1 虫地図を作ろう

(小学校 第1学年 生活科)
習志野市立実籾小学校 西野富信

2 本時のねらいと題材設定の理由

 比較的自然が豊かな本校の周辺でも都市化が進み,徐々に子どもの活動が制限されてきている。こうした環境の変化により,生き物に触れたり捕まえたりする経験が乏しい子が増えつつある。
 生き物に触れ,生き物の成長の様子や生きていく姿を直接に体で感じとる経験は,豊かな心情を育てるために大きな意義がある。そこで,地域の限られた自然環境の中でも,一人ひとりが願いをもち生き物を育てる活動により,自分と同じように生きていることに気づき,愛着をもって接することができるようにしたい。

3 利用ソフトの概要

(1) 利用ソフト

「一枚の地図」日立

(2) 利用ソフトの概要

・ウインドウズ対応。生活科・社会科創作教材。
・地図を描いたりスキャナーで取り込んだりして,学習のねらいにあった地図を作ることができる。
・スタンプ機能がある。(建物,乗り物,動植物など)
・写真や音のでるマルチメディア地図が作れる。
・個々のデータを地図に重ねられるので,グループ学習で仕事を分担して進めることができる。

4 コンピュータ利用の意図

(1) 利用場面

 ここでコンピュータを利用する主なねらいの一つに,「ふりかえり」があげられる。1学年の児童の実態を考えると,夢中になって活動に取り組む反面,時間が経過すればするほど,自分の活動を想起したり表現したりすることが難しくなる。
 そこで,このソフトの一つの特徴であるスタンプ機能を使えば,児童は興味を持ち意欲的に学校周辺の自然環境について自ずとふりかえりができるのではないかと考えた。ここでは児童のリテラシイーに差異があることと同時に,話し合ってふりかえりが十分にできるよう2人一組でコンピュータを操作することにした。

(2) 利用環境

1) 使用パソコン HITACHI FLORA1010 20台
(サウンドボード,スピーカー等があるとよい)

5 単元の指導計画(10時間扱い)

第1次 秋の公園に行こう
・夏の頃との違いに気づく。
・虫が大きくなったよ。卵がみたいな。
第2次 虫を育てよう
・個々に飼いたい虫を育てる。
・うまくいかない時は,虫がいた環境を見直す。
・情報を交換する。

第3次 幼稚園の子に教えてあげよう
・クイズにしよう。
・カマキリの持ち方を教えてあげよう。
・虫のいる所に連れていって,教えてあげたいな。

発 展 わかったことをまとめよう

6 本時の展開

(1) 目標

・学校周辺で生き物がいた場所を想起し,地図を作成してまとめることができる。

(2) 展開

学習活動 活動への働きかけ 準備・資料
1 本時のめあてを確認する

  教師用のコンピュータに電源を入れておく。
2 ソフトの操作の仕方を知る ・教師用の画面をLANで送りアイコンの使い方を紹介する。
・罫線の引き方などは,今まで使ってきた他のソフトと変わらないことを教える。
・どんな地図を作ればよいのかイメージが持てるよう,教師が作成した地図を大型モニターに提示し,必要に応じていつでも見れるようにする。
地図を作成しておく
大型モニター
3 地図を作成する
わかったことをもとに虫地図を作ろう
ノート
  ・道路と校舎から描くよう指示する。
・まだ操作に慣れていない子もいるし,相談してふりかえりが十分行えるということを考慮して,2人一組にする。
・思ったように作成がすすまないグループには,個別にアドバイスする。
・ペイントに失敗してしまう等操作上のつまずきに共通点が見られるような場合は,時間経過と共に作業を中断し,全体指導を行う。
4 スタンプ機能を紹介する ・教師用の白地図をもとに,スタンプ機能を紹介する。
・いろいろなスタンプがあるが特に必要のないものは使わないよう話す。
・スタンプしたい所とウインドウが重なってしまうことがあるので,ドラッグしてあげる。
また,自力でドラッグすることをすすめる。
 
5 友だちの作品を見合って、よいところを参考にする ・完成までの途中段階で,作品を見合う場を設け,自分達の作
品に取り入れられる部分を見つけるよう促す。
・特に工夫した点があれば,その部分を紹介させる。
 
6 セイブする ・各グループのよいところを見つけそれぞれのよさをほめる。  
7 次回の予告をし,見通しをもつ    

7 今後の実践のために

(1) 利用場面の評価

 このソフトを使用するきっかけは,たまたま遊び半分にソフトを使っているうちに,「スタンプを使うと,楽しそうだな。」と感じたことにある。予想したとおり,道路や校舎を描いている時とは全く異なる反応がでた。
 難しいのではという教師の心配をよそに,とても意欲的に取り組めたのは知的好奇心が刺激されたことと,まるではんこを押すような手軽さがよさとして実感できたためではないだろうか。また,「草地を表現したいのなら,緑のペイントを使ったらどうかな。」等,子どもの願いを的確に読みとり,具体的にアドバイスを加えていったことが,とても有効に働いた。

(2) コンピュータ利用上の成果

 子どもの話を聞いていると,「ここの棒の先にトンボがよく止まっていたよ。」等とコンピュータを操作しながら,ふりかえりが十分行えたことが大きな成果としてあげられる。また,何度も容易に修正がきくので,積極的に地図を描いていたように感じる。
 これが,もし画用紙であったとしたら,虫などの表現に得手不得手があるため,表現方法自体でつまずいていたかもしれない。クリックすれば誰でも共通の図柄が得られるため,どこのどんな虫がいたのかという点に思考が集中できたようだ。言い換えれば,この学習でコンピュータでの操作を身につけると同時に,コンピュータでの表現のよさに知らず知らずのうちに気づいていったのではないだろうか。


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