CEC国際交流プロジェクトに参加して

三重県立四日市西高等学校  清水 豊


1.参加の経緯

 本校は今年度CECのEスクエアプロジェクトに「韓国の高校との交流」をテーマに参加しています。その中で、西陵商業高校の影戸先生にいろいろとサポートしていただいており、その関係で、国際交流プロジェクトのほうにも参加することになりました。


2.学校のネットワーク環境

 本校は地元のケーブルテレビの回線によりインターネットに接続しています。今までは職員室でしかインターネットに接続できませんでしたが、今年度は校内LANの整備を行い、進路室・生徒指導室・事務室・図書室・コンピュータ教室でもインターネット接続が可能になりました。ただし、コンピュータ教室のパソコンはMS-DOS機が22台のみというお粗末な環境ですので、Eスクエアの予算でウインドウズパソコンを2台準備し、生徒用のインターネット端末として利用できるようにしました。


3.活動状況

 本校には、「比較文化コース」というクラスが学年に1クラスあり、このクラスは修学旅行に韓国を訪れています。その関係で、Eスクエアのテーマとして「韓国の高校との交流」を設定しました。したがって、このテーマは国際交流プロジェクトにも密接に関係しています。

 Eスクエアのプロジェクト遂行のために、7月20日〜22日にCECの後援で行われた「アジア高校生インターネット国際交流プログラムinソウル」に生徒2名とともに参加しました。現地では、九老女子情報産業高校を会場に日本からの参加生徒と九老女子情報産業高校・新亭女子商業高校の生徒が二日間にわたって、交流プログラムとプレゼンテーションを行いました。(〈写真1・2〉)(詳細については、http://www.seiryo.ed.jp/asia/ 参照)

 その中で、新亭女子商業高校のジョン先生に2学期以降の交流活動について相談をしたところ、快諾していただき、2学期以降、新亭女子商業高校とメールを通じた交流をはじめることができるようになりました。

〈写真1〉韓国生徒のプレゼン
〈写真2〉本校生徒と韓国生徒

 

 帰国後、韓国を訪問した生徒は、7月31日にCEC協賛で名古屋国際センターホールにて開催された「ワールド・ユース・ミーティング・イン・ナゴヤ‘99」にも参加し、9カ国からの招待生徒と250名の参加者を前に、日本側生徒の代表の一員として、ソウルで行ったプレゼンを再現しました。

〈本校のプレゼンの一部〉

 

 

 

 2学期からは、「比較文化コース」1年の「比較文化」という授業の中で、韓国の新亭女子商業高校とのメール交流がはじまりました。同時にCECの国際交流プロジェクトにも韓国に行った生徒を中心に参加し、メーリングリストによる交流や、西陵商業高校のホームページ上に設けられている国際交流用の掲示板に本校の行事等を画像と英文で紹介したりするなどの活動を続け、12月12日に名古屋で行われたCEC主催の「教育とインターネット活用発表会」にも参加しました。

 新亭女子商業高校との交流は、授業としては2学期で終了しましたが、その後も交流を続けたいという双方の希望があり、3学期以降も有志によるメール交換や放課後のCU-SeeMeによる交流を継続していく予定です。

4.生徒と教師の変容(企画を通じて何を得たか)

 このような活動を通じて、生徒がどのように変わってきたか、生徒の感想文を以下に掲載します。

〈「アジア高校生インターネット国際交流プログラムinソウル」の感想〉

 ソウルの第一印象は、街も人もそんなに日本と変わらないなあでした。気候も似ていると聞いていました。でも、唯一日本と違う所は、車の量の多さでした。ある所では、4車線の所もあって驚かされました。量だけではなくスピードの速さにも。そうしてソウルの街を見渡している間に、九老女子情報産業高等学校に到着しました。バスから降りると、みんなが出迎えに来てくれていて、覚えたばかりの韓国語“アンニョンハセヨ”と言ったら、声を合わせて笑顔で返してくれました。その時は、嬉しくて思わず笑ってしまいました。たった一言でも、コニュニケーションをとる事が出来て、大切な事だと分かりました。そして、お互いに自己紹介をして昼食を食べた後は、プレゼンの発表です。それまでに何度か練習はしていたけれど、いざみんなの前で発表するとなると緊張しました。でも、無事に終わった時はホッとしました。後で先生に誉められた時は、毎日のように放課後に残って大変だったけど、やれば出来ると言う達成感でいっぱいでした。多分私だけではなく、みんなもそう感じたと思います。

 ホームステイでは一人で頼る人もいない。言葉もほとんど通じなくて苦労したけど、家族の人も優しくて、別れる時はすごく辛かったです。3日間で一番の思い出になりました。

 2・3日目も充実した日を送る事が出来て、本当に参加して良かったと思っています。この体験から学んだ事を吸収した私は、変わったと感じています。ここには書きつくせないほどの貴重な体験と一生残る思いででいっぱいの3日間でした。

