文部省教育事業「光ファイバー網による学校ネットワーク活用研究開発事業」の一環として、また、「新酸性雨調査プロジェクト」の延長として参加した。
2-1.教育活動の中での位置づけ
(1)プロジェクトを実施した具体的な教育活動(5)
- 理科の授業
- 理科以外の授業
- クラブ活動
- ホームルーム活動
- その他の活動(部活動 科学部)
(2)測定を行ったのは誰ですか。 (3)
- 生徒
- 教師
- 生徒と教師の共同作業
(3)データの送信は誰が行いましたか。 (3)
- 生徒
- 教師
- 生徒と教師の共同作業
2-2.プロジェクトを教育活動の中で実施するとき、ネットワークの具体的な利用場面(1)
- データの送信
- 他校のデータの収集
- 他校との交流
- 他のホームページを使った資料の収集
- その他( )
2-3.プロジェクトの実施にあたり利用できたネットワークの環境。
該当するものを全て選び、その他のものがある場合は具体的にお書き下さい。(1,2)
- ホームページ
- 電子メール
- 電子掲示板
- テレビ電話
- チャット
その他
準備不足のため、6回の測定のところ3回しか実施できなかった。
測定結果等は以下の発表要旨に示す。
科学部の活動としてフィルムケースとろ紙を用いた独自の器具を作成し、分光光度計で吸光度を求め、検量線から濃度を求める方法で4回の測定を実施した。
その結果については愛媛県高等学校工業科生徒研究発表会で発表した。
以下に発表要旨を示す。
大気中の窒素酸化物NOX調査について
愛媛県立新居浜工業高等学校 工業化学科 伊藤誘志 堀谷剛志 横井武志
1 はじめに
窒素酸化物はノックス(NOx)と呼ばれ、一酸化窒素や二酸化窒素をまとめて呼ぶ言葉です。ものを燃やすときに発生し、主に自動車の排気ガスや工場の煙の中に含まれています。害としては呼吸器系に変調をきたしたり、太陽光線を受けて光化学反応を起こし「光化学スモッグ」を引き起こしたり、雲にとりこまれて硝酸などの物質に変化し「酸性雨」となって地上に降ってきます。
化学部が「酸性雨/窒素酸化物(NOx)調査プロジェクト」に参加し、学校内で利用できる有用な観測データを集めたり、参加校同士の交流など通して環境問題をを考えるためのネットワーク作りを目指しています。また、化学部が試作した測定器具を使って空気中の窒素酸化物濃度の測定も試みています。
2 「酸性雨/窒素酸化物(NOX)調査プロジェクト」について
(1)観測期間 1999年10月〜2000年8月
(2)参加校 全国 25校
(3)測定器具 「大気汚染(NOx)調査キット」 (日本ファインケミカル社製)
(4)捕集方法 検出容器を直射日光を避けた場所に24時間開放
(5)測定期日 1999年10月〜11月の月曜日・火曜日
(6)測定地点と比色値(μg/ml)
月 日 11/17 11/24 11/301)市役所前交差点 0.25 0.3 0.32)病院横道路 0.2 0.2 0.23)学校玄関横 0.25 0.3 0.254)職員室 0.35 0.3 0.35)ホームルーム教室 0.1 0.1 0.16)運動場南端 0.25 0.25 0.37)道路横学校敷地 0.3 0.2 0.38)樹木の多い神社 0.2 0.2 0.29)内港のそば 0.2 0.1 0.210)工場周辺 0.2 0.2 0.25比色値(μg/ml) と大気中の窒素酸化物濃度(ppm)の関係
比色値 〜0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 濃度 〜0.019 0.019〜0.038 0.029〜0.056 0.039〜0.075 0.048〜0.094 0.058〜(7)データ送受信 インターネットでデータを送信し、メーリングリストで交流します。
3 化学部試作器具による測定
(1)測定器具 写真フィルムケースの中にろ紙を引っかける。ろ紙の大きさ縦3p、横2.5 pに切る。
(2)捕集液 ろ紙に10 vol %トリエタノールアミン・アセトン溶液をしみ込ませておく。
(3)発色液(ザルツマン試薬) A液とB液同量混合液20ml
◇A液 1%スルファニル酸 水500mlにスルファニル酸5gを加えて、マグネチック スタラーで30分ほどかき混ぜて溶解する。
◇B液 0.01%N−(1−ナフチル)エチレンジアミン水溶液 水500mlに酢酸40mlを加え、これにN−(1−ナフチル)エチレンジアミン二塩酸塩50mgを溶解する。
(4)測定期日 1999年11月〜12月の水曜日・木曜日
(5)捕集方法 ろ紙をつるしたフイルムケース開放し、24時間後フタをして回収する。
