ぼ く ら は エ コ 探 検 隊
---環境教育における総合的な学習---

小学校第6学年・総合
鳴門市島田小学校 上田 優

インターネット利用の意図
 児童が環境について主体的に学習を進めていくためには,ひとつの教科やひとつの領域の学習だけで実現することは難しい。また,地域学習から地球規模まで含まれるような環境問題においてはなおさらインターネットを活用することが不可欠である。そこで,インターネットを活用して,各地域の取り組みや課題を適切にとらえ,自分達の地域の現状を発信することができるようにする。

1 総合的な学習の発想を生かした学習指導
 児童にとって身近な環境について主体的に学習を進めようとすると,ひとつの教科だけの学習では困難である。また,6年生の学習内容を見ると,社会科にも,理科にも,その他の学習にも環境についての内容を含んでいる。そこで,教科・領域等の連携や統合を図って,時間を生み出し,その時間を使って総合的な学習を進めることとした。
 総合的な学習ではテーマを決め,関連し合った学習を結びつけ,お互いの学習が補充し合えるような単元の構成する。また,関連のある行事や常時活動も含めて構成し,自然体験や社会体験・生活体験を重視した学習を進めることにした。そうすることにより,意欲的な学習と活動的な児童の育成がはかれると考えた。
2 環境教育における総合的な学習
図1 海岸清掃前
 6月に地域の人と行った海岸清掃から環境教育は始まった。海岸清掃をしながら「どうしてこんなにゴミが流れ着くのか。」「この狭い海岸にこれだけのゴミがあるのなら,地球上には・・・・。」と,子どもたちは考えた。「このゴミを少しでも少なくしたい。」「ぼくたちで少しでも何とかしたい。」という児童の願いを大切にして環境への取り組みが始まった。まず,児童一人一人の興味や関心に合わせて,環境問題のテーマをきめた。その内容は,海洋汚染から酸性雨・地球の温暖化まで多岐に渡っており,インターネットや電子メールを通して幅広く調べなければならない内容であった。

 そこで,児童一人一人の課題を解決するために,教科・領域の枠を超えた学習と通信ネットワークを活用した取り組みをすることにした。

(1) 総合的な学習のテーマ
「島のよさを発信しよう」
(2) テーマについて
 環境教育は一人一人が環境問題に関心をもち,環境に対する人間の責任と役割を理解し,環境保全に参加する態度及び環境問題解決のための能力を育成することにある。その中で人間と環境のかかわりについての関心と理解を深めるための自然体験や生活経験などを積み重ね,生活経験の中から問題を見つけ,環境保全に創造的にはたらきかける主体的な能力を育成することである。また,地球規模で物事を考えていくときに,身近な環境が地球環境とつながっていることを認識しなければならない。また,環境を破壊してダムを造るよりも,ダムを造らなくてすむような省エネルギー対策を通して,電気の無駄使いが環境を破壊していることも気づかせるようにしたい。
 そこで,理科や社会科を中心として,社会体験や自然体験を重視した環境教育における総合的な学習を進め,郷土のよさを発見し,それを受け継いでいける児童と,よさを発信できる児童の育成を目指して取り組むことにした。
(3) 授業の全体構想

