主体的に情報に関わっていく子供の育成を目指して
---インターネットを利用した社会科の調べ学習を通して---

小学校第5学年・社会
南知多町立内海小学校 大岡 栄治

インターネット利用の意図
 高度情報化社会を迎え,私たちを取り巻く環境の至る所でコンピュータが活用され,たくさんの情報が行き交っている。これら膨大な情報の中から,真に必要とする情報を取捨選択し,活用していく能力を身に付けていくことは,これからの社会を生き抜いていく上で必要不可欠の条件といえる。そこで,リアルタイムで最新の情報が得られるインターネットのメリットを生かし,社会科「水産業で働く人々」の調べ学習の場に於いて,情報収集の一手段として活用させ,子供たちの情報活用能力を高めていきたいと考えた。

1 水産業で働く人々
(1) ねらい
 調べ学習に対する児童の取り組み方は,本が好きか嫌いかが大きく影響していると思われる。その理由は,「調べる」イコール「図書」というイメージが強いためである。本学級の児童に於いても,「読むのがめんどうだ。」という理由から調べ学習に対する意欲は薄れがちであった。そこで,「図書資料だけが情報収集の手段ではない。」というところから,様々な情報収集手段を児童に知らせ,体験させる中で,意欲的に学習に取り組めるようインターネットの利用を考えた。
(2) 指導目標
・学校や家庭でよく食べる水産物に関心を持ち,水産業で働く人々の工夫や努力を進んで調べようとする。
・水産業で働く人々の工夫や努力を調べる中で,これからの水産業のあり方を考えることができる。
・図書資料やビデオ・インターネット等,様々な情報収集手段を活用して課題を追求してまとめ,一新聞記者として自分の考えを発表することができる。
・日本の水産業の現状を理解し,水産業に携わる人々の工夫や努力を知ることができる。
(3) 利用場面
 この単元では,次のような学習場面でコンピュータを活用する。
 沿岸漁業,沖合漁業,遠洋漁業,養殖業・栽培漁業の4つの範疇から自分の調べたい課題を見つけ,各種資料(図書・ビデオ・インターネット)を使って効果的に調べ学習を進める。
(4) 利用環境
第1次 第1時 ・食生活を支える各種の水産物から,漁業に対する疑問や調べてみたいことなど,日本の水産業について調べる視点を考える。
第2時 ・日本近海の自然条件や漁港,漁業別漁獲量の推移より,水産業で働く人々の工夫や努力を予想し,単元の学習計画を立てる。
グループ編成・調べ学習室のローテーション
第2次 第3時〜第5時 ★図書資料・ビデオ資料・インターネット資料等を活用して個々の課題を調べる。
第3次 第6時〜第9時 ・調べたことを新聞形式でまとめ,発表する活動を通して,沿岸漁業,沖合漁業,遠洋漁業,養殖業・栽培漁業で働く人々の工夫や努力を話し合う。
第4次 第10・11時 ・これからの日本の水産業のあり方について座談会を開き,単元のまとめをする。

3 利用場面
(1) 目標

 様々な情報手段を効果的に活用し,水産業で働く人々の工夫や努力を調べることができる。
(2) 展開(3・4・5/11)

学   習   活   動
指 導 上 の 留 意 事 項













1 前時までにまとめた個々の学習課題を確認し,本時の学習内容と方法を知る。
(1) 本時に調べる内容を明確にする。
○ 友達の発表を聞く。
○ 自分の課題を明確にする。

(2) 調べる方法と場所の確認をする。
・ 個人資料   5年1組教室
・ ビデオ資料  低学年図書館
・ 図書資料   高学年図書館
・ インターネット資料  会議室

水産業について調べよう。

(3) 持ち物の確認をし,教室移動をする。
・ 課題追求用紙
・ 筆記用具

○数名の児童を指名し,前時までに調べられた課題とその方法,本時に調べる課題と方法を発表させることにより,本時の学習への意欲付けを図る。

○T1は会議室でインターネットを利用するグループの援助に当たり,T2はその他のグループの援助に当たることを児童に知らせ,課題追求の際,困っている児童の支援をする。

評本時の学習課題を明確にし,活動意欲を持つことができる。

(観察)
○教室移動を速やかにさせ,課題追求の時間確保を図る。

2 個々に学習課題の追求をする。
○ グループ内で意見交換し合いながら,個々に課題追求を進める。

○ ワークシートにメモを取りながら発表資料の収集を行う。

8 ○興味ある漁業の種類によって分けられたグループごとにまとまって行動させる。

○互いに意見交換をさせながら,課題追求がスムーズに行えるように支援する。

評友達と積極的に意見交換しながら,自分の課題を追求していこうとする。

(観察)
学習グループと学習課題例
[沿岸漁業]
・漁法,漁獲量の推移等
[遠洋漁業]
・漁法や市場,加工工業等
[沖合漁業]
・町や港,漁場や漁法等
[養殖・栽培漁業]
・水産資源の育成,栽培漁業の方法等
個人資料・ビデオ資料・図書資料
インターネット資料
○図書資料については,他の児童も利用することを考え,時間内でメモをとれない児童に対してはコピーをとって与えるなどの支援をする。

○ビデオ資料については,3セットのビデオデッキとTVを用意し,課題追求の選択の幅を広げるようにした。

 また,必要な情報等はストップボタンを押したり,巻き戻したりして繰り返し視聴するなどの注意を与える。

○個人資料は,本人の意志を尊重しながら,他の児童の共通資料として活用させたい。

○3つの教室を巡回しながら,個々の児童の支援を行う。

T2
○今回は時間的制約もあるため,コンピュータリテラシィの学習はカットし,インターネットへの接続やサーチエンジンの始動については教師自らが行い,その過程を理解させるにとどめる。

