序章 子ども用ホームページ作成企画について

− インターネットの「子どもの広場」の可能性 −

金沢大学教育学部 教育実践総合センター
助教授 中川 一史
nakagawa@ed.kanazawa-u.ac.jp


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 ここ1,2年のうちに,学校教育におけるインターネット環境がめざましく発展をとげてきた。ミレニアムプロジェクトを受けた地方自治体の予算措置やさまざまな研修等を行うことにより,学校の情報化がよりいっそう進んできたことは言うまでもないが,2002年に本格実施される総合的な学習ではインターネットのさまざまな活用が試行されている。

 今までの授業では,教室という限られた空間の中で主に行われてきた。しかし,ネットワークで教室の外とつながることによって,その枠組みがたやすく崩されてしまう。その枠組みがなくなったことによって,子どもたちの活動が活発化していったり,価値観が変容していったりといったメリットがある。つまり,相手が意識されるということは,思いもよらない発想になったり,活動に発展する可能性がある。また,学校間同士でインターネット等を使い交流することによって,本の資料とはちがったぬくもりのある情報交換が可能となる。しかし,子どもたちの問題把握・共有化・共通化,そして焦点化・収束のかけ方などが,教室以上に難しくなることは間違いない。そういうことを念頭に置きながら,これからネットワークの海に子どもたちと共に進み出すのである。

 情報の交流をはかるためのインターネットを活用したプロジェクトは,数多く行われてきている。多くの交流学習プロジェクトは,あるテーマが決まっていて,そこに参加するような「目的参加型交流プロジェクト」である。しかし,これら目的参加型交流プロジェクトは,学校や参加する学級の実態,取り組みのテーマなど,細部にわたって合致したものでないと,プロジェクトそのものにふりまわされるという課題がつきまとう。また,テーマ等が明確であるがゆえに,子どもたちも,ネット上のかかわりのプロセスそのものに充分に意識を向けられない,という弊害をもたらすことも少なくない。 「子どもの広場」プロジェクトは,子どもたち同士の交流に深まりや広がりがでるようにかかわりそのものを大事にしながら,特に,以下の2点を重点に置いて,システムや人的介在についての検討や改善を重ねてきた。

(1) 柔軟かつわかりやすいシステム

     子どもたちが利用するときに,一番重要なのはインターフェースである。少しでも子どもたちが,どのような場で交流を行っているのか,イメージしやすいように,掲示板のインターフェースに検討を加えてきた。学校のWebページに成果を発表するより,すみやかに反応が得られることが魅力である。このことについては,第2章の実践報告からも明らかである。さらに,サーバレスであるため,予算をかけてサーバを各学校で用意する必要はない。インターネットが接続した環境でブラウザがあれば参加することができるのである。また,難しいサーバ管理を学校で教師がやる必要もない。

(2) スタッフ,参加校教師の相互理解,コミュニケーション

     子どもたちの交流学習には,システムだけがすばらしくても円滑な交流は望めない。そこにどのような立場の人間が,どの程度,どのようにかかわるかが重要であると思われる。そこで,プロジェクト期間中随時,オフラインミーティングや,「子どもの広場」の掲示板上で討議や状況報告を重ねてきた。 本報告書は,これから本プロジェクトのような交流学習を行おうとしたときに,学校関係者,特に活用して実践を行おうとする教師には,さまざまな知見が得られるものと考えられる。

 本稿では,第1章で本プロジェクトの概要,実施体制,実施状況などに触れた後,第2章のモデル校実践報告,第3章のシステム設計を経て、これらの知見についてまとめていきたい。



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