テレビ会議システムを活用した共同学習
---インターネット俳句の会---

小学校第6学年・国語
広島市立鈴張小学校 玉井 基宏
広島県呉市立三坂地小学校 小川 雅史

インターネット利用の意図
 小学校の学級で児童間の評価やクラス内の価値観が固定化することがある。新しい考えや独創的な意見を自由に発言でき難い雰囲気が形成され,それが望ましくない価値観形成を助長してしまうという悪循環に陥ることもある。このような状況を打ち破り,児童の意欲を引き出すために,教科指導や道徳,特別活動などの教育活動を通して児童に望ましい価値観の形成を促していかなければならない。
 今回は,テレビ会議システムを活用した共同学習を計画した。従来,クラス内や学校内で行われている児童間の相互評価を生かした授業をインターネットで接続された遠隔のクラスと行うことで,クラス内の価値観を揺るがし,授業を活性化することを意図してこの授業を行った。

1 短歌と俳句
(1) ねらい
 小学校国語・6年の単元に「短歌と俳句」がある。この単元では,「俳句・短歌の特質について学び,五・七調のリズムに親しませ,朗読や視写をさせる。」「磨かれた言葉による表現をイメージ豊かに読ませる。季語についてもふれる。」「好きな詩歌を発表させ,言葉のもつひびきの美しさを感じとらせる。」「言葉の使い方によって,意味の違いや感じの違いがあることに気づかせる。」といった内容を学習する。
 今回は,学習のまとめとして,遠隔地の2教室をテレビ会議システムで接続して児童作品の鑑賞会を実施した。
(2) 指導目標
 短歌や俳句を読みながら,そのリズムや表現の美しさ,おもしろさを味わうことができる。短歌や俳句の形式や表現の仕方をよく理解し,読み取った内容を聞き手にもよく味わえるように朗読することができる。短歌や俳句に親しみ,進んで鑑賞する態度と習慣を身につけることができる。
(3) 利用場面
 テレビ会議システムを活用して,遠隔の2学級を接続し,児童がつくった俳句の鑑賞会を実施してこの単元のまとめとした。
(4) 利用環境
@使用機種 Apple Machintoshi LC630 1台
A周辺機器 液晶プロジェクター
B稼働環境 CU-SeeMeの画像を液晶プロジェクターにより教室前面に配置したスクリーンに投影して,相手校の様子を提示する。
2 指導計画
指導計画(6/6) 留 意 点
@短歌・俳句について学び,教科書の6首の短歌の情景を感じ取る。 俳句・短歌の特質について学び,五・七調のリズムに親しませ,朗読や視写をさせる。
A教科書の7句の俳句を朗読して,作品のおもしろさを味わう。 磨かれた言葉による表現をイメージ豊かに読ませる。季語についてもふれる。
B朗読発表会をして,文語の味わいに ついて話し合う。 好きな詩歌を発表させ,言葉のもつひびきの美しさを感じとらせる。
C俳句をつくる。 言葉の使い方によって,意味の違いや感じの違いがあることに気づかせる。
Dクラス内鑑賞会をする。 友達の意見と自分の考えを比べながら読み取りを深めさせる。
Eテレビ会議システムで他学校と接続し,共同鑑賞会をする。 他校のクラスの意見を自分の考えを比較しながら読み取りを深めさせる。

3 利用場面
(1) 目標

・作者の意図に注意しながら作品を鑑賞し,自分の感じ取った内容をわかりやすく発表することができる。
・自分の考えと比べながら友達の意見を聞き,作者の意図をより深く理解することができる。
(2) 展開
学 習 活 動 活動への働きかけ 備 考
1 自己紹介 ・お互いの学校の似ている点や異なる点について気付かせる。
・緊張をほぐすように声をかける。
自己紹介は学校の周りの様子を撮影したビデオテープを用意しておく。
2 作者による作品の朗読

3 作品の鑑賞文の発表と意見交換

4 作者による解説

・相手の学校から指名された児童その作が自分の作品を朗読し,その作品についての意見を交換する。
・意見が出切ったところで,作者が作品について解説する。
以上の流れを繰り返す。
どの作品について意見交換をしたいかあらかじめ児童の希望を取っておく。
5 まとめ
・学習のまとめとして授業の感想を発表する。
・何人かの感想を発表させる。
図1 授業の様子(1)
図2 授業の様子(2)

4 実践を終えて

 学校教育における教育活動のほとんどは,外部から閉ざされた環境で行われてきた。閉ざされているからこそじっくりと学習を深めることもできるが,その閉鎖性が足かせとなりクラスの雰囲気が停滞することもある。今回は「教室をリンクすることで,児童が自分の作品を再評価することを促すことになり,授業を活性化することができる」という仮説のもと,授業を計画実施した。児童は,「相手がどんな顔をしてみているかなとか,どんな風にきいているのかなとか考えながら,コンピュータの前でしゃべっているとすごく楽しく話ができるからよかった」「自分の鑑賞文が,作者と同じ気持ちだったり,すこし違ったりしていたから」「自分が考えていた意見(意図)とは違ったことを言ってくれたので楽しかった」「よその学校の人のつくった俳句がわかって,解説とかができて楽しかった」「他の学校の人と勉強ができたからおもしろかった」などの肯定的な感想を持っていた。
ワンポイントアドバイス
 手軽にテレビ会議を行うことができるCU-SeeMeだが,そこでやりとりされるデータがネットワークにかける負荷は比較的大きい。インターネット上のトラフィック量が少ない午前中ならスムーズに交信することが可能だが,平日の昼前から午後にかけての時間帯,しかも相手がネットワーク的に遠距離にあるような場合の利用はほぼ絶望的といってもよい。ネットワークが混む時間帯は,曜日や時刻によってだいたいの予想が立つので,テレビ会議システムを活用するした授業を計画する場合は,事前に調査しておくことが必要である。CU-SeeMeの設定については,インターネット上に様々な情報が公開されているが,今回は,http://ando.ecc.u-tokyo.ac.jp/index-j.html/を参考にした

参考文献

深田省三・玉井基宏・染岡慎一 編著(印刷中)「教室がインターネットにつながる日−インターネット利用教育の理論と実践−」(北大路出版)
玉井基宏・染岡慎一・杉浦 透・山崎綾子(1997)「インターネットの教育利用に関する研究7−小学校教室リンクによる俳句の共同学習の試み−」(教育工学関連学協会連合第5回大会講演論文集)
広島市教育委員会「広島市立小学校国語科指導計画(試案)」(広島市教育委員会)
「国語学習指導書 6年上 創造」(光村図書)
利用したURLなど
http://next1.yasuda-u.ac.jp/haiku97/
http://ando.ecc.u-tokyo.ac.jp/index-j.html/

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