わたし達の○○○な鳥取県を紹介しよう

小学校第4学年・総合的な学習
中山町立中山小学校 山脇隆史

インターネット利用の意図
 児童の身の回りにはさまざまなメディアが存在している。書籍・電話・FAX・テレビ・ラジオ・インターネットなどなど種類もさまざまで,それぞれに,独自の特性を有するものである。今回の学習では,これら全てのメディアを学習の道具と位置付けて,情報の収集,コミュニケーションツールとして活用した。そして,児童にそれぞれのメディアの特性と活用のマナーを知らせることを目的とした。特にインターネットにおいては,WWWによるホームページからの情報検索と電子メールによるコミュニケーションを体験する事により,児童一人ひとりの情報リテラシーとしてのパソコン活用を高めることをねらって利用した。

1 わたし達の○○○な鳥取県を紹介しよう(小学校第4学年 総合的な学習)
    社会科・国語科・算数科・音楽科・学年活動関連として
(1) ねらい
 自分たちの住む鳥取県のさまざまな営みを自分自身や自分の生活との関わりで見つめ調べ,他地域の友達にどう伝えるかいろいろ表現を工夫する中で,地域の一員として鳥取県を愛し,よりよい社会をつくるために積極的にかかわろうとする態度を育てる。
(2) 指導目標(社会科としての指導目標)
◎鳥取県の様子に関心を持ち,進んで調べ、県の様子を人々に知らせようとする。(関心・意欲・態度)
◎鳥取県の地形・土地利用・産業などの特色や郷土の誇る人々の生活について関心をもち,国内の他地域や外国との関わりについて考える。(思考・判断)
◎地形図・土地利用図・交通図などから読み取り,インターネットなど多様なメディアを活用した情報の収集・検索を行い,必要な内容を選択してよりよく相手に情報を伝えるための工夫と方法を考え表現することができる。(技能・表現)
◎鳥取県内における中山町の地理的位置や県の地形や産業等の特色を知り,国内の他地域や外国とも深い関わりを持っていることに気づく。(知識・理解)
(3) 利用場面
学習活動の構成図
図1 学習活動の構成図(社会科の視点)

 この単元では,次のような学習場面でコンピュータを活用すた。
@他地域との遠隔共同学習の場面(コミュニケーション・コラボレーション)
  テレビ会議システム(NTTフェニックス)を活用し鹿児島県鶴丸小学校と交流学習 ・共同学習(コラボレーション)を行なった。テレビ会議システムの持つ双方向性を十 分に活用し、お互いの学校の児童交流がより密接に行えるように活用を図った。また、 ビデオレターによってお互いの学校の情報を交換し合った。
A鳥取県内と鹿児島県の情報を調べる場面
  鳥取県内の特産品や観光地の情報をインターネットのWWWを使って情報検索を行った。また,共同研究校である鶴丸小学校のある鹿児島県と鳥取県の比較のために,情報の収集に活用した。検索した情報をより詳しく知りたい場合には,電子メール・ファクシミリを使いより詳しく質問を行った。
調べ学習においてはメディア学習の手引きを児童に配布し、児童が利用するメディアの選択から活用方法の学習・質問見学ごっこでの練習・問題点の修正までを一つのサイクルとしてスキルを高めていくように工夫した。また、情報発信においても情報発信の手引きを配布し、情報の再構成から伝達方法の決定の選択・練習・問題点の修正をサイクルとして児童の情報発信スキルを高めていくように工夫した。
 これらにより,多様なメディアを児童の自己決定によって選択できる場の設定によって,活用スキルを高めていくことができた。

