修学旅行にみんなで行こう!
---HTMLを利用した修学旅行案内ページ---
小学校第6学年・特別活動
越谷市立南越谷小学校 岩野 節男

インターネット利用の意図
 インターネットのよさは,不特定多数の人に向けて情報を発信できることと,不特定多数の方からの情報を受信できることにある。発信された情報は,保護者の方が学校を外部から垣間見ることを可能にし,受信された情報は,実践を共有化させ,進化させるのに役立った。本校では,修学旅行の事前説明会を保護者向けに設定していない。そこで,HTML言語を用いて修学旅行案内を制作し,児童の興味関心を高め計画を立てる際の手助けとし,同時に,保護者への啓蒙を図る手段とした。

1 HTMLを利用した修学旅行案内ページ
(1) 実践目的および経過
 本校では修学旅行の説明会を,保護者向けに設定していない。つまり保護者にしてみれば,我が子がどんな所に修学旅行に行くのか,知る機会がないのである。たまたま学校に訪れた際に目にする,壁に貼ってある案内情報があるぐらいである。修学旅行といえば,小学校生活6年間を記念する大切な学校行事である。そこで,HTML言語を用いて,修学旅行案内を制作することを試みた。確かにパソコンを保有する家庭に限った情報発信ではある。しかし,今後訪れる情報インフラを考えると,このような情報発信,情報受信の形態も必要になってくると考える。
 また,児童に対しては,修学旅行に対する興味関心を高揚させ,ある程度の見学の計画を立てたりする目安にもなる。さらに本実践のよさは,コンピュータを教えるためのコンピュータ教育に陥ることなく,修学旅行を案内するうちにコンピュータ教育ができる点にある。インターネットの利用は,今後ますます必要となってくると思われる。ブラウザの立ち上げから操作までを,小学校の段階から体験しておくことも有効であると考える。
(2) 利用場面
 大きく分けて,保護者が利用する場面と児童が利用する場面の二つになる。保護者の場合は,児童が持ち帰ったフロッピーを,自宅のパソコンで見るか,会社等でインターネットに接続し,岩野が開設したホームページ上で見るかである。
 児童については,保護者とともに自宅で見るのはもちろんのこと,特別活動の時間を利用し,修学旅行事前学習の時間で見る。あるいは,廊下に1台〜数台のパソコンを並べるか,点在させ,休み時間等に自由に見るかである。いずれにしろ,親子が共通の話題を得ることができ,触れ合いも多くなるし,対話も広がる。本実践を通して,親子関係がさらによくなることもねらいの一つである。
2 自作ソフト「修学旅行にみんなで行こう!」について
(1) 動作環境
@使用機種 ブラウザが動作すればよい。ただし,ブラウザは使用しているタグの関係からインターネット・エクスプローラーが望ましい。
A稼働環境 ブラウザを立ち上げて,フロッピーを入れる。annai.htmを読み込むと,トップページが立ち上がる。
(2) 6大利点と制作意図
 従来,模造紙にマジックで文字を書き,写真を貼り付けた修学旅行案内がほとんどであった。しかし,本ソフト「修学旅行にみんなで行こう!」のようにHTML言語で記述した内容を,また,デジカメで撮影した画像をブラウザで通して見ることにより,以下のような利点が多く生まれる。
@すべての児童がパソコンに触れ,慣れ,親しむ機会が増加する。しかも,強制的に操作させるのではない。誰もが興味や関心を抱く修学旅行案内をページを見ることで,おのずとコンピュータに触れ,慣れ,親しむのである。
Aフロッピー1枚に納まるように制作してあるので,児童が自宅に持ち帰り,保護者に見せることが可能である。これは,修学旅行事前指導を行っていない学校からは,大変価値ある情報発信となる。言い換えれば,家庭にとっては,大変価値ある情報受信となる。
B資源の無駄づかいがなくなる。(模造紙,マジック,フィルム,写真,のり等)ペーパーレスは,学校現場の現状では不可能に近い。だからこそ,実践で示すことのできる数少ない機会となる。
C収納方法が簡単,収納スペースはいらないに等しい。フロッピー1枚である。持ち運びも楽であるし,単価も安い。
Dほんの少し修正を加えれば,来年度も使える。もちろん,撮り直すべき写真もあるだろう。しかし,紙ベースで制作していた時のように,毎年毎年,一から作り直していた時とは,制作時間がまるで違う。
E他校との情報交換に使うことができる。従来,行き先についての他校との情報交換はないに等しい。異動してきた職員の口コミがせいぜいであった。フロッピー1枚でできる情報交換は画期的である。
(3) ソフトの実際
 「修学旅行にみんなで行こう!」の実際の画面を下図1〜6に示す。まず図1は,いわゆるトップページである。画面が開くと同時にピクニックの軽快な音楽とアニメーションが動作する。フロッピー版では,写真に加工は施していないが,インターネット上では,顔が識別できないように加工を施した。図2は,「行きと帰りの部屋」,もちろん背景に流れる音楽も変わる。

図1 トップページ

図2 行きと帰りの部屋
 図3は,「登呂遺跡の部屋」である。このページにある登呂遺跡博物館の画像から登呂遺跡博物館のホームページにリンクしている。制作当初,考えもしなかったことだが,私が所属するメーリングリストの中で,本ソフトについての意見を求めたところ,「リンクしてみたら,おもしろいのではないか。」というご意見を頂戴した。これもまた,インターネットの魅力の一つである。

図3 登呂遺跡の部屋

図4 羽衣伝説の部屋
 図4の「羽衣伝説の部屋」の中には,楽しいクイズが隠されている。図5の「ホテルの部屋」と図6の「ナイショの部屋」は,笑いを誘うようにまとめてみた。あまりにもガチガチに真面目に作るだけでは能がない。多少なりともユーモアがあった方が親子で一緒に楽しめる。

