地域学習の一環として,地域の情報を収集したりホームページにそのコンテンツを登録したりするという授業は一般的に行われているが,その学校内の地域に限定されることがほとんどである。さらには,共通の尺度は存在しないことから,学校によって内容や情報量,公開方法などに差が出る例が多い。
これらの授業においては,ホームページを作成することが大きな目的になっており,その時点では最新の状況であったとしても,その後は作成されたホームページが活用されることは少なく,そのまま消滅してしまう可能性もある。
逆に,ITを使う利点は1つのデータを様々な視点で捉えることができることであり,そのデータを扱う年月日や学年,教科のほか,データの年代や静止画・動画の区別など,様々な情報を付加することでデータの深みと重みを増すことができる。
このようなデータはアーカイブし続けることにより,歴史的な資産として活用される続けることが可能になる。
しかしながら,データ自体と属性情報が同じ領域にデータとして格納されてしまうと,次第にデータが現有するという認識が薄くなり,いつの間にか過去のデータとして捨て去られてしまうことが危惧される。これは子供たちの学習の成果を蓄積できないという点で,教育上の問題点とも言うことができる。
一方で,岡山市では隣接する学区の学校を選択して入学する制度が平成17年度から開始されるため,子供たちの観点で隣接地域を知る機会が必要となってくる。これは最新の情報だけでなく,今までに蓄積された情報も有益なものとして活用されるものと考えられる。
航空写真にICタグを散りばめ,その上を移動して地域の情報を読み取ることで,リアルな街を散策するのと同じような状態・感覚で年代を超えた情報閲覧が可能になる。
これはホームページ上の情報を閲覧するというバーチャルな体験だけでは得がたい効果がある。
また,校域を外れた隣接校同士の情報共有や小中学校間で連携して情報収集を行うことにより,相互理解につなげるという可能性もある。
さらに,地域を探求する上では町内会を中心とした地域コミュニティとも連携し,新旧の地域情報を再認識しながら地域コミュニティへの参画意識を養うこともできる。
<本プロジェクトにおけるIT活用教育>
収集・作成したコンテンツをICタグに登録する際,様々な属性情報を付加することによって,それに応じた複数パターンのデジタルマップを作成することもでき,多くの視点で広く深く見つめる教育が可能となる。
また,調べるだけではなく,「現代」という時代を将来に残す(保存する)という観点において,IT活用を生かした教育を行うことができる。
ICタグはバーコードに代わる先端技術として,物流業界をはじめ,食品や医療・出版など様々な産業において活用され始めている。この先進的な技術を教育分野でも応用してリアルとバーチャルの世界をつなぐことで,これからの情報教育の範囲を拡大させることが可能になる。
航空写真とICタグをベースにした「デジタルマップ」を作成から閲覧するまでの過程において,以下の4点について検証する。
- 位置情報を利用する上で,航空写真や地図などの縮尺サイズやICタグの利用要件などを検証。
- ICタグと連動したコンテンツ登録用アプリケーションの機能要件を検証。
- 携帯端末(PDAとタブレットPC)を共存させることにより,子供たちにとって日常的に使える画面サイズや重量等の要件を導き出す。
- コンテンツ収集や利用などの段階において,ブロードバンド環境の必要性とその要件を検証する。
また,今回のプロジェクトにおける教育的な効果を導き出すと同時に,ICタグという先進的な技術を教育のなかでどのように生かせるかという応用例と可能性を引き出すようにする。(12.1参照)
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