(4) 利用環境

図2 インターネットで情報検索する児童

図3コンピュータグラフィックにまとめる児童

@使用機種 DOS/V自作デスクトップパソコン3台、ノートパソコン1台
A周辺機器 ISDNターミナルアダプタ,37インチ大型ディスプレイ,HUB,テレビ会議システム,CCDカメラディスプレイ切り替え器
B稼働環境 ISDN回線とPROXY97(シェアウェア)を導入した簡易校きるようにした。
Cその他の利用ソフト
 この単元では,インターネットのホームページを検索するためにインターネットエクスプローラ3.02(マイクロソフト)を利用した。また,児童の情報検索作業をスムーズに行うためにリンクページを作成し,検索の最初はいつも同じページからスタートするようにした。これによって,児童は繰り返し情報の検索を行うことですばやく求めているホームページを見つけることができるようになった。また,PROXYを導入することで,ダイヤルアップ接続であるにも関わらず,LAN接続と同じ使用感で学習を行うことができた。インターネットへの煩雑な接続作業を省略することによって,児童がインターネットをより身近にやさしく感じる利点もある。


2 本単元の指導計画とメディアの位置づけ  
学習の過程
学習の内容とメディアの活用
教師の支援と留意点











・鶴丸小学校の友 達と交流しよう ☆テレビ会議システムを活用し ての交流授業,ビデオレターの交換を通して交流を行う。 ○鹿児島県との地域の 違いに気付き,自分 たちの住む鳥取県に興味関心を持てるようにする。
・鶴丸小学校の友 達にもっと鹿児 島県のことを聞 いてみよう ・ファクシミリを使い鶴丸小学 校に質問を送る。 ○鶴丸小学校からも児 童への質問を受ける ことで自分たちの住む鳥県への興味・関心を高める。
・私たちの○○○ な鳥取県を紹介 しよう ・鶴丸小学校から受けた質問に ついて話し合い,自分自身の学習問題を考える。 ○問題提示を受けて, 自分の学習問題をも てるようにする。
調






・グループで調べ 学習の相談をし よう ・同じ学習問題をもつものがグ ループをつくり,調べ方やまとめ方を話し合い,学習計画をたてる。 ○課題別選択グループ の活動ではT・Tを 生かし,児童の多様な興味や関心に対応できるようにする。
・いろいろな方法 で調べてみよう ・グループでたてた学習計画に したがって,調べ学習を行 う。
・メディアの特性を知らせ,活 用のための方法を話し合う。
WWWを使っての情報収集
電子メール・ファクシミリを 使っての個人からの情報収集
・見学とインタビューによる情 報収集
・書籍を使っての情報収集・電 話を使っての情報収集
○学習計画にしたがっ て,多様なメディア を使って調べ学習ができるようにする。
・わかりやすく伝 える方法を工夫 しよう ・グループで調べたことを,グ ループ同士で発表し合いながら,調べた内容を深め,鶴丸小学校に伝えることができる ようにまとめる。
☆コンピュータグラフィックに まとめる。
・ビデオレターにまとめる。
・壁新聞にまとめる。
○学年及びグループで お互いに関わり合い ,他の人の調べ方やまとめ方の良さに気付き,学ぶことがで きるようにする。
○調べた内容を図や表,メディアを使っ てまとめ・表現でき るようにする。





・鶴丸小学校と情 報を交換しう。 ・調べて分かったことを,鶴丸 小学校に発表したり聞いたりして情報の交換をする。 ○自分たちの調べた内 容と鶴丸小学校が調 べた内容を比べて聞くことにより,多様な見方を身につける ことができるように する。






・テレビ会議を使 って感想を伝えよう。 ☆お互いの発表について感想を 話し合い,お互いの県の共通点と違っている点について話し合う。
★インターネットを使って,他 の県の様子を調べる。



・私たちの鳥取県 を学習発表会で 発表しよう。 ・学習した内容をまとめ,歌や 劇にまとめて学習発表会で発表する。
・壁新聞にまとめた内容を展示 し,鳥取県資料館を開く。

