インターネットを用いた環境教育

中学校第3学年・選択理科
前橋市立第四中学校 佐久間 由利子・折田 一人

インターネット利用の意図
 環境などの大きなテーマを扱う場合,インターネットは情報の収集・発信・交流のための非常に強力な武器となる。インターネットを道具として扱うに当たり,特に技術科との関連を十分に図っていく。インターネットの利用にかかわる部分は技術科で学習し,選択理科では,あくまでデータの収集や観察・実験・結果のまとめなどを中心にした学習を行う。また,海外にメールを送ることに関しては,英語科とも連携を図る必要があるが,こうした学習活動を行うために,それぞれの教科担当がよく話し合い,計画的に学習を進めた。

1 インターネットを活用した環境問題の探求
(1) ねらい (2) コースの概要
各班の課題 (ホームページは全班が作成している。)
それぞれの興味・関心から8つのトピックに分かれた。各班の課題は次の通りである。
課    題 課題解決のための方法
1班 地球温暖化 日本・3地点の月別平均気温を気象台で調べる
2班 森林破壊 森林破壊による新たなウィルスの出現を調べる
3班 学校区の雑草調べ 学校区の雑草の分布を,ホームページに載せる
4班 ゴミ問題・ペットボトル ゴミとしてのペットボトルの抱える問題を調べる
5班 オゾン層 オゾン層の破壊や,そのしくみ,影響等を調べる
6班 生ゴミを減らそう 生ゴミ処理の現状や問題点を調べる
7班 チェルノブイリ原発事故 放射能汚染の現状とエネルギー問題を考える
8班 水を大切にしよう 水質検査,自家製石鹸作りの紹介をする

(3) 指導目標
選 択 理 科 の 指 導 目 標 本 コ ー ス の 指 導 目 標

@自分の興味関心に基づいて意欲的に課題を決めることができる

A資料調べや予備実験を意欲的に行うことができる

B自分から意欲的に実験・観察・調査に取り組むことができる

C結果をもとに意欲的に考察することができる

・環境問題で自分の興味あることが見つけられる

・インターネットその他を通じ資料集めや実験ができる

・意欲的に取り組むことができる

・調査結果をもとに,自分たちにできる環境保護について考察できる

@問題点を把握し,課題を整理することができる

A探求方法や,見通しを持って計画を立てられる

B事実と推論を区別して考察できる

・インターネットを用いてどうアプローチしていくかを考えることができる

・計画的に効率よく行動し調査結果から結論を導くことができる

@研究課題の計画書を作成することができる

A適切な実験や調査を実施できる

B結果や,考察を自分のものとしてまとめ発表できる

・課題解決のために,何をどう調査実験するのかを決められる

・結果から自分たちなりの結論を得て,インターネットを使って発表することができる

(4) 利用環境
@ソフトウェア
Netscape Navigator Gold 3.0(英語版)
インターネットのWWWを見るためのブラウザにホームページを作成するための機能を付加したもので,HTMLを意識せずに簡単な操作でホームページを制作することができる。また,英語版は教育機関では登録することにより無料で利用することができる。
Aハードウェア
◆コンピュータ本体(サーバー関係)
・WWWサーバー PC/AT互換機(FreeBSD + Apache)
・PROXYサーバー PC/AT互換機(FreeBSD + Squid)
・MAIL,DNSサーバー NEC PC-9821Xn(PANIX + sendmail)
・ファイル・プリンタサーバー 富士通 FMS-2500(Windows NT Server)
・ライブカメラサーバー AXIS Neteye 200, Machitosh Iici + QCAM
◆コンピュータ本体(コンピュータ室生徒用クライアント 20台)
・富士通 FM/V-575(RAM:16MB,HDD:850MB)
B設置場所
コンピュータ室(26台 うちサーバー5台),国際交流室(2台),職員室(4台),普通教室(10台)
2 指導計画 (全15時間)
指導計画(15/15) 留  意  点
(1)アンケート ・環境問題についての関心度等をアンケートで調べ,自分の課題を決める一助とする。
(2)オリエンテーション
★インターネットの利用
・課題のねらい,心構え,進め方を説明する。
(3)課題の学習計画 ・課題解決のための計画書(学校外の人々の援助も含む)を作成させて,研究の見通しを立てさせる。
(4)課題の追求
★インターネットの利用
・インターネットを使う・実際に実験をする・学校外の機関に話を聞きに行く,等の資料収集や調査が目的にあっているかどうか等について個に応じた支援をする。
(5)まとめと発表
★インターネットの利用
・自分たちの課題をインターネット上でどう発表するかを考えさせる。ホームページ作成については,技術科の教師との連携により,できるだけ支援していく。
(6)評価 ・ホームページの作り方や作成意欲などで評価を行う。
・学習の過程を大切に,探求方法についての学習が深まったか,自己評価を行う。
・グループ内での評価も行い,他の班から見た自分たちの班の研究成果の評価も参考にさせる。
3 利用場面
(1) ねらい
・自分達が学習していることを,問題意識を持ってわかりやすく発表できる。
・インターネットを用いて,次の課題に向けて発展的に研究を進めることができる。
(2) 準備
これまでの経過報告資料,ホームページ作成やメール送信のための,準備資料
(3) 展開
時間 生徒の活動 教師の支援
3 分 ・ 本時の活動のねらいの確認する
・ 各班の課題の確認する
12分 ・自分達の班の活動内容を手短かにわかりやすく説明する

