はじめに


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 Eスクエア・プロジェクトは,平成6年に始まった100校プロジェクトを皮切りに,新100校プロジェクト,そして「こねっと・プラン」など,教育の情報化,ネットワーク化につながる一連の企画を受け,それらを更に普及し発展させるための企画である。全国の学校がインターネットに接続することは,最優先の施策の一つとして実施されているが,ともすれば日本の一部の学校や教師に残る「閉鎖性」が,その発展や普及の障害になる可能性がある。<わが校>更には<わが学級>というような意識が校舎や教室の壁となり,閉ざされた空間になるという独特の形態や思考様式が,長く続いてきたのである。この閉鎖性を揺さぶり,風穴を開けないことには,インターネット接続校が増えても,フルデジタルの放送番組が流されても,双方向通信への道が開けてもその実効は期待薄である。ここにメスを当てて,学校や学級が相互にコミュニケーションを図ったり,教師よりも生徒が主になって,インターネットの多目的活用や情報の発信,学習成果の交流をしたりしていく道を探るために,このプロジェクトは企画され,実践されたのである。

 その中の一つである『学校ネットワーク支援プロジェクト』から,「同一河川流域内学校交流」の共同学習を,平成11〜12年度にかけて委嘱を受けて実施してきた。平成11年度には,吉野川流域で上流,中流,下流からそれぞれ1校ずつが参加して交流学習を展開してきた。今年の平成12年度は,岡山県を縦貫する旭川流域で,上流,中流,下流の3地域から2校ずつ,合計6校が,交流学習を進めてきた。もっとも6校といっても,中心校が上,中,下流域から1校ずつの3校,そしてビギナー校が,これも上,中,下流から1校ずつの3校という構成である。詳しくは報告書で述べるので,ここではこの2年間を振り返り,同一河川での交流学習がどの点で進展し,どのような課題が残されたかについて要約する。

(1)交流学習と研究の量的な拡充

     既に述べたように,平成11年度の吉野川流域での交流学習は,3校が,しかも中流にある三庄小学校が中核となって企画・運営(3校の直接交流学習も含む)を進めてきた。時期的にも下流校の参加が遅れたりして,またオンラインでの教師と児童の交流にも暗中模索といえる苦労は多かった。ところが平成12年度の旭川流域での交流学習は,中心校3校,ビギナー校3校が,それぞれの流域から参加することとした。量的な拡充ともいえる。

     そこで6校で情報教育や総合的な学習の開発に意欲をもつベテラン,若手の教師に加え,前回,徳島県の三庄小学校で中心になってプロジェクトを進めた教諭,前回も同一河川共同学習を助言指導した委員のほか、新たに教育工学と教育方法学とを兼ねた若手研究者が研究開発に加わった。実践の展開にともなう局面で,実践する教師に異なった視点からの助言が有効に働いたのである。

(2)地域を調べて,交流して共有し,もう一度地域を見直す。

     ネットワーク環境で,また地域社会の自然や産業で大きな差異のある学校が,それぞれの地域を共通の視点で調べ,相互に電子メールやTV会議で交流し,さらに「旭川デジタルマップ」を作成するという共通課題に挑戦してきた。自分たちが調べたことをまとめ,それを発信し,データを共有すると同時に,もう一度自分たちの地域を見直す,同じ河川の流域でも,大きな較差があり,わが地域はその特殊性の一つなのだということを自覚する。これは,閉鎖的な学校中心・学級中心の教育では育てられなかった大きな成果といえる。

(3)旭川デジタルマップ

     平成12年度の中心校の中でも,中核になってリーダシップを発揮してきた岡山市立平福小学校(下流域)は,Eスクエアプロジェクトの中でも「先進的情報技術活用プロジェクト」に所属できる資格を,充分に兼ね備えた学校である。放送教育〜メディア・リテラシー教育,総合的学習,協力教授システム,他地域や他校種,さらには外国とのネット交流学習などの実績を重ねてきている。この学校が発案して,各学校が協力し,「旭川デジタルマップ」の作成と公開が実践されてきた。電子メールやTV会議,ビデオレターの交換だけでは不可能な「協同作品」をみんなの手で作り上げようと言うわけである。これならば,ネットワーク環境や学校規模,研究歴の格差にかかわらず参加し,実践できる。これは前回の吉野川での交流学習にはなかった,新しい試みである。

(4)問題点や,改善すべき点

     旭川デジタルマップづくりは,上記したような利点は持つのだが,短い期間でこの作業に各校が集中的に取り組んだ結果,その反動として,本来各学校が手分けして,しかも共通の視点で自分の地域を調査し,それをまとめ,発信し,他地域と比較し,改めてわが地域の特徴を認識すると言う「同一河川内の協同学習」本来のねらいは,本報告書作成時点ではまだ不十分というきらいはある。

     前回の吉野川では,魚と生物,川沿いの植物(特に竹林),川原の石,洪水の危険水位,観光や特産物,吉野川の交通の今昔,などの視点で,3校が調査結果をオンラインで交換し,年末には直接交流で持ち寄った石や植物の押し花を比べる企画が成立した。今回の旭川でも,川の風景,水と生き物,歴史文化,森と木,暮らしなどの共通視点は持ったのだが,各学校がそれらの視点でデータを集めても,比較検討する時間に余裕はなかった。その部分は3学期の学習に期待するところとなった。

     また共通の視点だけでなく,上流域の湯原小学校のまわりには温泉施設やオオサンショウウオが,中流域の誕生寺小学校には棚田天然米生産組合が,下流域の平福小学校には,旭川が児島湾に注ぐ汽水域のために,独特の風景があり水棲生物がいる,こうした地域の特徴をもっと掘り下げて,地域の独自性を発信していく機会も増やしていくことが期待される。 

     現地の参加6校は,本実践研究を意欲的に継続していることを付記しておきたい。

    (委員長 水越敏行)

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