課題研究を全てインターネットで

高等学校(工業系)第3学年・課題研究
大分県立津久見高等学校 瑞木 圭二

インターネット利用の意図
 課題研究のテーマは,次のように大きく3つに分類されている。
1.資格取得 2.調査研究 3.製作
 その中でも,インターネットは「調査研究」,「製作」に非常に適していることがわかった。課題研究は生徒自らが,テーマを決め試行錯誤を繰り返しながら,それを自主学習の元に完成させていく過程の中で,自己学習,資料収集など,これからの生涯学習社会に巣立つ社会人に必要な能力を,インターネットの力を借りて育成する。
 課題研究を行うのにあたっては,できる限りインターネットを活用し,道具としてのインターネットの利用技術を身につけることを目標にした。

1 単元 課題研究(調査研究,製作)
(1) ねらい
・課題研究の報告レポートは全てパソコン上のテキストファイルや画像ファイルとして提出させる。
・課題研究に必要なテキストは,検索ページを利用して自分でダウンロードしたりプリントアウトを行う。
・疑問点がでた場合は,バーチャルクラスルームや電子メールを通じて,学校外の先生にも協力をお願いする。
・課題研究発表会資料は,インターネット上で集めたデータを整理し,HTML化をはかり,プレゼンテーションできるように準備しておく。
(2) 指導目標
 課題研究の趣旨に添って自力で物事を解決させる能力を身につけさせるため,教師の介入をできるだけさけることにする。生徒が方向を見失ったり,問題解決のために挫折した場合には適当な指針を与え,軌道修正する。
(3) 利用環境
・使用ソフトウェア名
 Netscape Navigator Gold
・使用機器と台数
 富士通 FMV-5133T3 41台
・使用ソフトウェアの特徴
 Netscape Navigator Gold

 WWW(World Wide Web)のブラウザ機能と検索機能を積極的に利用して,世界中から最新の情報を収集することができる。また,ホームページ編集機能を利用して,プレゼンテーション資料の作成にも役立つ。
2 指導計画
指導計画 留 意 点
@検索ページを利用してVRMLについて調査する。
★インターネットの利用
・英文からの翻訳は手間がかかるので日本のサイトから検索する。
・単なるキーワード検索だけでは,データ量が多すぎるので,AND検索などを使って,データの絞り込みを行う。
・infoseek,gooなどの検索ページを利用する。
A検索で得たデータはプリントアウトし,教材化する。
★インターネットの利用
・Netscape Navigator Goldのプリント機能を利用してアクセスしながらプリントアウトをする。
・ワープロソフトを使わずにNetscape Navigator Goldのプリント機能を使うことで簡単に印刷できる。
Bダウンロードしたテキストデータや画像データはフロッピーディスクに保存しておく。
★インターネットの利用
・大きいサイズのグラフィックデータは,ホームページ上では重くなるので,リサイズや減色などをしてファイルサイズを小さくしておく。
・フリーウェアやシェアウェアの宝庫である窓の杜を通じて,グラフィックコンバータをダウンロードする。
C教材を元に,いろいろなプログラムを調べ模倣する。 ・ダウンロードしたプログラムをそのまま打ち込み,実行・解析することで,言語の特徴を捉えことができる。
・試行錯誤を繰り返すことで,エラーの原因を探り,プログラムに精通する。
Dオリジナルのプログラムを作成する。 ・Cで得たノウハウを元に,実用的なプログラムを完成させる。
E発表原稿の作成 ・Bで得たデータを元に,B4一枚分のプリントを作り上げる。
・一度得たデータをもう一度使うことで,資源の有効利用の技術を体得する。
F発表資料のHTML化
★インターネットの利用
・Bで得たデータを元にHTML化することで,プレゼンテーション技術を体得する。
・WWW ブラウザであるNetscape Navigator Goldがプレゼンテーションツールにもなることを確認させる。
・Netscape Navigator Goldのエディタ機能を使って,簡単にHTML化ができる。
G課題研究成果発表 ・Netscape Navigator Goldがハイパーリンクできる機能を使うことで,原稿画面から,自分のプログラムの実行画面や,質問があった内容のページへと自由に飛ぶことができる。
H原稿の完成 ・Bで得たデータや,Gでの質問を元にB5レポート用紙50枚の原稿を仕上げる。

