ぼく,わたしはゴールドウインの秘密を探る探偵団


 今日の高度情報化社会の時代を生きる子供たちには,情報や情報手段を的確に利用し,自分の問題を解決できる能力を育てなければならない。そのためには,コンピュータを含む教育メディアを有効に学習過程の中に位置付け,問題解決や表現の道具として利用することによって,一人一人が意欲的に学ぶことが大切と考える。

 本単元の学習過程ではインターネットやパソコン通信などの手段によって情報を取り入れる学習活動を展開しようと考えている。このような学習を重ねることによって,既存のコンピュータに適応する能力だけでなく,コンピュータによって開かれた新しい社会状況,すなわち高度情報化社会に適切に対応できる情報活用能力も身に付けることができると考える。


1 ゴールドウインの秘密を探ろう!

 −わたしたちの生活と工業生産−(小学校第5学年 社会科)

(1) ねらい

(2) 指導にあたって

 ゴールドウインのいろいろな仕組みや努力の姿を調べるときには,どんなことを調べたらよいか,どんな調べ方をしていけばよいか分からないという子供がいるであろう。そんな子供には,自分が何について調べようとしているかを話合いや板書,教師の問いかけで明確にし,どのような情報が必要かを考えさせ,適切な情報を選択できるようにしていきたい。また,追究を進めるために必要な情報は教師の方で準備しておく。子供たちが触れやすいようにゴールドウインのスキーウェアや各種運動着のサンプルを展示したり情報が収められているコンピュータやビデオなどのメディアを資料コーナーに設置したりしておく。そして,必要に応じてそれらを利用しながら,自分の問題に関連する適切な情報を選択できる能力を育てる。

(3) 利用場面

 この単元では,次のような学習場面でコンピュータを活用する。

1)多くの情報を得たり,それらを自分の問題解決に生かしていったりする場 での利用

 子供たちは,見学したり資料集で調べたり,インターネットを利用したりして多くの情報を得るであろう。しかし,それらの情報をまとめることで満足してしまい,別な角度から見なくなる子供もいると考えられる。そのような子供たちが自分の考えをもとに,同じ視点で調べている友達と話し合ってみることで,自分の見付けたゴールドウインの工夫や努力が,他の友達とどこが違ってどこが同じなのか気付くであろう。そして,その話合いから自分が気付かなかった他の友達のよいところを,自分の考えに取り入れていくことができるのではないだろうか。さらに,自分の考えに満足していた子供には新たな事実に出 合わせることで,新たな疑問へとつなげていくであろう。

 このような活動を通して,いろいろな面からゴールドウインの秘密を意欲的に探り,友達から得た情報を積極的に活用していこうとする態度を育てる。

2)自分なりの考えを大切にしたよき情報発信者や受信者となっていくための 表現活動の手助けとしての利用

 情報の検索,受信,理解,活用,発信にかかわる能力を育てるには,単に情報メディアの扱いがうまいとか,多種多量の情報を短時間に処理する能力があるというリテラシーに関する視点だけでは不十分である。情報のやりとりを通じて,「コミュニケート能力」,すなわち人が人につながりをもつ能力,人が人に働きかける能力の育成を図ることが必要であると考える。

 そこで,ゴールドウインについて学習した後,コンピュータなど各種のメディアを活用して,自分が調べた視点で考えをまとめるように働きかけていきたい。そうすることで,自分の思いを理解してもらうためにはどのようなメディアを利用すればよいのか考えることができ,よき情報発信者となることができると考えられる。また,それらのまとめをインターネットにのせることで,他人を意識し,さらにその他人にわかってもらうための効果的な表現方法に目を向けれる子供を育てる。

(4) 利用環境

  1. 使用機種 IBM 20台
  2. 周辺機器 37インチ大型ディスプレイ
  3. 稼働環境 インターネット1台を大型ディスプレイにつなぎ,提示する。
  4. その他の利用ソフト