○調べていく過程で,新たに見つけ出した課題も追求していこうとする姿勢を大切にする。

○必要な資料は,プリントアウトし,児童の学習のまとめに活用させる。

○時間内でプリントアウトできない場合については,コンピュータのハードディスクに記録された履歴フォルダの内容を後日呼び出し,児童に与える。

T1
  42 評各種資料から,自分の課題を進んで解決していこうとする。
(ワークシート点検)

3 次時の学習課題を知り,本時の まとめをする。
(1) 調べ学習のまとめをする。
・解決した課題
・未解決の課題と解決策

(2) 次時の学習課題を知る。
・発表の準備・方法

(3) 各会場ごとに終わりの挨拶をする。

45 ○3時間の調べ学習のまとめとして,個々に課題解決のチェックをさせ,未解決の部分の今後の取り組みについて支援する。

○まとめ方等の支援をし,次時への意欲付けを図る。

○一斉には集まらず,各会場ごとに終わりの挨拶をする。

(3) 実践内容とその様子

@ TTを取り入れた授業形態
コンピュータ操作に慣れない児童の支援のために,T1はインターネットを利用するグループの援助にあたり,インターネットの接続及びサーチエンジンの始動を行った。子供たちは初めてみるインターネットの画面を興味深く見つめていた。検索画面までを表示させた後,児童個々に自分の調べたい課題にあわせてマウス操作を行わせた。T2はビデオ資料・図書資料を扱っているグループを巡回し,個々の児童の学習がスムーズに行えるよう個別指導を行った。

A 授業の事前準備と支援
教師は事前に,児童個々の調べる内容について把握しておき,インターネットに接続して資料を収集した。これは,事前にホームページにアクセスすることによって,当日の授業において資料を検索する時間のロスを省くためである。しかしながら,ホームページの多くは大人向けであったり,商業用のものが多かったりで児童の教材用として適したものに出会うことが困難であった。
ホームページから必要とする情報を探す
B ホームページへのアクセス
ノート型パソコン1台に携帯電話を接続してインターネットにアクセスした。コンピュータ操作は主に教師が行い,児童はディスプレイ上にあらわれたホームページを閲覧しながら自分の必要とする情報を探し出し,プリントアウトした。2グループ(10人)に対してコンピュータ1台しかないため,1グループに実際の操作をさせている間,他のグループは接続されたもう1つのディスプレイの視聴をさせた。
 水産業に関するホームページの数は1000件を越え,これら膨大な情報から児童個々の必要とする情報を見つけ出すことは非常に難しいことであった。検索画面からでは,ホームページの内容までは詳しくはわからず,実際にページを開いてみると予想と反してがっかりしている児童も多くいた。しかし,画面を通して送られてくる新鮮な情報に子供たちは真剣な表情で食い入るように眺めていた。

4 実践を終えて
 コンピュータ学習もインターネットも子供たちにとって初めての体験であったが,今回の実践を通して次のような成果が得られた。
○ インターネットという新しい情報収集手段を知り,活用することを通して,調べ学習に対する意欲が高まった
○ インターネットのホームページから,個人の課題解決のための最新の情報を得ることができた
 また,上記の研究の成果を踏まえ,今後,コンピュータの教育現場への有効利用を考えると次のような課題が考えられる。
○ コンピュータ操作に関わる学習を十分に行っておくこと。
 ・ コンピュータリテラシィの学習に対する時間の確保
○ 児童自らが,必要とする情報を適切に得ることのできる力を身に付けさせる。
 ・ インターネットへの接続方法の学習
 ・ 情報倫理に関する学習
○ 設備・環境面を充実させる。
 ・ いつでも,どこでも自由にコンピュータに触れることができる環境
 コンピュータのすばらしさを体験するためにも,リテラシィの学習なくしてはなりたたない。コンピュータ導入を間近に控え,継続的な学習時間の確保と学習に当たってのソフトウェアの選定が重要と考える。また,インターネットを利用するに当たっては,今後ますます,個人レベルでの利用が増えると考えられる。そこで,情報発信に際しての倫理面の指導が必要になってくる。これは,コンピュータ学習の時間ばかりでなく全教育活動の中で取り組んでいかなければならない問題である。また,環境面を取り上げれば1人1台を基本として,自由にコンピュータに接することのできるような教育環境を整えていく必要があると考える。
 今回は,インターネットを授業の中でどのように利用すればよいかということで実践を行ってきた。インターネットは情報収集の一手段としての利用法だけではない。児童・生徒の学習成果を発表し,ネットワークを通して他者との交流の場を提供してくれるものである。今回の授業では,たまたま漁業を扱ってきたが,南知多町内には漁業の盛んな地域もあり,その地域性を生かし,逆の立場で情報を他の地域の人々に提供する活動も考えられる。今後も,インターネットの教育的利用について研究を深めていきたいと考えている。
ワンポイント・アドバイス
 検索エンジンには,YAHOOとinfoseekを使用した。検索ワードとして沿岸漁業・沖合漁業・遠洋漁業・養殖業・栽培漁業の5つで調べたところ,YAHOOは該当する数が少ない反面,期待通りのホームページを得ることができた。infoseekは該当する数が多すぎて,かえって調べにくい面もあった。児童用の資料として,「お魚探偵団」ホームページアドレス=http://seaclub.power.co.jp/fish/map.htmlは有効な資料であった
 また,昨年度より南知多町の8つの小学校と5つの中学校がそれぞれの学校のホームページを作り,南知多町のホームページとしてまとめている。本年度は,南知多町の位置や史跡などを新たに加えたり,データを新しいものに差し替えたりするなどの改訂作業を進めてきた
 南知多町の小中学校のホームページアドレス=http://www.japan-net.or.jp/~minami

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