インターネットを使った発信型英語学習

高等学校国際コース2,3学年・英語
麗澤高等学校 大森 直美

インターネット利用の意図
 本校にコース制が導入されて6 年になるが,設置されたコースの中に,国際コースがある。国際コースでは多くのレポート課題を課しているが,その中でインターネットを利用している。教室でのインターネットの利用が可能になり,レポート作成の作業を進めながらその画面を前にして調べものができるようになった。世界とつながった画面を前に。
 英語を学んだところで,なかなか活用の機会がないとなると非常に残念なことだが,世界と繋がったインターネットで外国の情報を得,また情報発信をすることもできる環境がある。大いに活用し,国際社会を身近に感じて欲しい。

1 コンピュータ教室の設置と利用
 本校では,平成8 年度に新校舎を増築し,その際校舎全体のコンピュータ・ネットワーク整備を行った。2つのコンピュータ教室(コンピュータA教室41台,コンピュータB教室37台のクライアント機)だけでなく,校内の全教室,教職員の部屋からも,専用線接続でのインターネット利用が可能になっている。
 1年生で情報基礎(1単位)でコンピュータ・ネットワークの基本的な操作とマナーを学び,情報以外の教科・科目でコンピュータを日常の学習の道具として活用していくように進めている。現在の利用状況としては,ワープロや電子メールを利用したレポートの提出,市販CD-ROMでの学習(英語検定対策など),インターネットの情報検索の利用を研究的にすすめている。
 そのような中で,国際コースの授業では,情報収集と情報発信の両面でインターネットを積極的に活用している。
2 国際コースでのコンピュータの活用
 本校は2年次よりコース制を導入し,文系コース,理数コース,文理コース,国際コースの4つにわかれて学習をする。国際コースは,日本文化を理解した上で異文化を尊重でき将来国際社会に貢献できる生徒を育成すること,「英語での読み書き」「英語で考えること」を目標としている。
 国際コースは英語の単位が2 年次14単位,3 年次15単位であり,ネイティブスピーカーの教師による授業が多く,また2年次の秋には7週間のオーストラリア留学をする。課題として,自由英作文や英語によるレポートを頻繁に書かせる。そのほとんどはワープロを使う。1期生の頃はコンピュータ教室がなく,レポート作成にはノート型のワープロを使用するか手書きだった。もちろん調べものは図書館や図書室。ところが,昨年よりコンピュータ教室が設置され,教室でのインターネットの利用が可能になった。
 現在,コンピュータが有効に活用されている場面がいくつかあるが,その主なものとしてはOCA(2年次3単位),OCB(2年次5単位),OCC(3年次6単位)のネイティブティーチャー(MichaelKerns, Mark Jolliff)による授業である。この授業では,コンピュータB教室を利用している。(図1,2)

図1,2授業風景(Web での検索)
3 国際コースの年間計画
 各種のレポートを作成する際のコンピュータの利用としては,Wordでの文書作成と,Webでの検索などである。授業中はもちろん放課後も使い,かなり熱心に学習活動をしている。
時期 内 容
2 年次
1 学期
・自己紹介:家族,好き/嫌いなもの,趣味,興味,将来の職業などについて
・人の体,個性など,周りの人について紹介
・家や家の周りの様子について話す
・地図上の建物の場所などを説明
・日本について:
日本語の単語の意味を英語で説明・地理,歴史,文学,文化の紹介
★オーストラリアについて知る:
歴史,自然,地理,文化,その他6週間のホームステイに関する準備
2 学期 ・カカドゥー国立公園でのキャンプ生活を経験した後,オーストラリアのゴー
ルドコーストで6 週間のホームステイ
・日本とオーストラリアの生活の違いについてレポート
・オーストラリアでの経験についてのスピーチ
・オーストラリアでの経験についてのエッセイ
3 学期 ・オーストラリアでの経験についてのエッセイ(推敲,完成)
★スピーチ(物語の暗誦)
★リサーチペーパーのトピックを選択
検索の仕方を学び,リサーチを開始
3 年次
1 学期
★3 学期に引き続き,リサーチペーパー作成
・スピーチ
★ニュースのレポート
★ディベート
★時事問題についての議論
★リーディングのテスト
2 学期 ・即興でスピーチ
★電子メールの使い方
★ビジネスレター
・履歴書作成
・模擬入社面接
★リサーチペーパー完成
 上記の授業内容のうち,★のものでは何らかの形でインターネットを利用している。
 その中で主なものの内容をいくつか挙げる。
(1) オーストラリアについて知る
 オーストラリアの歴史,自然,地理,文化などを調べる。その中で,動物について学習する際,Web のページを利用する。まだ検索の仕方は学習していないので,教師が示したページから情報を得る。
(2) 物語の暗誦
 スピーチの練習の1つとして,それぞれ自分で選んだ物語を暗誦する。ボディランゲージなども使い,表現の仕方を学ぶ。その際の題材探しにWeb のページを使うこともある。
(3) ニュースのレポート
 最近のニュースを英語で発表する。新聞のページなどを利用。いくつもの海外の新聞のページから必要な記事を集めることができた。
(4) ディベート,時事問題についての議論
 テーマが与えられ,事前に調査をしてから意見を出し合う。使った主なテーマとしては,沖縄米軍基地,早期英語教育,臓器移植,夫婦別姓,核問題,離婚,週休2日制などである。その事前調査の際に,インターネットを活用した。
(5) ビジネスレター
 新聞や雑誌,企業への投書を書いた。Web のページを使うことにより,筆者に直接メールでコメントをすることができたケースもあった。また,企業宛ての場合は,住所をその企業のページから探せたケースもあった。雑誌の記事に対してその筆者にメールで連絡を取った生徒もいた。手紙だったが,返事が返ってきた。
 また,The Daily Yomiuri の読者からの投書欄に3名の記事が掲載された。掲載されたものについては本校のページに載せてある。
 (http://www.hs.reitaku-u.ac.jp/ENGLISH/5BusinessLetters.htm参照)
(6) リサーチペーパー
 今年で4 期の国際コースの卒業生を出すことになるが, 2 期生より,3年次にはリ サーチペーパーが課題の1つとなっている。日本や世界について英語で紹介する,卒業論文のようなものだ。国際コースの課題の中では,特にこのリサーチペーパー作成に力を注いでいる。2 年次の終わりにそれぞれ生徒自身が興味を持ったテーマを選び,それについて調査を始め,3 年次秋までに仕上げる。自国の,または外国の文化を知り,英語で紹介できるようにするという目的と,2 年次からの国際コースでの言語活動のまとめである。
 世界の歴史,文化,文学,社会などについて調べ,Wordで作成。約7ページを目安 とし,構成,リサーチの仕方を学習する。Introduction, Outline,Body, Footnotes, Bibliographyといった章立て。調査においては書物だけでなく,インターネットの利用もしている。また,完成したリサーチペーパーの中から,優れたものをいくつか本校のWeb のページに載せている(図3,4参照)
生徒の感想
 高校三年生のとき,英語で日本のものを紹介し,論文にするようにと課題が出されました。1年間,その論文に時間が与えられたので,自分の選んだ分野に関して,深い知識と出来るだけ多くの資料が必要となりました。そんな時に,インターネットの活用が非常に有効になりました。
 例えば,僕の選んだトピックは「相撲」だったので,インターネットの検索エンジンに「すもう」と入れます。そして,検索ボタンをクリックすると相撲に関する,日本中あるいは世界中のホームページが一覧になって出てきます。それは,全日本相撲協会から,一般の相撲愛好家までの幅広い資料をのぞくことが出来ます。ページによっては,写真が豊富に使ってあったり,ビデオを見ることができたりと,視覚的にも楽しく調べることができました。そして,各ホームページの最後には,そのページを作った団体あるいは個人へメールが出せるようになっており,質問や意見をやりとりすることも出来ます。
 このように,インターネットはその手軽さ,図書館では決して得ることのできない数々の情報,そして,その道の専門家などと直接質問をやりとりできるという点などで,これからの高校生には有効に使っていってもらいたいと思います。僕は,麗澤高校のコンピューターを使い,自分でも満足のゆくリサーチを書きあげることができました。(平成8年度卒業生)

