モデル校実践報告[4]

− 「子どものひろば」で楽しく学び,ふれあう子どもたち −

富山県砺波市立出町小学校
白江 勉


戻る 次へ
目次へ 総目次へ

キーワード 小学校,インターネット,ひろば,電子会議室,学校間交流

 富山県砺波市立出町小学校における「子どものひろば」での実践活動を踏まえて,子どもたちの変容や教師・スタッフのかかわりなどの面に焦点をあてた,子どもたちとインターネット会議室とのかかわりについての報告を行う。

 

1.はじめに

     わずか数ヶ月の利用であるが,電子掲示板「子どものひろば」は楽しい,とほとんどの子どもたちが実感することができた。朝登校するとすぐにパソコンを立ち上げ,返事がきていないか見る子ども。テストが終わったあとの時間を利用してすぐに書き込む子ども。自分から求めて利用しようとしている姿は,楽しそうで生き生きとしていた。そのように活用していた子どもたちのエネルギーはどこから生まれたのだろうか。子どもたちの変容や教師・スタッフのかかわりなどの面から明らかにしたい。

 

2.活用内容および子どもたちの書き込みの考察

    <返事を楽しみにして1対1の交流を活発に行ったO児>

       幼稚園時代から友達とうまくかかわることのできないO児は,5年生になってクラス編成がなされても,何とかみんなの気を引こうと思って友達に声をかけるが,結果的に相手を怒らせてしまうことが多い子どもである。しかし,いったん興味をもつと,とことん熱中して取り組むよさももっている。そんなO児が,I校のT児から大好きな野球の内容での返事に大喜び。さらに,「メールのやりとりをしませんか」との誘いを受け,二人のやりとりが始まった。「先生,また返事が来たんだよ。今日だけで3回も。」などとうれしそうに話しかけてくるO児。12月7日から始まり2学期末まで,計45回の書き込みをしたのだった。顔写真を送りたいと願い,送り方を真剣に聞く表情からも,O児の意気込みが伝わってきた。切実感をもって,写真を添付するスキルを身に付けたと言える。また,ていねいな言葉遣いを心がけていたところから,相手を大切にする気持ちが高まっていったことが分かった。「来年もやりたい。」とまで言うO児。相手を意識したやりとりができるようになったことをうれしく思う。

    <いろいろな書き込みに素早く返事を出すY児>

       「まなびゾーン」「であいゾーン」のどちらのフォーラムにも,とにかくたくさん書き込みをしているY児。朝・長休み・給食準備の合間・昼休み・放課後・テストが早く終わった後など,時間を見つけては書き込みをしていた。たくさんの友達ができたと喜んでいた。キーボードを打つのが速くなったことに自信を深め,企画係として「キーボードゲーム大会」を企画するなど,積極性が出てきた。また,タイトルに【 】を使うなどの工夫をしたり,交流校から届いた荷物をデジカメで撮影し,添付するなどのスキルを身に付けていった。たくさん書き込む活動を通して,人とふれあうよさを実感し,スキルを身に付けていったY児。できるだけ自由にパソコンを利用できる環境を整えたり,誉めたりすることの大切さを感じた。

    <情報を生かし,よさを実感したM児>

       なかなか返事が来ないでさびしそうにしているM児を見て,「先生のひろば」の「作戦会議」フォーラムに「M児に返事を出してください。」とお願いを書いたところ,スタッフの方の返事があり,大喜びしたM児。スタッフのアドバイスに従って友達に返事を書いたところ,自分の知らない作家を紹介してもらうことができた。さっそくその作家の本を読み,「おもしろかった。」という満足感を味わったM児は,日記に「本を紹介するフォーラムがあればいい。」と書いていた。教師やスタッフとの連携により,子どもが情報交換のよさを実感できたと言える。

    <教師同士のオフラインの交流が生きた特産物の交流>

       北陸会議で,特産物の玉葱2個(農家の方が育てた大きな玉葱と子どもが育てた小さな玉葱)をいただいた際に,「この苗を送ってもらって,育てたい。」とお願いをした。そのお礼として,多分子どもたちは砺波の特産物であるチューリップの球根を送ろうと言うだろうと,その時点で予想が立ったので,その点についても打ち合わせを行った。


      図1 玉葱の苗植え

       予想通り,子どもたちの物のやりとりが行われた。社会科で運輸業の学習をしている時であったので,教科の学習と関連付けて,宅配便についての理解を深めることにもつながった。また,育て方を質問したり,送られてきた玉葱や送るチューリップの写真を添付する活動を通して,画像添付のスキルを身に付けることができた。オフラインで具体物を見ながらの相談が,功を奏したと言える。(図1)

    <ホームページを利用しての活発な交流>

       H児は,スタッフの返事に支えられながら,「米作り」のフォーラムで楽しんで書き込みをしていた。ある時,スタッフの返事に「I校のホームページ見ましたか? どの料理もおいしそうだよ。ぜひ出町小のみんなの感想も聞きたいな。」とあった。それを見て興味をもったH児は,ホームページを見たが,世界の米料理のページが開けずに困ってしまった。家から私にメールを出し質問し,ついに世界の米料理の写真やレシピを見ることができたH児は次のような書き込みをして,喜びを表現していた。

      こんにちは。I校のホームページ,見ました!! 見るの大変でした。インターネットで調べていろいろ出
      てきたので,先生にメールまで送って調べてもらいました。でも,すごかったー!! 世界の米料理を作
      ったなんて,びっくりしました。あまりにもすごかったので,I校の5年1組にメールを送りました。Mさ
      ん(スタッフ)はどんな感想をもちましたか? 

       このやりとりを見た私は,クリスマス会とつなげて世界の米料理を作る活動を思いついた。


      図2 世界の米料理の作り方について質問の書き込み

       そこで翌日,H児の書き込みをみんなに紹介し,H児に感想を言うように促した。子どもたちは,予想通り作ってみたいと言い出した。もうすぐ行うクリスマス会で食べたらどうかと,提案すると,子どもたちは大喜び。さっそくホームページを見たり,質問の書き込みをしたりする交流が始まった。(図2,図3)


      図3 ホームページを見て食材購入の相談

       I校から材料の一部やアドバイスを書いた手紙を送ってもらった子どもたちは感謝感激。クリスマス会の翌日,デジカメで撮った料理を添付するなどして紹介したのだった。(図4〜図6)

      図4 送られてきた食材 図5 食材をデジカメで撮影
      (添付するために) 


      図6 クリスマス会で世界の料理を作っている様子

       さらに,ある子どもの提案で,こちらからもお礼の食べ物を送ることになった。予想通り,砺波市の特産物である「大門素麺」に落ち着いた。この間の書き込み合計は,120を数えた。ホームページを見ての交流は大いに盛り上がった。その陰にはスタッフのフォローがあり,教師の提案があった。もちろん,そのきっかけを作ったH児が自信を深めたことは言うまでもない。

       

3.まとめ



Eスクエア プロジェクト ホームページへ