図5 ホテルの部屋

図6 ナイショの部屋
 図7の「日程解説の部屋」では,我が子がいつ頃,どこで,何をしているのかをわかるようにまとめた。また,図8の「海洋科学,人体科学,自然史博物館の部屋」では,画像を豊富に使い,どこを重点的に見学したいのか,計画を立てられるようにしてある。

図7 日程解説の部屋

図8 海洋科学,人体科学,自然史博物館の部屋
(4) 岩野節男のホームページURL
http://www2b.biglobe.ne.jp/~iwano
(5) 保護者の方からいただいたご意見,ご感想(原文のまま)
@写真がやや小さく,暗く,見にくい感じがしました。ビジュアルで見られる利点を最大限に活用すれば,より楽しくわかりやすいと思います。文章は注釈程度でも十分にわかると思います。また,こういうものを作られたことに感心しました。いろいろな行事もこういう形で見られれば,理解しやすいと強く感じました。
A発想がおもしろい。お堅いだけがとりえの日本教育委員会の管理下にある公立小学校としては,大変ユニークな制作ですね(笑い)。出来具合については,当初の(見る前の)期待が大きすぎたので,「まあまあ」と少しからい点になりましたが,旅行内容や場所についてのinformation がスッキリとおさまっていると思います。今後の内容充実に期待します。
B大変子供にも親しみやすい内容で,よいと思う。3年生の弟も一緒に見れ,PCに親しむことができた。PCが近い将来,電話のようなコミニュケーション手段となるだろうと考えられる今,このような教育は非常に有意義と考える。ぜひ,今後も続けていただきたいと思う。よろしくお願いします。
C子供と一緒に,修学旅行に行っている気持ちになれるような編集になっていて,楽しかった。
D帰宅しましたら,子供がFDを持って待っておりました。どうもHPの作成ご苦労様です。子供と一緒に見させていただきました。欲を言いますと,こうしたHPがクラス別に開設され,インタラクティブにやり取りできれば,学校と家庭の間で,もっとコミニュケーションが図れるのかもしれません。そういう意味では,先生の御努力に加え,私供も作れるHPがあればもっと楽しいのかもしれませんね。後,5ヶ月となりましたが今後ともよろしくお願い致します。
E子供にとって修学旅行への期待感を盛り上げる絶好の材料になりました。単なるペーパーだけでないため,親しみやすさやわかりやすさが抜群に向上。子供は眼を輝かせてパソコン画面に見入っていました。
Fパソコンで修学旅行案内が見られるとは,思いませんでした。先生の御努力に感謝致します。ただ,私共パソコンに不慣れなため子供と起動がなかなか出来ず起動した時は変感動しました。内容も大変よく,写真もよく写って分かりましたが,全体の地図があると一目で,いつ,どこにいるのか分かるのでは,と思いました。
G行く場所の写真が見られてとてもよいと思いました。もう少しくわしく知りたいと思うところがありました。今後もぜひ,続けていただけたらと思います。お忙しいところありがとうございました。
3 実践を終えて
 インターネットを利用した実践というと,どうしても回線が接続されていなければ,という固定観念が働く。当然といえば当然だが,回線が接続されていなくても,何かできるのではないかと考えたのが本実践であった。その裏には,ブラウザの持つ表示能力の高さとHTML言語の扱いやすさ,リンク機能の素晴らしさの恩恵がある。これらは,さらに進化していくようである。今後も様々な活用方法を模索していきたい。
 さて,インターネット上で本実践を流した折に,メーリングリストでご意見を頂戴したのと同様,研究会等でも貴重なご意見をいただいた。例えば,修学旅行から帰ってきて,修学旅行の思い出を綴り,ページの中に盛り込むことで思い出アルバムに変身するとか,公民館等にインターネット接続環境が整っていれば,パソコンの無い家庭でも見ることが可能ではないか,さらにコンピュータ室を開放し,自由に見ることができる機会をつくるのもよいなど。いずれも大変参考になることばかりであった。今後も改善,工夫を加え,よりよいものをめざして進化させていきたい。
これからの学校教育は,開かれていかなければならないと叫ばれて久しい。これは学校側のみならず,家庭側にとっても当然の欲求である。本実践における保護者の感想を読んでみても,それがよくわかる。本実践が学校と家庭を結ぶ足掛かりになれば,うれしく思う。
ワンポイント・アドバイス
ホームページを作成するには,タグに関する知識が必要だ。私自身も,今だにタグをコツコツと打ち込む方法で作成している。というよりも,私がホームページを開設した当時はホームページ作成を支援するソフトもなく,タグで作成するしか他に方法もなかったのである。ところが今では,ホームページ作成ソフトも豊富に存在し,手軽に作れるようになっている。しかし,タグに関する知識は,あったに越したことはない。やはり,ちょっとした小回りがきくものである。ここでは,そんな小回りのきく優れ物ソフトを紹介してみたい。

(1) 勝本 守次さんによる背景色等の作成ソフト「XColor」
背景や文字の色を変更する時に利用するソフト。操作が簡単で誰にでもできる。しかも,フリーソフトである。(97年10月現在)
(2) 古溝 剛さんによるアニメーションジフ作成ソフト「Giam.exe ver.1.02」
誰でも簡単にアニメーションジフが作成可能。操作性に優れ,初心者にも扱いやすい。これも,フリーソフトである。(97年10月現在)
インターネットでは下記のホームページで最新版を公開している。
http://village.infoweb.or.jp/~furumizo/
※使わせていただいた方は,くれぐれも御礼のメールを忘れずに。


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