働く目的を考えるためのインターネット活用


この学習におけるインターネット利用の意図

 進路選択においては,幅広い選択肢の中から自分に適した進路情報を取り入れるべきである。しかし,身近な人や書籍による情報収集だけでは資料が限られてしまう。そこで,電子メールを情報収集の道具やコミュニケーションの環境として活用することで,働く目的や卒業後の進路に対する意識を高めさせたいと考えた。また,得た情報・資料等を再構成し,自分たちの学習の成果としてインターネット上に発信したり,メール等のやり取りを通して他の人とのコミュニケーションする場合の最低限のマナーやモラルについての指導も合わせて行いたい。

1 働くことと学ぶこと(中学校第2学年 進路指導)

(1) ねらい

 中学校2年生ともなると,自分の進路希望を持ち始める生徒も増えてくる。生徒によってはさらにその希望実現のための手だてや計画を確かなものにしようとする意識が生まれてきた。しかし,「働くことの目的」といった現実性を帯びた考え方はできておらず,楽観的な考え方を持つ生徒が多いように思われる。

 そこで,「働くことの目的」についてさらに深く認識させることが必要であると思われる。これは自分の将来の職業生活に備えるだけでなく,適切な進路選択のためにも極めて重要なことであると思われる。また,「学ぶことの意味」について考えさせることによって生涯にわたる学習の心がまえを持たせることは,中学での学習を充実させるためにも重要であると考える。

(2) 指導目標

 インターネットを情報収集の道具やコミュニケーションの環境として活用することで,身近な人や書籍による情報収集の限界を補うことができる。さまざまな職種の就業者から多様な意見を聞くことで働くことに対する知識と関心を高めさせるとともに,望ましい職業観・労働観の基礎を養うことを目標とする。

(3) 利用場面

 この学習では次のような学習場面でコンピュータを活用する。
  1. さまざまな職種の就業者の方へのアンケート調査

  2.  さまざまな職種の方々に「働くことの目的」についてどう思っているかというアンケート調査を行いたいが、地域性からも職種や活動範囲が限ら れてしまう。そこで,実際の職業に就業している方々に電子メールを用いてアンケートを実施することで,多様な意見に触れさせる。
  3. アンケート調査をまとめた結果を発表する場面

  4.  各班に届いたアンケートの返信メールをWeb上に上げ,各班で身近な人 に聞いて模造紙にまとめた調査結果とともに,自分たちに届いたアンケート結果をクラスメートに紹介する。

(4) 利用環境

  1. 使用機種

  2.  Macintosh Paforma 588 6台+教師用1台
     富士通FM-TOWNS(ディスプレイのみ使用)
  3. 稼働環境

  4.  Macintosh Paforma 588はネットワーククライアント。
     TOWNSディスプレイは画像提示用。Macintosh Paforma 588の画像を転送するために使用。 発表用のページはあらかじめ教師側で準備。
  5. その他の利用

  6.  今回,様々な職種の就業者の方にアンケートのメールを送るのに、滋賀県大津市平野小学校のホームページにある「全国おたずねメール」 (参照*)という,子どもの質問に何でも答えてくれるというボランティアの方のリストを載せたサイトを利用させていただいた。

     このリストから,生徒たちが質問してみたい職種の就業者の方にアンケートメールを生徒自身が直接出させることで,進路に対する関心を高めさ せるとともに,自分で発信したメールや情報に責任を持たせる。

 (参照*:http://www.cec.or.jp/es/kyouiku/100/project/prjlist/joint/mail/

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2 インターネットを使った授業設計

指導計画(2/2) 留意点
(1)働くことの目的を考える。
☆インターネットの利用
・事前指導として,自分たちの将来なりたい職業や,今の段階での働く目的についてのアンケートを実施する。

