モデル校実践報告[5]

− 「子どもの広場」の総合的学習への利用 −

金沢市立扇台小学校
清水 和久


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キーワード 小学校,インターネット,ひろば,電子会議室,学校間交流

 石川県金沢市立扇台小学校の4年,5年生における,「子どもの広場」の総合的学習の時間での取り組みについて報告する。

 

1.はじめに

     総合的学習において4年生では1学期に学校の裏の「高橋川」について調査活動を行い,5年生では2学期に「金沢再発見」と題してデジカメで市内の様子を撮影してホームページにまとめてきた。そこで,4年生は「まなびゾーン」の「川・探検隊」で,5年生は「まなびゾーン」の「ふるさと自慢」を中心に活動しようと考えた。

    しかし,まなびゾーンでの交流は難しく,うまくいかなかった。また4年生はローマ字を1学期に習ったばかりなので,その定着にはずいぶん役だったようだ。

 

2.実際の活動

2.1 4年生についての一斉指導の内容

    ・1時間目 「子どもの広場」とIDとパスワードの入力

       インターネットの仕組みやIDとパスワードの重要性を子ども達に話し,一人一人にIDとパスワードが書いた紙をわたした。子どもたちは,どの子も大事そうに筆箱に入れたり,ノートにもう一度書き写したりしていた。子どもたちに配ったIDは,他学年の参加も考えて同姓同名をさけるためにフルネームにしたので,子どもにとっては入力文が長くなって入力には苦労していたようだ。(でも自分の名前くらいはローマ字でフルネームで書ける必要があるからいい機会だと考えた。)このようにローマ字を1学期に習った4年生にとって,IDをパスワードを打ち込むだけで1時間かかってしまった。

    ・2時間目 自己紹介をノートに書いてパソコンの一太郎スマイルで清書

       まず読んでもらうために,どんな風に自己紹介を書けばいいか話し合った。「〜ですよろしく!」みたいな題名ではなく,他の人が読みたくなるように「〜の好きな〜です」のように中味が予想できて読みたくなるような自己紹介になるように工夫することになった。また本文の中に他の人に聞いてみたい質問を入れたりすると,その返事を書きやすいという意見も出てきた。

    ・3時間目 実際に掲示板の自己紹介に書き込んでみる。

       先に一太郎スマイルで書いた文を自己紹介の掲示板にカットアンドペーストで貼り付けた。なぜ直接掲示板に書かずに,わざわざワープロソフトを使ったかというと,掲示板だと書き込みをしている最中に時間になってしまうと,保存できないためにまたはじめから書くことになってしまうためで,入力の遅い4年生には最初はこの方法を採った。どの子も自分の文がアップされるとわざわざ他のパソコンの所へいって本当に出ているか見に行っていた。

    ・4時間目 RESの探し方と,他の人に返信をつける練習

       自分の書いた自己紹介に返事が来てないか毎日休み時間などに確かめたりする子もでてきた。そんな中RESのつかない子にスタッフの方がRESをつけてくれたのでとても助かった。RESのRESだけではなく,他の人の自己紹介を読んで,返事を書いたりするようにも休み時間に勧めたりした。発言がたくさん増えてくるとRESがあるのかどうかを探しにくくなってくるので,一斉指導の時間を最後にとり,ここで検索の仕方を説明し,膨大なデータの中から自分へのRESを見つけることができるようになった。

2.1 5年生への一斉指導

    ・1時間目 「子どもの広場」に入り中を見て回る

       5年生では,もうキーボード入力はできているので,IDの話から始めても,1時間ですぐ自己紹介の書き込みができた児童もいた。

    ・2時間目 自己紹介を書く

       遅い児童でも,一通り自己紹介を書ききることができた。この場合は一太郎スマイルではなく直接掲示板に書いた。

    ・3時間目 RESの探し方と,他の人に返信をつける練習

       自分の書いた自己紹介に返事が来てないか検索で確かめたり,他の人の自己紹介を読んで,返事を書いたりした。ここまでが授業時間を使って,一斉指導した。このあとは各自が休み時間などを通して自主的に書き込んでいくように指導した。4年生に比べ1時間少ない指導ですませた。

 

3.テレビ会議での教訓

     4,5年全体に薄く広く関わっていても,なかなか書き込みや交流が進まないと考え,5年の1クラスに絞って,交流を促そうと考えた。ちょうど学校でテレビ電話を2週間ほど借りることができたので,これを利用してテレビ会議の交流をしようと思った。

     まず下準備として教師用の作戦会議室で,テレビ会議の相手校になってくれそうな学校を探した。ちょうどテレビ会議をよくやっている富山の出町小の先生が手を挙げてくれたので,相手校をお願いした。これで教師間の合意はできた。ここから先は子ども達の手で話が進むようにしたかった。