図3,4 麗澤高校のページより リサーチペーパー

4 Web 活用の利点

 Web だけで調べものをするというわけではない。リサーチペーパーも,テーマによってはあまりインターネットから情報を得ることができず,書物で調べた方が情報が多い事柄もある。だが,Webで情報を得ることができるものについては,書物を使う場合に比べて,次のような利点がある。
・検索が早い。
・新しい情報が得られる(百科事典などでは情報が非常に古くなっているものもある)。
・わざわざ図書館や図書室に行かなくても,その場で次々に調べ物ができる。
・同じトピックについて,いくつもサイトを見て,信頼できるものを利用することができる。項目にもよるが,かなりのサイトから情報を得ることができる。
・そのページに載っているアドレスで,実際のその記事を書いた人とメールでコンタクトが取れる。
5 今後の利用について
 インターネットの利用の主な内容として大きく分けると,情報収集と情報発信に分かれると思われる。どうしても前者を意識しがちだが,情報発信とそれに対する反応で,外とのコミュニケーションに発展できたらなお有意義なものにできるだろう。生徒が書いたレポートなどを国際コースのページに載せているが,多くの人に読んでもらい,他校,他国の人との交流,情報のやり取りなどに広がっていったらいいと思う。
ワンポイントアドバイス
 インターネットというと,Web で好きなアイドルのページを開いたり,新しい音楽を探して聴いたりといった,趣味の範囲での利用に留まっていることが多いように思う。また,E-mailも使われているが,ただ単なるおしゃべりだけで終わっていないだろうか。Webのページにしても,E-mailにしても,有用な情報を得ることができる非常に便利なものである。特に,Webでどのような情報がどれほど手に入れることができるか,気付いていない場合が多いのではないか。検索エンジンといえば日本ではYahoo!JAPAN が有名だが,検索エンジンはそれだけではない。1つの検索エンジンで検索できなくても,他から見つけることができることもある。
 インターネットは,趣味の範囲で終わるものではない。まだまだ意義のある利用ができるということを知り,活用をしていきたい。事実,ただ情報を得るだけで終わらず,生徒の学習成果を海外に発表する機会としても位置づけることができるのだ。今後もさらなる利用価値を求めていきたいものだ。

利用したURL

・本校のページ
麗澤高等学校 (http://www.hs.reitaku-u.ac.jp/)
ビジネスレター(http://www.hs.reitaku-u.ac.jp/ENGLISH/5BusinessLetters.htm)
リサーチペーパー(http://www.hs.reitaku-u.ac.jp/English/5Research.htm)
・オーストラリアの動物
Australian A-Z Animal Archive(http://www.aaa.com.au/A_Z/a.shtml)
・検索エンジン Yahoo!(http://www.yahoo.com/),Excite(http://www.excite.com/)等
・その他,リサーチぺーパー,ディベートなどで使用
Japan, my Japan! (http://lang.nagoya-u.ac.jp/~matsuoka/Japan.html)
National Geographic Society's Map Machine Atlas
(http://www.nationalgeographic.com/ngs/maps/atlas/index.html)
The World Factbook (http://www.odci.gov/) 等
実践者
マイケル・カーンズ KERNS@hs.reitaku-u.ac.jp
マーク・ジョリフ Jolliff@hs.reitaku-u.ac.jp

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