3 利用場面
(1) 活用の色々

@利用技術の研究
 WWW ブラウザ技術の発達でテキストや静止画像のみならず,音声や動画,3Dなど様々なメディアの表示が可能になった。現在インターネット上でどのような技術が,実験あるいは実用化されているかを探ることも課題研究の調査研究として有効である。
 本校の課題研究ではVRMLやトレースルートについて研究をした班がある。
A道具としての活用
 これからの社会人として,パソコンを使いこなすことは既に常識であると考えられるが,さらに必要になってくるのがインターネットを道具として使いこなせる能力であろう。電子メールの活用,情報収集技術の習得,情報発信能力の習得,昨年度の卒業生は,1年間の課題研究を通してそれを見事にやってのけた。
B発表での活用
 本校での課題研究発表会では,発表資料も自分達の研究項目の要点をHTML化させることにした。課題研究のテーマが決まると,メンバーにフロッピーディスクを1枚ずつ配布し自分たちの研究成果や,インターネット上で得られたデータをその中に納めていくように指示する。蓄積されたデータは卒業研究レポートの原稿をまとめるときもそのまま使えるようにしておく。そのデータから発表に必要なものだけを集め,HTML化することで文章をそのままブラウザを使って発表させることができる。市販のプレゼンテーションツールと違って,発表順序はランダムに選択できJavaで作ったホームページに飛んで提示することもできるなど大変優れた面を持ち合わせている。
C資料収集
 直接インターネットそのものを課題研究のテーマとしていなくてもインターネットは課題研究にはなくてはならないものになりつつある。研究や制作の途中で出てきたわからない言葉をキーワード検索することで必要な情報が得られる。一昔前までは,図書館で文献を見つけ調べる以外に方法はなかった。しかもその文献が図書館に無ければもうあきらめるしかない。しかしインターネット上にはありとあらゆる情報が存在し,キーワード検索していけば,かなりの精度で必要な資料を収集することができる。また,電子メールを活用すれば疑問点を解決することも可能になってくる。
(2) 展開と感想
 次の項目は,課題研究のレポートの中から抜粋した生徒の感想の大まかな過程である。
 これを見ると,次のような流れで生徒自身が試行錯誤を繰り返し,最終的にインターネットを自分のものとしたことがよくわかる。
@目標を見つけることができないで,苦労している。
A教師の教材提示により,方向を見つける。
B教師による簡単な導入。
CVRMLを調べることで興味を持つ。
D複雑なプログラミングに対しての不安。
Eプログラムの持つ繊細な仕組みを発見する。
F色々なプログラムを調べ,模倣してみる。
G自分でオリジナルのプログラムを作る。
H苦労して作り上げたことに対して達成感と感動を覚える。
IデータをHTML化し,資源の再利用の方法を知るとともに,発表への工夫をする。

 ここでは,教師による介入は初期導入と方向づけのみであることに注目してもらいたい。例えば,VRMLに関する資料を教師が準備するには,大変な事前準備と取捨選択が必要になってくる。インターネットを利用して生徒自身が資料を集め,学習し,発表までやってのける。まさに課題研究の目標を達成していることになる。
4 実践を終えて
 100校プロジェクトの指定を受け,課題研究を通して生徒とともにインターネットの研究をやってきて今年で3年目を迎えた。課題研究本来の目標である自ら課題を設定してそれにとり組むことと,インターネットを教育に利用することは非常に多くの共通点を持っている。遠く離れた生徒同士の共同研究。疑問点を他の学校の先生に聞く。顔も合わせたことのない,県外や海外の仲間と電子メールを交換し,共同のホームページを作る。その他,学校という閉じた社会に留まらず,距離や空間を越えて,現実に自分たちが生活している大海のような社会との繋がりを持った真の生きた教材を通して,今まさに生まれて来ようとしている新しい情報をいち早く収集,利用することができる。今まで,マスメディアでしか行えなかった出版などの情報発信さえできるようになった。
 100校プロジェクトをスタートした当時の生徒たちはインターネットの言葉さえ知らずに課題研究に取り組んだ。インターネット接続されたパソコンも1台,現在では当たり前になっている文章を簡単にHTML化してくれるソフトも全くない。そういった手探りの状況の中で苦労して取り組んだホームページの製作など,今にしてみれば良い思い出となっている。自分で育てた植物を大切にすることと同じように,苦労して作り上げたホームページは生徒達には卒業してもかけがえの無いものになるだろう。インターネットに地道に取り組んだ生徒は,その有効的な使い方をわきまえていた。
 インターネットを活用した課題研究の醍醐味は生徒とともに勉強していくことである。課題研究の発表会ではまさに自分の道具としてインターネットを使いこなして立派に発表する生徒達を見て,この3年間の取り組みを振り返り大きな感動を覚えた。
ワンポイント・アドバイス
1.外国語学習としての活用
 海外のサイトには,日本より早い情報が登録されている。たとえば日本製の情報機器などの活用のノウハウなどは皮肉なことに海外の方がはるかに情報量が多い場合がある。
 あるいは,できたばかりのフリーウェアなどを登録しているサイトには,役に立つプログラムがあるが,ヘルプファイルは全て英語で書かれている。翻訳プログラムなどを利用したり自分で翻訳すること等で,それを日本語化することによって生きた英語の学習になる。
URL:http://www.shareware.com/
URL:http://www.download.com/
2.フリーウェア,シェアウェアの活用
 インターネット上で得られるプログラムは,市販の高価なソフトウェアに頼らずに教育に利用できるものが多い。特に「窓の杜」はソフトウェアのジャンル別に分類されており,常に更新され,最新の情報を手に入れることができる。また,それぞれのソフトウェアに評価がついており,安心して利用できる。
URL: 窓の杜 http://www.forest.impress.co.jp/

利用したURL 等

検索エンジン Infoseek http://www.infoseek.co.jp/ , goo http://www.goo.ne.jp/

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