1 夏のできごとを話します

(小学校 第2学年 国語)
目黒区立中目黒小学校 大川原 幸生

2 本時のねらいと題材設定の理由

 この時期の児童の日常会話は,断片的な表現が多く,いろいろな形で聞き出されて,ようやく言いたいことの全貌がわかるというのが一般的である。友達がどんなことをしたのか「夏休み」という共通の話題を取り上げ,話したいことを聞き手によく分かるように話そうとする意欲をもち,題材や順序を整理して話すことをねらっている。
 本時では,国語の学習としての話し方の技能練習だけでなく,聞き手の関心を高める資料や写真を利用するなど「話す工夫」も大切にしていきたい。

3 利用ソフトの概要

(1) 利用ソフト名

『マイペディア97』 株式会社 日立デジタル平凡社

(2)利用ソフトの概要

マルチメディア百科事典で,約6万2000項目が収録されている。写真や図表,地図,年表,ビデオ画像,アニメーション,音声データなど約1万件が登録されている。検索語は漢字でも平仮名でもよく,文字パットを表示すればマウス操作だけで検索語を入力できる。
 本文中の赤く表示されている単語をクリックすると,その項目の説明画面に切り替わるなど,関連する情報も簡単に調べられる。本文と一緒に表示される写真は,拡大して表示できる。動画,音声,アニメーションが付属している場合は,再生ボタンをクリックすれば再生できる。
 本時は,子どもから大人間で幅広い層を対象としたデジタル百科事典なので小学校低学年では教師の助言のもとで使用させた。地名や言葉から検索し,豊富な風景写真を見ることができる。また,野鳥の写真や鳴き声も再生でき興味をもったとき,すぐに聞いたり見たりできる。

4 コンピュータ利用の意図

(1)利用場面

 国語の学習である「話す」技能はもちろんだが,聞き手に「楽しかった夏休み」がより伝わるように写真やパンプレットなどの資料を使う工夫をさせたい。しかし,クラスの児童全員が必ずしも資料を準備できるわけではない。そこで,準備できない児童が,手軽に資料準備ができるマルチメディア百科事典を利用した。児童が夏休みに旅行したいろいろな場所や,様々な体験に対応することが,マルチメディア百科事典なら可能であると考えた。それによって,聞き手の興味・関心や,話す児童の意欲を高めたりできるのではないかと考えた。

(2) 利用環境

1) 使用パソコン NEC PC9821Nw133(ノート型 ビデオ出力端子付き)1台
2) 周辺機器 書画カメラ1台 テレビモニター1台

5 本時の展開

(1) 単元の指導計画(4時間扱い,本時2/4)

第1時 わかりやすい話し方について話し合う。
第2時 夏休みの出来事で話す内容を決め,発表の準備をする。(本時)
第3,4時 発表会を行い,感想や意見を交流する。

(2) 単元目標(本時:◎)

◎話したいことを聞き手によくわかるように話そうという意欲をもち,題材や順序,資料を整理して話すことができる。
○声の大きさや速さに気をつけて,ゆっくりと,はっきりと話すことができる。
○友達の話を最後まで関心をもって聞き,質問や感想を言うことができる。

(3) 展開

学 習 活 動 (○児童の反応) 時間 備 考
1,本時の課題をとらえる。
夏休みの思い出を話す準備をしよう。

(分)
・担任に届いた夏休み中の便り(葉書)をもとに,楽しかった思い出を紹介する。
2,自分の話したい話題を見つける
 夏休みの思い出の中で,友達に話したいことを出し合う。
○ミニトマトが大きくなったよ。
○家族で九州に行ったよ。
・旅行に行っていない子供に配慮する。
3,話す内容に必要な事柄を話し合う。
○「ぼくの夏休みの思い出は,△△です。」
 <いつ だれと どこで どのように>
 「質問は ありますか。」
 「感想を 言って下さい。」
 「これで ぼくの話しを終わります。」
○話すとき写真みたいなものがあるとわかりやすいよ。
10 ・友達から聞きたいことをもとに,話に必要な事柄を決める。
・夏休みの作品などで資料になる例を探す
4,話す練習をする。
 必要な資料を準備する。
○家から海で遊んでいる時の写真をもってこよう。
○地下鉄のスタンプラリーをしたので,ラリー帳をもってこよう。

○山中湖に行ったので、写真があるといいな
○熱川のバナナワニ園に行ったのでワニの絵を探そう
○家族旅行で乗った乗り物の名前は、ロープウェーだったかな。ケーブルカーだったかな?
22 ・話す内容をメモするよう助言する。
・資料が準備できない児童には,行った場所や内容から担任と一緒にコンピュータを使って資料をさがす。
・写真で確認するよう助言する。
5,次時の予告を聞く。
 全体発表会で一人一人発表することを知る。
 

(4)発表例

 お父さんと臨海新交通システム「ゆりかもめ」に乗った子供は,その時の写真がなかった。そこで担任の助言で「ゆりかもめ」とは何か調べて発表に利用することにした。まず,「ゆりかもめ」の写真を提示した。

 次に写真の右下にあるスピーカの印をクリックして「ゆりかもめ」の鳴き声を流した。今までの発表では,写真やパンフレットなどの見る資料だったのが,鳥の鳴き声が流れ,聞き手の興味・関心がいっそう高まった。

6,今後の実践のために

(1)利用場面の評価

 児童は,話す時に何らかの資料を準備することが,聞き手に「楽しかった」ことを伝えるのに効果的であることを実感できた。すべての資料をコンピュータで準備するのではなく,家庭から持ってきたものや図書室などの図鑑も利用した。当然,前もって家庭から持ってきた児童の写真や海岸で拾った貝殻などの実物資料に聞き手の関心は高い。しかし,準備できなかった児童も担任と一緒に資料探しをコンピュータを使って見つけることによって,準備できなかったという気持ちが薄れ,自信をもって発表することができた。

(2)コンピュータ利用上の成果

 今回は「夏休みの思い出」という内容であったために,地図検索や各地の名所の風景写真を検索できるマルチメディア百科事典は,効果的であった。また,児童が,夏休みによく行う虫採り体験で大好きなクワガタムシの写真も提示できた。一つのソフトで児童の多様な要求にかなり答えることができた。
 実践が2年生であったために,児童は国語事典など検索方法を知らない。そのため,担任と一緒に探した。しかし,そのことによって担任に「キーワード」を伝える必要性が生まれ,話す練習になもなった。
 また,コンピュータでことばを入力すると関係する写真や説明が出てくる事(検索)に,多くの児童が興味を示していた。必ずしも,児童のイメージした写真や資料がでてくるわけではないが,「『でてくるかな』とドキドキしちゃった」とコンピュータの利用に関心も高まった。
 写真や音声,動画収録がより充実し,その一覧表があると便利に感じたが,最新版『マイペディア98』では,改良されている。
 今回は教室内でノートパソコンからTV画面に提示したため,コンピュータ専用ディスプレイと比べ画質が悪くなってしまった。今後ハード面における利用方法の改善も必要であると感じた。


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