○総合的な学習としての各教科学習内容とメディア活用の関連

図4 各教科とメディアの関連

3 本時の学習内容
(1) 本時の目標

・グループでたてた学習計画にしたがって,メディアの特性を考えて調べ活動を行う。
・グループで調べたことを,グループ同士で発表し合いながら,内容を確かめ合い,鶴丸小学校に伝える方法を工夫する。
(2) 本時の展開
学習問題グループ別の学習活動
鳥取県の地理・人口グループ 鳥取県の農業・なしグループ 鳥取県の特産品グループ 鳥取県の自然グループ 鳥取県の歌・祭りグループ
○方言班
テレビ会議システムを使って鶴丸小学校の友達と交流し,鹿児島の方言の言い方(イントネーション)や意味・使い方を確認する。

○観光地班
インターネットを利用して鳥取県内の観光地の情報を調べる。

○農業班
ファクシミリであつめた市町村別特産物を白地図にまとめる。

○20世紀なし班
テレビ会議システムを使って鶴丸小学校の友達と意見交換る。
・日本一の20世紀なしのひみつ
・鹿児島のさつまいものひみつ

○海産物班
インターネットやCD−ROMを使い,鹿児島県の海産物について調べる。
鹿児島県と鳥取県の漁業の違いについて調べる。
○木材班
鳥取県の木材産地をパソコンでコンピュータグラフィックに表現する。
○鳥取砂丘班
鳥取砂丘のイメージをパソコンでコンピュータグラフィックに表現する。

○大山班
ファクシミリで集めた春夏秋冬の大山についての資料をまとめる。

○童謡唱歌班
テレビ会議システムを使って,鶴丸小学校の友達に歌を歌い,その歌の作者や内容等を伝える。歌の感想をもとに鶴丸小学校の友達と話し合いを行う。
4 評価とまとめ

図5 鳥取砂丘のイメージ(児童作品)
今回の授業の実践を通して再確認したことは,「ネットワークは人と人をつなぐ」「学習の道具としてのメディア活用」の2点であった。
 1点目は,「ネットワークは人と人をつなぐ」である。電子メールやFAX・電話による児童の問いかけに対して,質問した全ての方が丁寧に解答を寄せてくださった。このような,メディアの活用を推進めていくと人とのつながりが希薄になるのではないかと心配する声もあるが,今回の実践を通してネットワークの向こう側には人がいて現実の社会と同じように心が通い合った社会になっていることを再確認した。児童は,自動販売機のボタンを押すように情報を取り出したと勘違いしそうになるが,支援する教師が人と人とのつながりを学習の中に明確にしていき,ヒューマンネットワークとしてのメディア学習を意識付けることが必要である。
 また,2点目は「学習の道具としてのメディア活用」である。今回,各種メディアを学習の道具として活用することを試みた。児童は,インターネットて,学習の道具としての活用がはかれることが確認できた。今後,小学校にも積極的にメディアを活用できる環境が整うことであろうが,児童の発想にたったシステム整備を教師自身研究していくことが急務と思われる。

ワンポイント・アドバイス
  インターネットに接続できるコンピュータが1台しかない場合,授業での活用が大きく制限されてしまう。そこで,本校では,簡易校内ネットワークを構築して1電話回線で複数のコンピュータでインターネットに接続できる環境を整えた。これによって,インターネットの授業活用ができるようになった。最近では,ダイアルアップルータやPROXY(ソフト)などハードもソフトも市販されているので予算を計上して,環境を整備していきたい。OSにWINDOWS95 を使っているコンピュータを使用していれば,比較的簡単に校内ネットワークを構築することができる。
 今回の取り組みではT・Tで取り組み,メディアと各グループの支援に教師の役割を分担した。これによりコンピュータの操作に慣れない児童についても比較的スムーズに活用を図ることができた。全ての教師がコンピュータの操作が可能なことが理想であるが,T・Tなど積極的に活用して役割分担のもとに授業を進めることも必要であると感じている。
(実践者 船原文野 瀬尾徹治 丸岡美穂 山脇隆史 生田祥子)

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