1 虫のゆりかご

(小学校 第3学年 国語科)
鴻巣市立松原小学校 加藤久子・宗像いちこ
実践協力者 新井 透

2 国語科におけるコンピュータ利用

 各学校に教育用コンピュータが導入されるようになった現在,各教科の授業でコンピュータが活用され,教育効果を上げている。気象衛星の映像や天文シミュレーション,計測などは理科学習で,またCAI教材や知的ゲームは算数科で,そして資料の検索は社会科などで利用が進んでいる。国語科においても,ワープロをローマ字の学習のまとめや,文章表現の手段として利用しているが,情報活用能力の育成を目指すコンピュータ利用の工夫についても考えたい。
 高度情報通信化社会を迎え,情報活用能力の育成を図るときコンピュータは必要不可欠な教育機器である。ここでは3年生の国語科の学習(「虫のゆりかご」の学習から「昆虫の絵本作り」)について取り上げ,国語科におけるコンピュータ利用の一例を示したいと思う。

3 利用ソフトの概要

(1) 利用ソフト名

「マルチメディア昆虫図鑑」(アスキー出版)

(2) 利用ソフトの概要

 マルチメディア昆虫図鑑は,日本と世界の代表的な昆虫約600種類を網羅し,1000以上のスチール写真44の生態ムービー,27種の鳴き声サウンドを納めている。児童は,自分が疑問に思ったことや興味のわいたことを図書資料と,この「マルチメディア昆虫図鑑」を利用して調べることで,情報の収集選択・活用を図ることが活発になるであろう。
 Windows95では,「マルチメディア昆虫図鑑」のCDを入れるだけでこのソフトが起動する。セットアップ作業を必要としないことはコンピュータの苦手な先生にとっても安心である。(Windows3.1ではセットアップ作業が必要になる。)
 ソフトの内容は,[昆虫の不思議][環境と昆虫][昆虫とは何か][資料室][フォトギャラリー]から構成されており,動画の再生から昆虫の検索まで全てをマウスだけで操作できる。キーボードを使うことはないという利点から,コンピュータの置かれた机を広く利用することができ,児童は教科書やノートを持ってコンピュータの前にすわることができる。

3 コンピュータ利用に際して

(1) 「マルチメディア昆虫図鑑」の利用

 自分で調べたことを本や記事にして表す活動をするとき,図書資料は役立つが,検索の速いコンピュータを利用することで児童の作業の効率が上がり意欲を喚起させることができるであろう。さらに動画・音声といったマルチメディア資料を活用することで児童の表現活動がより豊かなものになるはずである。
 「マルチメディア昆虫図鑑」は,多くの昆虫資料やそれらの生態ムービー,サウンド資料などが豊富に蓄積されており,昆虫好きな児童はこの教材で次々と新しい発見をすることができるありがたい教材である。本単元ではこの「マルチメディア昆虫図鑑」と図書資料を活用しながら自分なりの説明絵本を作ることを目的のひとつとしている。この「マルチメディア昆虫図鑑」では,オトシブミの作る虫のゆりかごを段階的な絵で示しており,教科書にそった学習ができるので昆虫の絵本を作ろうとする本単元では大いに参考になるであろう。「マルチメディア昆虫図鑑」の利用により,児童は新しい発見をしながら創作表現活動を広げるであろうと期待した。

(2) コンピュータの利用形態

 本校では児童用コンピュータ20台(スタンドアローン)が配備されている。「マルチメディア昆虫図鑑」のソフトは6本しか導入されていないことは残念であるが,児童は自分の必要に応じてコンピュータや図書資料を利用するため,6台程度のコンピュータで十分であり,時間とともにコンピュータのそばにいる児童は少なくなる。
 「マルチメディア昆虫図鑑」はマウスの簡単な操作で検索や表示,動画や音声の再生を扱うことができるためコンピュータ操作に不慣れな児童も,友達と一緒に楽しくコンピュータを使った学習を進めることができることも利点である。

4 本時の活動

(1) 単元名

自然のふしぎ「虫のゆりかご」

(2) 単元について

 自然科学の内容を扱う本単元では,科学読み物を読む楽しさを味わい,読書によって生じた疑問を図書資料の活用によって自分で調べて解決したり,興味のわいた事柄をさらに深く調べることを学習する。
 本単元の学習では,科学読み物に興味関心をもたせるため,教材文の利用とともに「マルチメディア昆虫図鑑」を利用して「昆虫の本」を作らせる。書きたい事柄に応じてコンピュータや図書資料を利用して調べながら自分の「昆虫の本」を作成する。できた本をお互いに発表し合ったり,他の科学読み物を紹介することで自ら進んで図書を選び,調べて行こうとする意欲へつなげたい。

(3) 単元の目標

○進んで科学読物を読み広げ,興味関心を高めることができる。
○オトシブミが,葉っぱのゆりかごを作る様子や筆者の考えを読み取り,まとめて絵や文で表すことができる。
○疑問や興味のわいたことを図書資料やコンピュータを利用して調べ,情報の収集選択・活用を図ることができる。

(4) 展開(13時間扱い)

  

(時)
学習活動 学 習 内 容 指導上の留意点
★コンピュータ利用の留意点

(1)
○全文を読み通す。 ○感想と学習計画について。 <略>

(3)
○段落分けをする。
○読みとり@
○読みとりA
○形式段落と意味段落について。
○小さな虫を観察することになった経過について。
○葉が作り変えられていく様子について。
<略>

(6)
自分が紹介したい「昆虫の絵本」を作ろう
○昆虫の絵本作りをする。 ○疑問に思ったことや興味のわいたことを図書資料やコンピュータを利用して調べながら,書く順序を整理して絵本作りをする。 ○自分が紹介したい昆虫のどんなことを中心にして絵本作りをするのかその目的をしっかりともたせる。
○どんな順序で書くのかノートに書かせて、しっかりとおさえておく。
○効果的な構成をしている作品を紹介する
  ★自分の紹介したいことをマルチメディア昆虫図鑑や図書資料を活用して調べる。
★コンピュータは友達と一緒に利用してもいことを知らせる。
★検索のしかたが分らない児童には教師が積極的な支援をする。
★コンピュータは自分の必要に応じて利用させる。
  ○自分の作った絵本を紹介する。 ○友達の絵本を読み合いお互いのよい点を見つけ,発表する。

(3)
○科学読物を読む
○科学読物の紹介文を書く
○いろいろな科学読み
物に触れて興味を高
める。
<略>

5 今後の実践のために

 本単元の学習を終えた児童は,他の国語の授業からは学習できない内容に触れることができたことに喜びを見いだし,自分の作った絵本に満足したようであった。また,友達の絵本作品を休み時間まで見合う様子も見られた。新しい発見やコンピュータを利用した情報の収集は児童の知的好奇心を満足させ,今後の学習へ向けての期待や意欲につながったようであった。
 国語科におけるコンピュータの活用事例はまだまだ様々な方法が考えられる。今後ともより広い角度からコンピュータの活用と児童の情報処理活用能力の育成に向けて研究を重ねて行きたい。


CEC HomePage平成9年度市販ソフト実践事例集III