1.2.2 プロファイルのアンケート調査

清水紀久雄 山梨県総合教育センタ

(1) 評価シート

 昨年度に引き続き、学校教育目的への適合性などの観点から、教育用レイティング基準に求められる仕様はどのようなものであるかについて、教員および一般から広く意見を募るための評価シートを用いてアンケート調査を実施し、教育用レイティング基準の仕様や運用の在り方について検討するための資料とすることにした。

 内容は、既存のレイティングデータベースや商用ソフト等で設けられている評価項目の適不適について意見を聞くものとなっている。ある種類の情報がある年代の児童生徒の閲覧には不適切であるという基準に絶対的なものはまだない。しかし、今回のアンケート調査により、サイト評価を実施すべき項目や適正な適用基準を明らかにできれば、教育用に使いやすいレイティングデータベースの整備が今後進められることになると思われる。

 学校においても、過度に制限したり逆に過度に放任することなく適正に運用したいわけであり、アンケートの結果をもとにフィルタリングの推奨パターンが提案できるものと考えられる。

レイティング評価基準に関するアンケートを以下に示す。


 インターネット上の情報を格付け評価(レイティング)し、学校等で選択的に情報の閲覧を可能にする。

システムの構築にあたり、レイティング評価基準の参考とするため、ご意見をお伺いします。

(但し、アンケート回答のうち、個人情報に該当する項目は一切公表いたしませんので御安心ください)

【目的】

 学校でインターネットを利用する際の問題点として、インターネット上のコンテンツには児童生徒にとって有害と思われる情報があり、教育の場における閲覧は好ましくないことが指摘されている。

 この問題への対策として、レイティングシステム(注1)の利用が有効と考えられる。

注1)

レイティングシステムは、情報発信を制限することなく情報に対するレイティング(ラベル付け)に基づく設定により、「見たくない(見せたくない)」情報をフィルタリング(見えないように)できるシステム。

a.回答の対象とする年代

●アンケートに対する回答の対象とする児童生徒の年代を設定してください。

 年代は複数を同時に選択して対象にしても構いませんが、以降の設問回答はここで設定した対象年代すべてに適用するものとして回答をお願いします。該当する番号に○印をつけてください。

 □・幼児に対して    □・小学校1・2年生に対して  □・小学校3・4年生に対して

 □・小学校5・6年生に対して □・中学校1年生に対して   □・中学校2年生に対して 

 □・中学校3年生に対して  □・高校生に対して

●対象性別: 対象とする児童生徒の性別を選択してください。

 □男女共通     □男子のみ   □女子のみ

b.RSACi 型のレイティング基準に関する意見

次の各項目に該当する内容を含む情報を対象年代の児童生徒が見ることについて、あなたのご意見は?

以下の6つから選択してください。

 ○(常に)許可

 △原則許可。場合によって禁止。(授業単元や監督の有無などの場合別の対応)

 ▲原則禁止。場合によって許可。(授業単元や監督の有無などの場合別の対応)

 ×(常に)禁止

 ?判断できない

 ■無回答

1)暴力 □V4 【残虐】

       残忍で過激な暴力。拷問またはレイプ。

      □V3 【殺人】

       流血を伴う殺人。殺人に至るほど人間が傷つく、殺される。

      □V2 【殺傷】

        人間または動物が傷つく、殺される。

      □V1 【争い】

        動物が傷つく、殺される。物が壊される。

      □V0 【なし】

        その他軽度の暴力。意図的または偶発的を問わない。

 

 2)セックス □S4 【性行為】

         明白な性行為、性犯罪。

        □S3 【性行為らしき描写】

         性行為らしき描写、明白でない性行為。

        □S2 【着衣のままの性的接触】

         着衣のままの性的接触

        □S1 【セクシャルなキス】

         情熱的なキス。

        □S0 【なし】

         その他軽度の性的描写。

 

 3)ヌード □N4 【性器の強調】

        性器の強調。刺激的な全裸、明白な性行為、性犯罪。

       □N3 【全裸】

        正面からの全裸。

       □N2 【部分的なヌード】

        部分的な露出、胸や尻の強調。

       □N1 【露出的な服装】

        露出的な服装。セクシーな服装。

       □N0 【なし】

        その他軽度の露出的な描写。

 

 4)言葉 □L4 【誹謗中傷】

        激しい憎悪または露骨な表現。明白な性行為表現。

      □L3 【わいせつ表現】

        ひわいな表現。不快感を与える下品な表現。身体的な機能に関する悪口。

      □L2 【悪口】

        悪口、冒涜。性的でない身体機能に関する表現。

      □L1 【穏やかな悪口】

        穏やかな悪口。身体機能に関する穏やかな表現。

      □L0 【不快感を与えない言葉】

        軽度。不快感を与えない俗語、冒涜的な言葉。

 

