろん,慣れてくればモデレータの関わりも少しずつ減ってきて,子どもたちだけで問題を解決させていくことも必要であるとは思うが,単なる遊びではなく学習活動の一環として取り組むのであれば,今回のような教師やスタッフの情報交換や話し合い,意図的な書き込みや教室での声かけは今後も必要になってくるだろう。
今回の学校数では,この体制でうまくいったが,学校数がもっと増えたら,システムもスタッフ同士の打ち合わせも今回のように円滑にはいかないだろう。仮に100校が参加するのであれば,最初はブロック制(10校前後)にして交流を行い,そこから各ブロック同士の交流へと発展させていくとか,最初は全体で参加して,共通の話題で盛り上がってきたところからブロックとして独立させていくなどといった方法が考えられるだろう。
いずれにしても,最初からできあがった器の中で子どもたちに好き勝手な交流をさせるというのではなく,継続的な運営スタッフの打ち合わせとそれを取り入れていく柔軟なシステムの管理・運営が必要であると感じている。