(4) 単元月配当表

(5) 各教科,道徳・特別活動でのねらいと実践

環境問題には地球の温暖化や海洋汚染など,幅広く,たくさんあることを知り,児童一人一人が関心や興味を示した内容をテーマにして学習を進めた。
@社会科
ア 21世紀の平和な地球をめざして(教育出版)
地球環境を守るために,自分たちは何ができるかを考え,環境問題に取り組む国際連合のはたらきについて調べる。
・熱帯雨林の減少 ・酸性雨 ・土地の砂漠化 ・オゾン層の破壊・地球の温暖化・海や大気の汚染
こねっと・ワールド環境のページ(http://www.wnn.or.jp/wnn-s/)
A国語科
ア 人類はほろびるか(光村図書)
地球そのものがだめになれば人類はほろびるだろうか。人類が亡びるかどうかは,人間が,動物から生きるための条件を学び,環境を守り続けようと決意するかどうかにかかっていることを読みとることができる。
(ア)世界中では,どのような取り組みをしているか,こねっと・環境プロゼクトのぺージ(http://www.wnn.or.jp/wnn-s/)で調べよう。
(イ)海岸清掃後,環境についての意見文を書こう。
イ 守る,みんなの尾瀬を
海洋汚染,酸性雨,オゾン層破壊,地球温暖化など,まさに人類は危機に直面している。しかし,この問題を真剣に取り組み行動した人がいることを知る。
(ア)尾瀬の環境や徳島県三好郡池田町の黒沢湿原や尾瀬のホームページ(http://www.ask.or.jp/`erminea/kids/index.cgi)を調べよう。
B 理 科
ア 水溶液の性質とはたらき(東京書籍)
空気中には二酸化炭素が含まれている。そのため,雨の粒は弱い酸性を示している。しかし,硫酸や硝酸がもとになった汚染物質を含んだ雨は,さらに酸性が強くなり,これを酸性雨といっている。これが森林や河川,湖沼の生態系に変化をあたえているこどがわかる。
(ア)酸性雨の調査をしよう
11月にこねっと・プラン参加校が酸性雨の調査を行った。調査した結果は,pH5であった。この結果と鳴門教育大学環境ホームページの中の徳島県の酸性雨(http://www.naruto-u.ac.jp/kankyou/kankyou.html)と比較した。児童は自分たちが調べた結果とほぼ同じであったために満足したようであった。
イ 人とかんきょう
図2 水質調査中
動物が生きていくためには,食べ物や水および空気などがなくてはならない。そこで,人は,動物,植物および周囲の環境と相互に関係しながら生きていることを,食べ物,水および空気などとのかかわりを通して気づかせるようにする。

(ア)島田島のメダカを調べよう。島田島ではまだたくさんのメダカが生息している。このメダカはどこで卵を生み,どのように生活しているのかを調べ,いつまでもメダカがすむことのできる環境はどうなければならないか考えるために,デジタルカメラを使って生息の様子を記録している。島田小学校(http://www4.justnet.ne.jp/`shimada3/welcome.htm)

(イ)水質調査をしよう岡山県の小学校から環境についてメールが届いた。それは瀬戸内海の水質調査をしてほしい ということであった。そこで,図2のように水質調査に行った。調査方法は棒の先にラップをした新聞紙ををつけ,それを水中に沈めていき,文字が読めなくなる距離を測定した。調査結果から,子どもたちは自分たちの海が以外と美しいことを認識したようである。

C 家庭科
ア 夏の暮らし
(ア)住みよい暮らしとエネルギー
環境教育ソフト(未知との選択)を使ってゲームをしながら環境を守るための学習を進めた。みそ汁を川に流すと何日ぐらい魚が住めないか。また,テレビや電灯を1時間つけっぱなしでいるとどれくらいの石油が必要なかなどシュミレーションし,省エネの必要性を体験することができた。
イ 住みよい地域の環境を考えよう
図3 交流学習中
(ア)地域の環境を調べよう。11月にはテレビ会議システム(Phoenix)を使って福岡県の小学校と交流学習を行った。その内容は,学校の様子の紹介をしたり,地域や伝統工芸品の紹介・今取り組んでいる環境問題への取り組みについて紹介した。
D 道 徳
ア 砂漠を緑に(学習研究社資料)
 国をこえ,マングローブの林の絶滅をなんとかしたいという気持ちに支えられ,障害にもめげず,復元しようとする。そこで,人間の生活と自然の調和とは何かに目を向けて,考えさせたい。
「海の森」マングローブ(http://www.wnn.or.jp/wnn-s/)
イ ウミガメのくる浜(徳島県道徳資料)
 自然環境を大切にし,人が自然とともに生きることは,科学の発達した今日の課題である。自然に目を向け,生き物がよりよい自然の中で生きられるように自分たちの力で守っていこうとする態度を養いたい。
 日和佐町のホームページ(http://www.nmt.co.jp/`hiwasa/)を見て,1997年はウミガメの上陸が減っていることや各年の上陸数・世界中でどの地域にウミガメが上陸するかなどを調べ,大切に守っていかなければならないことを話し合った。
E 総合的な学習を支える他の活動
ア 俳句つくり
 四季のすばらしさや美しさを感じ取ってほしいと,全校で俳句をつくっている。俳句をつくるためには自然に対してするどい感覚をもっていなければならない。五感を通して感じたことや思ったことを自分なりに表現できる能力と他に対してよりよく伝えていこうとする力を養わなければならないと考えている。
イ 清掃登校
 第2木曜日に清掃登校を行っている。児童は家から袋を持ち,学校に着くまでの間,空き缶をひろったり,ごみを集めたりしながら登校する。
ウ 学校放送番組の利用
 「しらべてサイエンス」や「たった一つの地球」などの学校放送番組も効果的に使っている。これらは豊富な取材と豊かな映像で環境についての問題を指摘してくれる。番組放送後は,NHKのホームページ(http://www.nhk.or.jp/sch/)へアクセスして,他学校の児童がどんな感想をもっているかを知り,意欲や態度を高めた。
エ 美しい島田島を守るための海岸清掃
 学校・保護者・地域住民がいっしょになって海岸清掃を行った。地域の人とともに美しい島田島を守るために取り組んだ。また,海岸清掃を通して,今どんなことが環境を守るために必要なのかを島民全員で考えるよい機会となった。

