インターネットを道具として活用するために
--- いかに道具として活用するか ---

高等学校第3学年・情報管理
宮崎県立延岡商業高等学校 馬場 隆

インターネット利用の意図
 インターネットやコンピュータを使用することが当然のような時代になってきている。
 授業においても,インターネットやコンピュータを使用を迫られる場面が多くなってきている。そのため,インターネットを使用すること自体が目的となっている場合も少なくない。本来,インターネットやコンピュータは人間の道具として活用されるものであると考える。そこで,インターネットやコンピュータを道具として使う場面を作ることのよって,コンピュータを道具として活用する生徒の育成をはかりたいと考えた。

1 ねらい
 インターネットおよびコンピュータを道具として活用する場面をつくるために,情報を取り扱う流れを以下のように想定して構成する。
(1) 問題の分析
 問題の分析し,問題解決の手順を計画する。
(2) 情報の収集
 今回はインターネットを活用すること前提とするため,サーチエンジンなどのインターネットの機能を活用して情報を多くのデータを収集する。
(3) 情報の取捨選択
 インターネット上の多様なデータの中から生徒自身が必要とするものを選び出し,著作権などの問題を考慮しながら,データのダウンロードをする。
(4) 情報の加工
 選び出したデータを意志決定の材料となるように,表計算などの各種アプリケーションを用いて,有効な情報になるようにデータを整理し,加工する。
(5) 意志決定(生徒自身の判断)
 生徒自身が集めた情報をもとにして推測し,自らの意見を導き出す。
2 指導計画(全20時間)と学習内容
(1) 導入段階(3時間)
 インターネットのWWW にはサーチエンジンのサイトがある。このサーチエンジンの使用例を指導する。サーチエンジンを使用する場合,検索のキーワードが重要であることに注目させる。情報の交換に電子メールを使用するため,電子メールの基本的な使用法についても学習させておく。
(2) 検索指導段階(3時間)
 サーチエンジンによる検索の課題を電子メールで与える。このときの課題は検索を中心として提示し,結果をまとめて電子メールで返信させる。情報の収集が中心の段階であり,情報の取捨選択したり情報の有効性の判断が指導のポイントである。このとき,可能な限りインターネットを使用するが,場合によっては他教科の教科書や副教材も併せて使用することもある。

・課題例1
インターネット上に公開されている企業の「貸借対照表」を調べて,その企業の流動比率を計算せよ。企業名・そのURL・流動比率を答えなさい。
解答例 (株)延岡商業 http://www.nobeoka.co.jp/bs.html 62%
・課題例2
@証券用語「TOPIX 」とは何か調べなさい。また、昨日のTOPIXの終値を調べなさい。
A11月20日の円相場を調べなさい。
・課題例3
@インターネットを使用する上でのエチケット(ネチケット=ネットワークエチケット)にはどのようなものがあるか調べなさい。
Aネチケットに対するあなたの考えを400 文字程度で述べなさい。
(3) 情報の加工指導段階(5 時間)
 インターネットからダウンロードした情報を表計算のアプリケーションソフト(Lotus 1-2-3やExcelなど)でグラフとして加工させる。最初は簡単なグラフを作成させ,段階的に高度なものへ移行していく。生徒へは,データを加工することが目的ではなく,意志決定のための資料作成が目的であるので,そのように加工していくことが重要であることを指導する。このとき,インターネット上のデータが著作権などに保護されているため,情報リテラシーに関する指導も不可欠である。また,アプリケーションソフトで使用できるデータやファイルの形式に変換する方法も体験させ,情報を効率的に扱うように指導していく。生徒の興味や関心・能力などに合わせてアプリケーションソフトの種類を選択させる。そして,マニュアルやヘルプファイルなどで生徒がひとりでアプリケーションソフトの学習ができるように環境を整えておくことが必要である。

・課題例1
平成7年度の国勢調査から年齢階層別の分布グラフを作りなさい。グラフの条件・グラフの種類などは各自判断すること。
・標題は「年齢別構成比」
・使用するアプリケーションは問わない。
・課題例2
日本の人口推計を調べて,過去30年間の日本の総人口の推移をグラフにしなさい。
(4) 意志決定の指導段階(4 時間)
 インターネットから収集され加工された情報から,生徒自身の考えを導き出す段階である。必ずしも生徒全員の結論が同じになるとは限らないため,評価については結論を
 導き出す過程を評価する必要がある。そのため,あらかじめ生徒へは結論を導き出す過程が重要であることを十分説明したうえで,その結論に要した資料も提出させる。指導者は提出された資料を基準を設けて評価していくことが重要である。

・課題例
問題1
現在,少子化が問題になってきているが,平成9年度現在(または平成8年度)の全国の学校(小・中・高等学校および養護学校など)に通う生徒数を,学校種別毎にそれぞれ調べなさい。
単位は千人で小数点以下四捨五入とする。