・平野小学校のホームページにある「全国おたずねメール」に登録してある就業者の方に質問を行う。

・質問の内容や表現について,グループで話し合う。

○親や自分の身近な人たちに質問し,質問してきた結果を模造紙にまと める。

○「全国おたずねメール」の方々に質問のメールを送る。

 ☆インターネットの利用

・まず,身近な人たちの職業観や働くことの意味などについて意見を聞く。さらに,インターネットを利用して様々な就業者の方にも同様の意見を聞 き,多様な価値観に触れされる。

・模造紙に整理することと同時にインターネットを学習をまとめるための道具として考え,調べてきたことの結果をホームページに記録する。

(2)働く目的について聞いてきたことの結果を発表する。(本時) ・事前に行ったアンケートの結果と調べた後に考えたことを比較し,職業観や労働観に対しての意識を高めさせる。

3 本時の学習内容

(1) 本時の目標

 インターネットを利用して様々な就業者の方の意見を聞き,「働くことの目的」について考えることで、自分の将来に対する関心を高めさせ、働くことの目的を自分の将来に照らし合わせてまとめようとする態度を育てる。

(2) 本時の展開

学習活動 教師のかかわり 備考
前時までの活動内容を確認する。 ・これまでの活動の確認をし,学習の成果が今後ホームページで紹介されることを知らせ,発表の意欲づけをする。
本時の活動内容を知る。
働くことの目的を職業ごとに調べたことを発表し、なぜ 人は働くのか考えてみよう。
発表の準備をする。 ・【学級活動の部屋】から返信メールを載せたページにリンクさせておき,生徒たちが自分で操作できるよにしておく。 ・Macintosh Paforma
・TOWNSディスプレイ(画像提示用)
・学級活動のホームページ
各班ごとに発表する。
・身近な人たちに聞いてきたことをまとめた掲示板を用いて発表する。
・届いたものがあれば,Web ページを開いて,返信メールを紹介する。
・ホームページに載せた返信メールの紹介は,LAN接続されたコンピュータを通して画面を転送する。
Homepage hardcopyHappyo suru seito
Seisaku suru seitoMail no shokai
質疑応答
「働くことの目的」について自分の考えをまとめる。 ・事前に実施したアンケートの結果と学習した後にまとめた結果を比較し,意識が高まったか確認する。 ・Macintosh Paforma
・TOWNSディスプレイ(画像提示用)
※葛尾中学校学級活動の部屋(http://www.katsurao-jhs.katsurao.fukushima.jp/SCR/Gakkyu/g2_index.htm )

4 評価とまとめ

 山間の村という地域性からも,自分たちの身の回りの人にものを尋ねたり,聞いたりする調べ学習ではかなり行動範囲が限定されてしまい,意見や価値観が偏ってしまう傾向があった。ところが,電子メールを利用していろんな地域のさまざまな就業者の方に質問を投げかけたことで,身近にない職業の方との交流が持つことができた。これは生徒たちの関心を高め,メールが届いていると喜んで読んでいる姿が見られた。

 ネットワークのつながりを利用することで,地域を越えてさまざまな意見や情報が収集できること,そして何より他の地域の方とのコミュニケーション手段が少ないこの地域性から,インターネットの活用はとても有効であることがわかった。

 生徒からは,「働くことをただ単純に当たり前に考えていたが,電子メールを使って実際に働いている方に話を聞いてみると,いろんな意見があって勉強になった。」「インターネットでないと,村以外の人の話が聞けないので,今回のメール交換がとても楽しくできた。」と意欲を持って取り組む姿が見られた。

 また課題としては,今回のように外部の方に質問をして学習する場合は,質問に答えてくれる協力者を捜すのが難しい,メールを出しても依頼した相手側がすぐに返信してくれるとは限らないので,届くまでに時間がかかってしまう場合がある,ときには返信されないこともある,といったことが挙げられる。

 また,機器操作に不慣れな生徒への指導のあり方や,メールを出す際の礼儀や内容の吟味の指導が必要である。

(実践者 福島県葛尾村立葛尾中学校 前田 勇治)

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