近年における地球環境問題は,日増しに深刻化しており,地球温暖化,オゾン層の破壊,砂漠化,熱帯雨林の減少,野生生物の絶滅・減少,酸性雨など多数にのぼる。これが,現在,環境教育の重要性や環境保護が社会全体の課題として叫ばれている理由である。
しかし,このような現代社会の中で生活している子どもたちは,地球環境に対して十分な興味・関心をもっているとは言い難い。なぜなら,環境問題を実感することが少ないからである。
そこで,子どもたちの身の回りにも,実際に環境問題が起きていることを実感させ,その結果,子ども自らが自分なりに環境問題を考え,かかわっていこうとすることをねらって参加した。
2-1.教育活動の中での位置づけ
(1)プロジェクトを実施した具体的な教育活動(2)
- 理科の授業
- 理科以外の授業 (※理科以外の授業(創意の時間)だが,今後理科で扱う予定)
- クラブ活動
- ホームルーム活動
- その他の活動
(2)測定を行ったのは誰ですか。 (3)
- 生徒
- 教師
- 生徒と教師の共同作業
(3)データの送信は誰が行いましたか。 (2)
- 生徒
- 教師
- 生徒と教師の共同作業
2-2.プロジェクトを教育活動の中で実施するとき、ネットワークの具体的な利用場面(1)
- データの送信
- 他校のデータの収集
- 他校との交流
- 他のホームページを使った資料の収集
- その他( )
2-3.プロジェクトの実施にあたり利用できたネットワークの環境。
該当するものを全て選び、その他のものがある場合は具体的にお書き下さい。(1,2)
- ホームページ
- 電子メール
- 電子掲示板
- テレビ電話
- チャット
その他
1. 1学期
- 環境に影響を与える人間の生活の理解(国語科:説明文「人間がさばくを作った」)
- 現在地球を取り巻いている環境問題の把握(理科:「わたしたち地球人」
2. 2学期
- 大淀川(宮崎市の中心部を流れる一級河川)の水質調査(創意の時間「大淀川学習」)
- 窒素酸化物調査と酸性雨調査(特に教科の学習とは設定せず,希望する子どもが取り組む。)3学期も継続。
3. 3学期
- 環境問題の原因追究(理科:「わたしたち地球人」)
酸性雨あるいは窒素酸化物調査を中心とした授業は,現在まだ実施していないので,2学期に実践した大淀川学習(大淀川の水質調査)の様子と日頃の酸性雨調査の様子を紹介する。
本校では,1年生から6年生まで,2学期に学年に応じた大淀川を教材とした学習を実施している。その中で,6年生では自分たちの飲料水となっている大淀川の水質調査を行っている。
子どもたちは,1学期の国語や理科の学習で,地球環境問題への興味・関心が高まってきている。その時期に,このような活動を計画することは,子どもの積極的な活動を促すことにつながる。
大淀川は,流域市町村の取組の結果,最近になって水質の改善が図られている。見た目でも,水は汚くなく,触った感じも臭った感じも悪い印象はない。写真1は,大淀川の様子を観察しながら水を採取している子どもの様子である。このあと,写真2のように,簡易水質調査セットと透視度計を使っ て調査を開始した。
写真1 大淀川の水の採取 写真2 簡易テストの結果の記録結果は次の通りであった。
これは簡易テストを使用した上に,子どもたちが測定した結果なので信用性には疑問があるが,それでもこのことから,身の回りには確実に環境問題が迫っていることを感じたようである。
この学習からしばらくたって,窒素酸化物の調査を実施した。もちろん大淀川河畔も調査地点にいれた。
調査結果は次の通りである。(窒素酸化物調査のホームページデータより)
第1回10月19日 くもり 24,67 弱 〜0.1 〜0.1 0.2 0.2 〜0.1 〜0.1 0.2 0.2 0.2 0.2 第2回10月25日 くもり 20,65 弱 〜0.1 〜0.1 〜0.1 0.2 0.2 0.2 〜0.1 0.2 〜0.1 0.2 第3回11月2日 くもり 13,70 弱 〜0.1 〜0.1 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 第4回11月9日 晴れ 13,68 弱 〜0.1 〜0.1 0.2 0.2 0.2 0.2 0.3 0.2 0.2 0.2 第5回11月17日 晴れ 10,48 無 〜0.1 0.2 〜0.1 0.2 〜0.1 0.2 〜0.1 〜0.1 〜0.1 〜0.1 第6回11月24日 晴れ 16,56 弱 〜0.1 〜0.1 0.2 0.3 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2大淀川河畔を含め,学校内外とも0.2をこす濃度は検出されなかた。 また,酸性雨も希望者の子どもたちが写真3,4のように測定した。
写真3 降雨後の回収 写真4 pH値の測定以下は,久しぶりにまとまった雨が降った1月12日および1月16日の測定結果である。
1 2 3 4 5 6 7 8 平均値 6.7 7.0 7.0 7.0 7.0 7.0 7.0 7.0 6.9
1 2 3 4 平均値 7.1 6.7 6.8 6.7 6.8酸性雨と呼ばれる5.6以下の雨は観測できなかった。また,これらの日以外の雨でも同じようなpH値がほとんどで,酸性雨はまだ観測できていない。
(1)実践で得られた成果
今後の理科の学習で,環境問題の原因追究に取り組む予定ではあるが,現段階では,子どもたちには次のような意識がある。
- (他校のデータを見て)全国各地で,酸性雨のデータが違っている。
- 酸性雨や窒素酸化物の原因はいろいろあると思うが,その観測したところでは何が大きな原因なのか。
- 宮崎は酸性雨や窒素酸化物の値は悪くはないが,将来悪くなるのか。
- 世界の今の様子が知りたい。
このような活動を通して,子どもたちなりに酸性雨や窒素酸化物を理解し,身近に迫りつつある環境問題ということをとらえていった。また,地球規模で考えることが難しい子どもたちにとって,広範囲の現状を知ることで,広い視野をもたせることができた。
(2)反省・課題
酸性雨の測定ということから,pHメーターでの測定は必要不可欠であるが,小学生の子どもにとっては,数値化するよりも,指示薬や植物色素等の色の変化で表す方が実感しやすい。(しかし,測定した数値では困難であることは事実である。)目で見て実感する方法と合わせて実施するとよかった。
また,本活動からさらに発展する活動を子どもから引き出せなかったこと,教師の方も仕組めなかったことが反省する点である。
(3)今後の実践にあたってのワンポイントアドバイス
(2)でも述べたように,目で見て実感することが期待しづらい活動であり,小学生にとっては単調になりがちな活動である。子どもたちに実感させるための手だて,本活動からの発展的な活動,例えば創作・製作活動等を事前に研究しておくとよい。
(4)このプロジェクト実施にあたって利用した資料・ホームページ等
- 酸性雨・窒素酸化物調査 http://pine.fukuyama.hiroshima-u.ac.jp/
- 鳴門教育大学環境のページ http://www.naruto-u.ac.jp/kankyou/kankyou.html
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