  5.  この学習では,富士通製のFM TOWNS II(1台)のタウンズギヤを利用し て,子供たちの発表用資料を作成した。それぞれ自分が気になった会社の製品を作る上での秘密や売り上げを上げる秘密それから従業員の人たちの 努力を写真や短い言葉でまとめた。

2 インターネットを使った指導計画

指導計画(8/12) 留意点


売り上げを伸ばしているゴールドウインの秘密を探ろう
(1)自分が普段使っている運動着をもちよりどこのメーカーか調べる。
  • 様々な運動服を持ってこさせる。
  • スポーツ雑誌などの切り抜きも行っておくよう指示する。
  • 知っているブランド名も事前に調べておかせる。
(2)繊維工場がたくさん倒産しているにもかかわらずゴールドウインが売 り上げを伸ばしているのはどうしてか話し合う。
  • 繊維工場の意味を説明し理解させておく。
  • ゴールドウインなど売り上げを伸ばしているメーカーが努力しているこ とに気付かせる。
  • 消費者としての立場から売り上げが伸びている原因を考える。
ゴールドウインの秘密を探るために工場見学をしよう。
(3)考えた予想を確かめるための工場見学の計画を立てる。
  • 自分がもった予想を大切にしながら,たくさんの疑問を見つけさせる。
  • 見学から分かることと質問をすることで分かることなどがはっきり分け ながら計画を立てさせる。
(4)工場見学をする。
  • 何度も見ることができないのでメモを取りながら見学させる。
  • 絶対に聞きたいことは事前に会社側に連絡しておくと聞き逃しや見逃 しはない。
(5)(6)見学で見聞きしたこと,家の人の話,インターネットなどをもとに,一人学習を進める。

☆インターネットを利用
☆パソコン通信を利用

  • 各企業のリストを参考に各社のホームページアドレスを調べておく。
  • 電子メールを利用して姉妹校などに事前に授業のねらいや流れを伝えて おき,互いにやりとりできる環境づくりにしておく。
  • 不特定多数の人から意見を聞きたいときは PC-VANやNIFTYなどが有効な 手段である。
  • 返答には少し時間がかかるのでそれを考慮して活動時間を組み替えるこ ともいい。
  • インターネットなどにこだわらず調べ活動を行わせる。
(7)一人学習でわかったことを資料化する。

☆コンピュータでまとめる

  • コンピュータを利用してまとめると画像や音声なども組み込んでまとめ ることができることを知らせる。
  • コンピュータ一辺倒にならないようにOHPシートなども用意し,ホー ムページにつながるように働きかける。
(8)調べて分かったことを話し合う。

☆インターネットを利用

  • インターネットのCU-SeeMeを利用してリアルタイムにテレビ会議を導入 し,意見の交換を可能にしておく。
  • 自分がまとめたものを瞬時に出せるように前もって準備させる。
(9)話し合ってはっきりしないことや新しく疑問に思ったことを調べる。

☆インターネットを利用

  • 今までコンピュータに目がいかなかった子供には,インターネットから 情報を引き出すことができることを伝える。
  • クラス内のアンケートや家族からの情報も大切な活動であると助言する。


日本の工業に期待したいことを提案しよう。
(10)(11)ゴールドウインを調べて分かったことをもとに他の種類の工場と比較して,これからの日本の工業は,どんな工夫をすべきか提案しよう。
  • ゴールドウィンでの学習が生きるように自分がまどめた結果を他の種類 の工場でもそのようになっているか確かめるように働きかける。
  • 他の工場のホームページ例えばトヨタ自動車工場や日産自動車工場など をサーチエンジから探させる。
工業新聞を完成しよう。
(12)分かったことをまとめて工業新聞を作ろう。その新聞をインターネットにのせよう。
  • 従来の新聞形式だけでなく,ホームページ形式のものを作ろうとしたい 子供には作らせる。
  • 今後の学校のホームページに載せることを伝えておく。