3 実践を終えて

 環境教育を通して,学習指導や学校行事の中で地域のよさを生かし,自然体験や生活体験を通して自分の課題を追求し,自ら表現できる児童の育成を目指して取り組んできた。また,総合的な学習という手法を用いた環境教育にインターネットなどの通信ネットワークの可能性についても実践を進めてきた。
 環境教育における総合的な学習は,一人一人の興味や関心を高め,自ら進んで環境問題に取り組むことができるようになってきた。児童はインターネットを通して,ごく身近な環境が世界につながっていることや,人まかせでは環境がよくならないことがわかってきたようである。人類一人一人が環境問題を認識をしなければならないことや,環境を守ることは自分を守ることであり,地球を守ることでもあることも学んだようである。そして,それは地球上すべての生き物を愛することにつながることもわかったようである。
 総合的な学習は6月から翌年の2月まで続く。そのため,児童の課題意識を持続させる必要がある。その点,鳴門教育大学の全国の環境における実践校やこねっと・環境プロゼクト(http://www.naruto-u.ac.jp/kankyou/school/school.html)やテレビ会議システムの活用は他の学校の取り組みや活動の様子など知ることができ,よい励みとなった。
 学習の中では,少人数ゆえに出される意見や考え方にも多様性は少ない。そのため他の学校との交流学習やテレビ会議システムを使った授業・インターネットや電子メールによる多様な意見の収集など,積極的な活用がいっそう望まれるところである。
ワンポイント・アドバイス
 電子メール・テレビ会議システムを使った交流授業を行う場合,活発な討議やメール交換がいつまでも続くためには,交流相手のことをあらかじめホームページや地図帳でよく調べておくことが大切である。それこそ相手に聞けばよいと考えるが,子どもは突然の質問に対して,よく知っていることでも適切に表現する事ができない。そのため,相手のことをよく知ったうえで思いやりのある質問をすることが大切である。 
 また,質問にも適切に答えることのできる表現力も育成しなければならない。
 さらに,テレビ会議システムでは動画やコンピュータ・グラフィック(表や絵・写真)も表示できるので,わかりやすい内容で精選された画面にすることが大切である。カメラ映像だけでは印象に残ることは少ない。

参考文献

上田 優『ネットワークを活用した総合的な学習』,全日本教育工学研究協議会研究発表論文集,1997年,11月
上田 優『子どもたちが意欲的に活用する通信ネットワーク』,NEW教育とコンピュータ,1997年,9月
利用したURLなど
鳴門市島田小学校(http://www4.justnet.ne.jp/`shimada3/welcome.htm)
こねっと・ワールド(http://www.wnn.or.jp/wnn-s/)
尾瀬・林間学校(http://www.ask.or.jp/`erminea/kids/index.cgi)
鳴門教育大学の環境(http://www.naruto-u.ac.jp/kankyou/kankyou.html)
徳島県阿南市日和佐町(http://www.nmt.co.jp/`hiwasa/)
NHKの学校放送番組(http://www.nhk.or.jp/sch/)
鳴門教育大学全国の環境教育実践校 (http://www.naruto-u.ac.jp/kankyou/school/school.html)

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