問題2
過去40年間の全国の高等学校に通う生徒数の推移を調べ,グラフ化しなさい。
グラフの条件 ・期間は40年間
・グラフの種類は各自判断すること。
・標題は「在学者数の推移」
・使用するアプリケーションは問わない。
・グラフをメールに添付して送信すること。
グラフは可能な限り,画像ファイル(GIF)
として同封してメールで送信すること。

問題3
日本の人口推計や問題2のグラフなどを参考にして、2010年の高校生の人口を推定しなさい。
また,あなたの考えを述べなさい。ただし,400字以内とする。

生徒の解答(一部抜粋)
今,子どもの数が年々減り小子化となっているが,高校生の人数もやはり最近は減っているようだ。しかし,昭和39年〜昭和40年頃は,急に高校生の数増えている。昭和40年をピークにまた少しずつ減り,それから後は,だいた同じで徐々に増えていく傾向を見せていたようだ。もしかしたら,また人口がえる時が,回ってくるかもしれない。今は小学生の数もとても少なくなり,2年頃高校生になる子供の数は,平成7年度の国勢調査から調べた人口からよる高校1年生・・・1,185,263人(現在の2・3歳)
高校2年生・・・1,208,065人(現在の3・4歳)
高校3年生・・・1,209,340人(現在の4・5歳)
総数・・・・・・3,602,668人くらいと予想される。
現在の,高校生の推移が,4,547,497人なので,2010年の高校生の予想数と比べて,944,829人も減少することになる。しかし,進路はそれぞれ違うとうので,どうなるのかは分からないが,自分の夢にむかって切磋琢磨してほし
この授業時の指導案は最後に掲載
4 評価とまとめ
 情報の種類に合わせて,様々なアプリケーションソフトを使用させた。これは情報処理科の最終学年であることや,卒業後実社会で働く生徒も半数いることからすべてを教え込むのではなく,マニュアルやヘルプファイルを使用して生徒自らで学習するように考えたからである。その際に気をつけたこととしては,生徒の進捗状況を見ながら,生徒の能力や興味・関心にあった指導を適宜入れるように努力した。この結果,生徒からは「最初は何をどうすればよいのかよくわからなかったが,今はインターネットやパソコンの利用が一番楽しい。」「ほかにも色々調べてみたいので放課後もインターネットを使わせてほしい。」「インターネットの時間が一番楽しい。」などの感想が聞かれるようになり,学習が進むにつれて生徒が積極的に取り組むようになり効果が出てきたのではないかと考えている。
 インターネット上に存在する多種多様な情報を生徒自ら検索および参照させることによって,インターネット上に有効な情報が存在することを体験させることができた。また,情報を取捨選択および加工していく過程において,どのように情報を効率的に処理していくか考える姿勢が身についように思う。情報を合理的に処理し,管理する能力が育ちつつあると考える。
 今後の課題としては二つあげられる。第一に,生徒へ提示した課題は適切であったかということである。生徒へ提示した課題は適切な内容であったか,課題の提示の仕方は適切であったのかどうか等,今後工夫改善していかなければならない。第二に,生徒がまとめた結果を発表する場面やWWW上に公開する機会を作らなかったことである。生徒の導き出した結論が生徒間で異なる場合もあったため,他の生徒と意見交換する場面を作れば,学習がもっと深まったのではないかと考えるからである。
 生徒の結論の根拠となるデータの出所(URL など)やその内容も細かく評価基準を設けて評価しなければならない。生徒の提出内容は同一ではないため,そのため評価の時間が予想以上に費やしたこともあった。しかし,生徒が意欲を持って取り組んでいることが一番の収穫である。
ワンポイント・アドバイス
 1クラス全員の生徒がそれぞれサーチエンジンなどを使って検索すると,応答待ちが何分もかかることが多い。その対策として,課題を情報検索によるアクセスの必要な課題とアクセスを要しない生徒自身に考えさせる課題と複数準備しておき,課題の解答順番をグループごとに変えるなどして負荷を減らすとよい。また,プロクシキャッシュがある学校は,オートパイロットソフトを使って授業に必要なURLに事前にアクセスしてキャッシングおくと生徒の応答待ちが少なくなる。ただし,プロクシキャッシュがあっても,キーワードによるサーチエンジンの利用は生徒のひとり一人が検索内容が異なるためキャッシングの効果が薄いため,授業の展開には工夫が必要である。

利用したURL など(一部)

文部省 http://www.monbu.go.jp/
総理府統計センター http://www.stat.go.jp/
東京証券取引所 http://www.tse.or.jp/
ネチケットホームページ東金女子高等学校
http://www.togane-ghs.togane.chiba.jp/netiquette/
Yahoo日本 http://www.yahoo.co.jp/
インターネット情報ナビゲーション(TITAN) http://titan.navi.ntt.co.jp/
NTTディレクトリ http://navi.ntt.jp/
Infoナビゲータ http://infonavi.infoweb.or.jp/
WWWナビゲータ
http://home.impress.co.jp/magazine/inetmag/wwwnavi/index.htm
(あらかじめ指導者側が考えていたもので,必ずしも生徒はこれらのURL のみを使用したわけではない。)

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