3 本時の学習内容

(1) 本時の目標

 ゴールドウインでの工場見学,インターネットや他の資料集の情報,学習中のテレビ会議からの情報を利用した話合いから,ゴールドウインが売り上げ高を伸ばすために生産工程や製品開発の工夫や働く人々の努力があることを理解することができる。さらに,自分たちの考えを深めるためには情報収集が大切であると感じることができる。

(2) 本時の展開

学習活動
児童への働きかけ
備考
売り上げを伸ばしているゴールドウインの秘密について話し合 おう
1 調べて分かったことを話し合う。
  • 大量生産の仕組みについて
  • 海外との関係について
  • よい製品作りについて
  • 働く人について
CU-SeeMe no kaigi

CU-SeeMeを利用しての会議
  • 分かりやすく発表するために,自分がまとめた資料で必要なところだけ を選択させておく。
  • 一人調べや友達の資料から分かったことだけを発表する子供には,事実 についてどう思うのか,どう考えるのか付け加えて発表するように助言することにより,工夫や努力について考えていけるようにしたい。また, 消費者としての立場で考えられるように助言することでいろいろな視点があることに気付くようにしていきたい。
  • 得た情報の根拠がどんな事実から導かれてきたのかはっきりする。
  • 友達の考えを大切にしながら聞かせ,自分の発表の中に友達の考えがど のようにかかわっているのか意識しながら発表できるように,自分の考えと良く似ている点や気付かなかった点などがないか問いかけていきた い。
  • コンピュータ
  • 大型ディスプレイ
  • インターネットによる CU-SeeMe
  • 自作の資料
  • 2 テレビ会議を通して一の人の考えを聞き,それについて話し合う。
  • テレビ会議を通して一般の人の考えを聞いて自分の考えを見直すきっか けにするようにさせる。(富山大学教育学部)
  • インターネットによる CU-SeeMe
  • 3 今日の学習で思ったこを書く。
  • 友達とのかかわりや新しい疑問などに目を向けている子供の意見を広め るようにして次時につなげる。
  • 4 評価とまとめ

     この単元では「情報」を積極的に求め,活用していこうとする子供の育成を試みた。解明されたことは,友達をはじめ他人に自分の考えを伝える必要性が生まれたときに初めて子供たちが動き出すことである。そのためにも伝えたくなるような教材を選択し,伝達活動を行いたくなるような学習環境を整えてやることが大切である。そのような中で,コンピュータは,各種の情報メディアをまとめ自分の思いの表現を助けるような役割を担うことになるであろう。

     一方,インターネットの利用に関して,繊維関係のサーバーにアクセスしてそこから発信されている情報を引き出して利用したり,電子メールを利用していろいろな人にアンケートに答えてもらって情報を集めたりすることを考えていた。しかし,サーバーから発信されている情報は,大人向けであるため理解できない言葉が多く子供にとっては必要感が生まれてこない情報源となったようである。子供たちは検索機能を利用したり,インターネットサーフィンと呼ばれる技術を使ったりして自分の利用したいサーバーへと入り込んでいたが,漢字と表現の障害を克服することができなかった。現在は,インターネットに関して,プロジェクト100校がいろいろな取組みを行っている。そのような実践から感じたことでもあるが,ホームページを作成してその中に自分たちの学習の成果や聞きたいことなどを組み込んでおく方法がとても互いにデータのやり取りができて効果的であるように感じられる。また,この単元の中で行ったテレビ会議は,今後,大きな学習効果を生み出すと考えられる。この活動が容易に行えるような学習環境を整えておくことも大切であると考えられる。

     子供からは,「自分の調べたいことからが簡単に調べることができて驚いた。」「インターネットは,新しいことが書かれているので本と少し違っていてどちらを自分の参考にしようか困った。」「富山大学にいる人と話し合いができてすごいことだ。」などの感想が聞かれた。

    (実践者 富山県福野町立福野小学校 坂本博昭)


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