・本時における活動計画を説明する

・ 自分の班だけでなく,他の班の活動内容を興味を持って聞く事の大切さを知らせる
・ 本時の活動計画が適切であるかどうか確認する
34分 ・インターネットを使った活動をする(別紙活動計画参照) ・ 適切な活動が行われるよう支援する
1 分 ・まとめと,後かたずけをする ・ 活動のまとめをする

(4)実践における留意点
 インターネットを利用した課題研究は,授業の形態や方法などに多くの工夫を取り入れている。そこで特に配慮しているのは以下の点である。
<班別の課題研究を進める上での留意点>
・テーマの選定や学習計画の作成など,学習の準備段階を重視し,具体的な作業計画を立てさせるとともに,毎時間目標を持って作業させるようにする。
・自分たちならではのオリジナルの情報の発信を行えるように,観察や取材活動など,直接的な情報収集を取り入れさせる。
<ホームページ作成上の留意点>
・見た目にとらわれずに,情報の内容(コンテンツ)を充実させるために,ホームページ作成の準備段階である,文章の作成や画像データの作成などに時間をかける。
・他人の作成したデータを許可なく転載したり,本などの資料の写真を画像データとして利用するなど行為は著作権を侵害することを事前に指導しておく。
・ホームページに自分たちの住所など,プライバシーに関わる情報を載せないように注意する。
・ホームページの作成は,外部への情報発信の手段であり,目的ではないことを徹底する。
<他校の生徒や学校外の人たちとの交流の留意点>
・電子メールを出す際のルールやマナーについて事前に指導しておく。
・ただ質問したり,自分の意見を書くだけでなく,相手との交流に留意させる。
・テーマを持って継続的に交流できるように,相手校の担当教師とも緊密に連絡をとりあい,適切に援助する。

図1 生徒が製作したホームページの例
(5) 評価
・環境学習においてインターネットが充分に活用されているか。
・インターネットを使うことにより生徒たちが生き生きと自主的に活動できていたか
(6) 班別の活動計画の例
4班
  テーマ 「ゴミ問題・ペットボトルについて考えよう」
  メンバー A・S   Y・K T・S Y・K
学 習 計 画
@ペットボトル処理方法についてのアンケートを行う。(四中,二中,桃ノ木小,高校生,インターネット上)
Aアンケートの集約,グラフ化を行う。
B群馬大学工学部生物化学研究所の三友教授にプラスチックゴミの問題点と最新の生分解性プラスチック研究情報についてのお話を聞く。
Cペットボトルを細かく切って,燃えるときの様子を実験で観察する。
D現在,ペットボトルがゴミとしてどんな問題点を持つかに付いて,本その他で調べる。
E地方自治体のペットボトルに対する処理方法をインターネットを通じて情報収集する。
F学校の生徒だけでなく,インターネット上にこれらの情報を公開して,自分たちの意見を提案する。
Gカナダやイギリスなど電子メールを使って,外国のペットボトル処理の現状を調べる。
生徒の実態
・この班は,好奇心旺盛で自分たちで課題を見つけ,自主的に解決していこうと言う意欲満々であり,実際にその力を備えている。また,英語に堪能な生徒を擁しているため海外との意見交換にも意欲的に取り組もうとする。
学習の系統 ・この学習は3年2分野の「地球と人間(環境保全)」と関連する内容である。


図2 授業中の様子
4 実践を終えて
 生徒自身が課題を設定して年間を通して1つのテーマをインターネットを活用しながら解決していく学習は初めてであったが,生徒たちは最後まで興味を持って積極的に活動を行うことができた。例えば,情報収集の過程では,どうしても地域の情報収集や取材のため校外に出る必要が生じたが,生徒たちは休日にデジタルカメラやメモ帳をもって観察に出かけたり,他の生徒にアンケートをするなど自主的・自発的な活動が多く見られた。
 しかし,班によっては,結局予定通りできずに,中途半端になってしまった班もあり,班員の構成方法や中間でのチェック方法,テーマの選定のアドバイスなどが,今後の課題として残った。

ワンポイント・アドバイス
 コンピュータやインターネットは今や完全に個人の情報活用の道具となっている。それを既存のカリキュラムや一斉指導の指導形態の中に無理に導入して評価を行っても,さしたる効果は見られないであろう。しかし,子供たちが自ら課題を解決していく学習活動の中に,その道具としてコンピュータやインターネットを導入すれば非常に強力な手段となるのである。そのためには,コンピュータやインターネットを授業に取り入れるという視点ではなく,それよりも前の段階として,子供たちに課題解決の能力をつけさせるための授業の工夫から考え,その手段としてインターネットなどを位置づける必要があると思う。
 また,インターネットを利用することで他校とのコラボレーションや,学校外の専門家に指導を受けるなど新しい学習も可能となる。今後,ますます多くの学校がインターネットに接続され,共同で様々なプロジェクトが実施されることを期待したい。
使用したURL
・本校のホームページ
http://www.menet.ne.jp/daiyon-jhs

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