     5の2で,テレビ電話を2週間借りたことを告げ,相手になってくれる学校を探してくれないかということを頼んだ。そこでいつもはあまり授業に乗り気でないS君が手を挙げてくれた。ちょっと心配だったが,とりあえず頼むことにした。

    S君:テレビ会議
    2000年11月30日(木)10:28:38 AM
    扇台小ですけど,テレビ電話があるのであなたの学校でも,テレビ電話があったらお返事ください。

    出町小より:Re>テレビ会議
    2000年11月30日(木)10:34:32 AM
    杉野将吾(扇台小)
    私たちの学校でもできます! つい最近神保小さんとやりました

     5の2ではテレビ会議でどんなことをすればいいか話し合い,とりあえず,扇台の簡単な紹介と出町小学校への質問をする事になった。私も初めてだったので結構構えていたので,下準備に,出町小のホームページをみんなで見て質問も考えたりした。そのあとでS君に日程の段取りの書き込みをしてもらった

    S君:
    2000年12月02日(土)09:29:47 AM
    出町小のみなさんへ, ホームページはもうみました。出町小のことが,よくわかりました。来週の
    火曜日か水曜日テレビ会議しましょうか。

     このあとの作戦会議の打ち合わせで,もっと楽しめるようにじゃんけんゲームをしてはという提案が出町小から出されたので,5の2の子どもたちに話し,紹介や質問のあとに全員でじゃんけんゲームをすることになった。


    図1 テレビ会議の写真1


    図2 テレビ会議の写真2

     当日は,扇台の子は紹介や質問ではとても緊張していたが,じゃんけんゲームでとても盛り上がった(図1,図2)。しかし,最後に出町小からの質問で,こちらの児童の何人かが手で失礼なサインを出していたことに対する質問が来た。扇台の司会の子はその意味がよくわかっていなくてその場はやり過ごした。しかし,テレビ会議後には事情を聞くとどうやら勝負にこだわるあまり,相手を挑発する指サインを何人かの子どもが出していたようであった。そのサインを出していた子は一部の子で,私自身も気がつかなかった。クラスで話し合い,各自の思いを紙に書いてもらった。「せっかく友達になれるチャンスだったのに残念」とか「あいてはとても怒っているのではないか」という話になった。

    出町小:テレビ会議の感想
    2000年12月05日(火)15:28:02 PM
    扇台小の5年2組のみなさんテレビ会議楽しかったね。
    私達が負けてしまったのがちょっと残念。
    でも,私は勝ったからよかったです。
    最後の質問のは,悪気があって言っていたのではないから気にしないでね。
    これからも,仲良く交流していきましょう。

     出町小からこの件で書き込みが来たのでみんなに紹介した。この書き込みを見てみんなほっとしていたようだ。そして扇台からもあやまりの返事を書くことになり,希望者をつのったのだが,ちょうど校内改築のためにしばらくパソコンが使えなくなり,機会を逸してしまった。

 

4.その他

     福井の御陵小からいただいたタマネギを植えた(図3)。ここでも何人かの子どもが窓口となって御陵小に直接申し込みをした。その子にとってみると自分が橋渡しをしたおかげでタマネギをゲットできたという思いがあるので,その子はそれ以来クラスにおいても何事にもとても積極的になった。


    図3 タマネギの写真

     

3.子どもたちの書き込みの考察

     子どもたちはであいゾーンの自己紹介のコーナーにまず書き込むことで,「子どもの広場」デビューを果たし,このひろばに参加したという気持ちが生まれた。そのあとで,何度か自分の書き込みに対して返事が来ているかどうかを確かめ,来ている場合は満足して,またその相手に返事を書いていたようだ。最初は,直接知らない相手にはRESはつけにくいらしく同じ学校の友達同士でRESをつけている子も結構いた。子どもたちは,授業での一斉指導のあとは,おもにパソコン室が使える長休みと昼休みに「子どもの広場」に参加していた。書き込みは,自己紹介の所が多く,そのほかにはゲームコーナーなどが多かったようである。ただ,まなびゾーンには子ども自らの書き込みはなく,教師の方で何度か勧めてやっと書いてもらったものが多かった。まなびゾーンでやりとりを続けるには教師の側にもそうとうの覚悟が必要である。

     テレビ会議は「子どもの広場」を離れて,文章や写真だけの交流と違い動きのある映像が生でみられてとても喜んでいた。初対面の相手に対するマナーということでは今回の指のサインのことは子ども達にとって,いい教訓となった。

     

4.アドバイス



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