〈「ワールド・ユース・ミーティング・イン・ナゴヤ‘99」の感想〉

 私は、ワールドユースミーティングに参加できて、本当によかったと思っています。はじめ、発表する予定はまったくなかったけど、前日、急に先生から発表することになるかもしれないといわれ、「エー嫌だー!」と思いました。練習もしてないし、何百人もの前で発表するなんて、そんな勇気ないし、絶対に緊張して、声が震えるだろうと思っていました。けれど、前に一度、この発表を韓国でやって、先生方に誉められたので、自信を持ってやればいいんだと言い聞かせました。

 当日、日本はリハーサルがなくて、本番一発勝負になってしまいました。でも、もう嫌という気持ちはまったくなく、がんばって練習しました。いよいよプレゼンが始まりました。日本の発表になって、前で待っていると、もう心臓がバクバクして、足もガクガクしてきました。いよいよ西陵商業の発表から、私たちに代わるときです。「よし!がんばるぞ!」と気合を入れて舞台に立ちました。すごい人の数だったけど、今までの緊張がうそみたいに吹っ飛んで、堂々としている自分にびっくりしました。いつもは声が震えるはずなのに・・・。とても嬉しかったです。

 終えた後は、とても気分がよく、満足感でいっぱいでした。それにすごく度胸がついたなと思いました。本当にやってよかったと心から思っています。昨日「嫌だ!」といっていた自分に腹が立ちました。これからは「嫌だ!」と思ったことでも、自分にとっていい方向にすすんでくれることを信じて、挑戦していきたいと思います。

 上の感想文にもあるように、ワールドユースミーティングでは当初の予定では本校生徒のプレゼンはありませんでした。前日のプレゼン準備の中で、急遽決まったことでした。そのことを生徒に伝えたとき、はじめは尻込みしていましたが、せっかく今までの一連の企画に参加してきたのだからと、思い切ってやることにしました。本校の参加生徒は2名ともナイーブな生徒で、今まで聴衆の面前で発表などしたことがなかったと思います。それが、世界各国から参加したゲストをはじめ250人もの聴衆を前にして、あのすばらしい会場で、テレビや新聞などの取材も入り、そして何より英語での発表です。あの状況では場慣れした大人でも緊張してしまうでしょう。けれど、彼女たちは緊張しながらもプレゼンをやり遂げました。全くのぶっつけ本番で。学校での内気な彼女たちからは想像できない姿でした。

 何が彼女たちを変えたのでしょうか。ワールドユース当日まで彼女たちはいろいろなアクティビティに参加してきました。パソコンをさわったことすらなかった彼女たちがインターネットという時代の先端を行く技術に触れ、メールを使い、事前学習に参加し、プレゼンの準備や練習を行い、韓国に行き、ソウルで英語のプレゼンを行い、現地の高校生と交流をしてきました。この一つ一つのステップを踏みながら確実に彼女たちは成長していたのです。国際センターの壇上で英語で発表をする彼女たちを見て私はそれを確信しました。この変化をもたらしたもの、それがインターネットとインターネットを通じた国際交流であり、その教育的効果がまさに眼前の生徒の変化として現れているのです。何より一番驚いているのは発表している彼女たち自身であったことでしょう。

 こういう経験や感動をもっとたくさんの生徒たちに体験させたい。今回の企画に参加して彼女たちは変わりました。それは「自信」と言ってもいいと思います。彼女たちが自信を持ったことで、インターネットと国際交流の企画の素晴らしさについて私自身も自信を持てました。これからもこういう企画で自分を変え、生徒を変えていきたいと思います。


5.今後の課題

 今後の最重要課題は、校内の環境整備です。2.のネットワーク環境で述べたように、本校の環境は劣悪です。授業や課外活動でインターネットやパソコンを利用したくても思うような活用ができない状況にあります。先日校内でアンケートを取ったところ、かなり多くの教員が授業でパソコンやインターネットを利用したいと答えていました。にもかかわらず、実際に授業でそれらを使っている教員が少ないのは、第一に本校のパソコン環境が劣悪で授業での利用が困難であるということがあります。第二は、「何をどのようにやっていいかわからない」ということです。この点に関しては、このCECのプロジェクトのような資産が蓄積されていくことにより、いろいろな実践が知られるようになればよいと考えます。そういう意味でも、このCECの諸プロジェクトは非常に有意義なものであり、より一層の充実と広報活動を期待したいと思います。

6.さいごに

 インターネットやパソコンを活用した教育実践は、最近多くの学校で推進されており、役に立つ実践事例もたくさん紹介されています。CECをはじめさまざまな機関が各地で発表会等を催しています。その気になれば、さまざまな実践を知る機会はいくらでもあります。とにかく、いろいろな場へ出かけていって、優れた実践に触れ、現実世界における自分のネットワークを広げていくことが大切なのではないでしょうか。私自身、この世界ではまだまだほんの駆け出しです。生徒に負けないよう、自分のネットワークの翼を広げていきたいと思います。


 ↑ 目次へ