 5)その他 □E4 【反社会的】

         違法と考えられる内容が意図的に過激に描写されている。反社会的な意図がある

        □E3 【違法】

         違法と考えられる内容が、意図的に描写されている。

        □E2 【公序良俗に反する】

         公序良俗に反すると考えられる内容が、意図的に描写されている。

        □E1 【要注意】

         意図的な描写ではないので、公序良俗に反するかどうかの判断が難しい内容。

        □E0 【なし】

         その他軽度に違法、公序良俗に反する可能性がある内容。

c.その他の事項に対する見解

 以下の分類にあてはまる内容を含む情報(教育的なものは除きます)のうちで、対象年代の児童生徒の 入手・閲覧を制限したいと思うものすべてに、印をつけてください。

  □偏見・差別の助長  □悪の助長、悪の崇拝 □犯罪、犯罪手口 

  □ハッカー行為(不正アクセスなど) □軍事・テロ  □自衛隊・機動隊

  □兵器  □反社会的言論  □反社会的組織(暴力団・暴走族等)

  □人権侵害(いじめ、中傷など含むが批判は含まない[ 言論の自由] )

  □違法  □カルト(閉鎖的教義信条. 狂信的信仰、KKK 、ネオナチ等)

  □一般的宗教  □特定の宗教  □オカルト  □チャイルドポルノ  □援助交際

  □政治  □右翼・左翼  □薬物乱用(非合法薬物、麻薬、覚せい剤、一部の合法的ドラッグ)

  □避妊  □民間療法(ダイエット、民間療法)  □ギャンブル、くじ、賭博

  □ゲーム □ショッピング  □商品広告 □証券相場・先物相場 □交際紹介・恋人募集

  □私的嗜好(菜食主義、自然主義、同性愛を含む)   □コンピュータプログラムの入手

  □大容量のデータ(画像、映像など) □チャット(匿名一般人との会話)

  □チャット(匿名児童生徒間の会話) □伝言板・掲示板(教育的なものは除きます)

  □電子ニュース(教育的なものは除く)□ゴシップ、噂話  □悪趣味

  □不必要(明らかに教育学習と無関係)□無価値


d.その他意見

その他、ご意見がありましたら自由に記述してください。 

e.回答者のプロフィール

●最後に、回答者のプロフィールをお知らせください。

 ・あなたの年齢  歳

 ・あなたの職業  父兄  教職員(管理職) 小学校 中学校 高校 盲・聾・擁護学校

 ・あなたの性別  □男  □女

 

 ・子供の有無  □いる □いない

●詳細プロフィール

 教員の方は、恐れ入りますが所属・氏名・担当教科・E -mailのご記入にご協力ください。

(個人情報は本調査の目的以外には用いず外部に開示しません)

  所属校名   氏  名  担当教科  E-mail 

(2) アンケートの実施

 評価シートによるアンケートは、Web上に公開し、オンラインで回答が収集できるものとした。また、同じ内容を紙に印刷して教員研修会等の折に配布し、筆記回答も得た。

 アンケートの呼びかけは教育関係メーリングリストに広報し、教員および一般に協力を呼びかけた。

 調査期間 1999年7月23日〜2000年2月7日

 調査方法 インターネット上からのオンラインによる全国からの回答 46名

アンケート用紙による回答 愛媛県内のアンケート依頼者 207名

(3) アンケートの結果と考察

1) サンプル数

 回答者数は253名であるが、アンケートは1つの回答で複数の対象年代を選択することが出来るようになっているので、サンプル数は選択した対象年代数だけ増加して、537サンプルとなる。

 

2) 回答者のプロフィール

 図1.2.2-1は回答者のプロフィールである。40歳〜44歳代のサンプルが140件と一番多く、30歳〜34歳の101件、25歳〜29歳の75件の順になっている。回答者の職業は、教職員がほとんどで小学校教諭のサンプル160件、高校教諭のサンプル145件、中学校教諭のサンプル115件となっている。サンプル数の55%は男性で44%が女性であり、70%が子供有りで、27%が子供無しとなっている。

 

3) レイティングレベルに対する見解

 図1.2.2-2から図1.2.2-6は全サンプルを対象に、RSACi型のカテゴリ「暴力」、「セックス」、「言葉」と「その他」および、「その他の事項に対する見解」のレイティングレベルに対する見解(禁止、原則禁止、原則許可、許可)の割合を表したものである。

図1.2.2-2

図1.2.2-3

図1.2.2-4

図1.2.2-5

 図の見方は、例えば「暴力」カテゴリの例をとれば、RSACiのレイティングレベルの「残虐」は「V4」に、「殺人」は「V3」に、「殺傷」は「V2」に、「争い」は「V1」に、そしてその他の軽度の暴力を意味する「なし」は「V0」にそれぞれ対応する。

 レイティングレベル4で禁止する必要があると言う見解は暴力、ヌード、セックス、言葉、その他、の順に高い。レイティングレベル3で禁止する必要があると言う見解は暴力、言葉、ヌード、セックス、その他、の順に高い。どのカテゴリでもこのレイティングレベルまでは禁止することが必要である。

 レイティングレベル2になるとカテゴリによって回答者の見解が分かれてくる。暴力については禁止と原則禁止の見解が同率くらいになってくる。殺人までは禁止の意見を持つが、殺傷になると意見が分かれてくる。レイティングレベル1になると暴力とその他については禁止から原則許可の見解が同率くらいになっている。レイティングレベル0については、見解が分かれている。これは、全てのカテゴリに対して禁止の見解にマークしたサンプルが75件あり、見解の持つ意味が正しく理解されていないからだと思われる。

図1.2.2-6


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