(6)分析 吸光度測定 波長545 nm 亜硝酸ナトリウム標準液 1.5g/水100ml を1ml 採り100mlに希釈する。これを各濃度に採り発色液で全量を20mlして吸光度を求める。
吸光度(×10-3)検量線
ppb 10 20 30 40 50 60 80 100吸光度 0.047 0.093 0.138 0.185 0.228 0.272 0.361 0.454
(7)測定地点と測定濃度
月 日 12/7 12/9 12/16 12/14 捕 集 液 量 0.10 ml 0.08 ml 0.06 ml 0.04 ml項 目 吸光度 ppb 吸光度 ppb 吸光度 ppb 吸光度 ppb1) 市役所前交差点 0.239 51 0.160 35 0.194 35 0.147 322) 病院横道路 0.225 48 0.161 35 0.112 34 0.089 193) 学校玄関横 0.138 30 0.177 38 0.116 24 0.074 174) 職員室 0.112 24 0.101 23 0.123 26 0.111 255) ホ−ムルーム教室 0.043 10 0.047 11 0.044 9 0.028 76) 運動場南端 0.159 35 0.145 32 0.150 32 0.073 167) 道路横学校敷地 0.224 48 0.225 48 0.212 45 0.094 218) 樹木の多い神社 0.077 18 0.051 33 0.095 20 0.072 179) 内港のそば 0.143 31 0.170 37 0.154 33 0.106 2310) 工場周辺 0.166 36 0.168 37 0.132 30 0.082 18
4 まとめ
観測地点が近いため各地点での大きな差は出ていません。しかし、どの場所でも道路の近くは高い濃度なっています。窒素酸化物が出ることがないホームルーム教室では毎回非常に小さい値になっています。工場周辺では普通の場所と変わりせん、高い煙突などで広くばらまかれているように思われます。
比色法と吸光度法の比較では、吸光度法の方が小さな濃度の差をはっきりと見分けることができます。
試作器具を使った実験では、ろ紙につける捕集液の量を0.04mlとすると、市販器具の比色法による濃度と一致するところが多いことが分かりました。
この観測や実験をとおして私たちが呼吸している空気の汚れに強い関心を持つようになり ました。
(1)実践で得られた成果
- 窒素酸化物の濃度を容易に測定できることが分かった。
- 窒素酸化物の発生源が自動車の排気ガスによるものであることを実感した。意外であったのは職員室のデータなどから喫煙が窒素酸化物の発生源になっていることである。
- 今回の測定をとおして生徒は環境の汚染に強い関心を持つようになり、更に調査を続けたい意向が伺えた。
(2)反省・課題
- 計画・準備の期間が短く十分な実施ができなかった。特に器具に付記されている事項には翻弄された。
- 色の濃淡による比色値を的確に読み取ることができにくかった。
- 生徒の行動できる範囲が限定されるので、どうしても測定地点が近接し、各地点による明確な差が得られなかった。
- コンピュータの使用の関係でデータの送信・メールの交換などが十分に行えなかった。
- 課題として、測定値について公害センターとのデータの整合性を試みる必要がある。
(3)今後の実践にあたってのワンポイントアドバイス
- 調査前に周到な準備ができる時間が欲しかった。
- 比色値からでは細かな数値を読み取ることは難しい。
- 観測日の気象情報の収集に難点がある。
(4)このプロジェクト実施にあたって利用した資料・ホームページ等
- 大阪と科学教育 http://www.edu-c.pref.osaka.jp/kak/rika1/osaka-ch/chem9-2.htm
- 科学教育ジャーナル http://ks001.kj.utsunomiya-u.ac.jp/%7Ecej/v1n1/tsukada/kankyou_kyouiku.html
- 二酸化窒素の汚染調査及びアゾ染料の合成と染色 http://www.zzz.or.jp/masasuma/masa/e2-11.htm
- 大気の測定〈詳しい測定方法〉 http://www.coara.or.jp/~kiyotaka/no2_sousa.html
- 二酸化窒素の汚染調査 http://www.zzz.or.jp/~masasuma/masa/e3-2.htm
- イベント/環境(NOX)調査/濃度の求め方 http://www.wnn.or.jp/wnn-s/part/event/konet/envi/nox/taiki2.html
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