1 表とグラフ

(小学校 第3学年 算数科)
北区立東十条小学校 鶴島香織

2 本時のねらいと題材設定の理由

 ここでは,資料を整理しその結果を表す方法として「表」「グラフ」が有効であることに気づき,進んで表,グラフを生活の場などに生かしていこうとする態度を育てようという意図がある。表やグラフの読み方・かき方の指導は大切だが,その点だけに指導が偏らないよう,表やグラフにすることのよさにいつも立ち返って考えるようにしたい。したがって,問題場面として生活に身近なものや,児童の興味・関心を喚起させるようなものを用意したいと考えた。
 ある教科書には4ページにわたって,道路を通る色々な種類の車の絵が描かれている。これを落ちや重なりなく数える工夫をし,それを見やすく整理する方法として数表やグラフにのよさに気づかせるのである。しかし,教科書というメディアでは,時間の経過や実際に近い車の動きなどを表すことは不可能である。
 そこで,パソコンのアニメーション機能を利用して,子供にとって身近でよりよい課題を作りたいと考えた。本時は単元の導入であるので,児童が最後まで興味関心をもち続けることができるインパクトのある課題として,パソコンの画面にポケモンのキャラクターを次々に登場させ,それらを数えさせることにした。
 ポケモンは児童の間でとても人気のあるキャラクターである。身近なキャラクターを登場させることで,より児童の課題に対する意欲が高められるものと思われる。また,ポケモンについては,任天堂の許可を得て,5種類のキャラクターをアニメ化した。児童が楽しく,夢中になって課題に取り組み,いつのまにかねらいを達成できるような授業の展開を期待したい。

3 利用ソフトの概要

(1)利用ソフト

「おはなし玉手箱」(NECインターチャネル)

(2) 利用ソフトの概要

 「おはなし玉手箱」は,充実したアニメーション機能をもつお絵描きソフトである。画面に背景,スタンプ,動画用のスタンプを貼り付けていったものを何枚か作成し,その絵を次々に表示させることで,アニメの入ったお話を紙芝居の様に見ることができる。
 「おはなし玉手箱」には,背景画,動きのあるビットマップ,静止画のビットマップ,BGMなどが,あらかじめ数多く用意されている。背景画はとてもきれいで,児童の創作意欲を盛り立てる。
 また,そのような背景に動画スタンプを貼り付けていくだけで,簡単に楽しいアニメになるし,BGMも「絵に貼り付ける」といった感覚で操作できるので,小学校低学年の児童でも,簡単に自分だけの動く紙芝居を作ることができる。
 その他の機能も充実しているので,「おはなし」(動く紙芝居)を作るためだけでなく,「動く絵日記」をつけたり,プレゼンテーションに利用したりと,様々な学習場面でび活用が考えられる。また,マイクで音声を録音し,貼り付けることもできるし,今回のように独自のビットマップも追加登録することができる。

4 コンピュータ利用の意図

(1) 利用場面

 本時は単元の導入にあたる。児童はパソコン画面に次々に登場するポケモンのキャラクターを数え,数表にするという学習活動をする。
 パソコンを利用することで,次のようなメリットが考えられる。
○子供たちの意欲や関心を高めるもの
・パソコンを使うことにより,興味・関心を高める。
・自分で納得するまで操作できるようにする。
(確認もできるので,安心して学習できる)
○工夫が必要になるもの。(ここでは,資料の整理の仕方)
・動きのある物を提示することで数える必然性を出す。
○次の学習につながるもの
・つぎの学習に生かせるようにする。(表からグラフを作成する)

(2) 利用環境

1)利用パソコン NEC PC9821 Cu13 20台 (児童機)
NEC PC9821 Ct20 1台 (先生機)
2) 周辺機器 16インチモニタ(先生機画面提示用) 10台
NEC PC-9821 Xv20 (サーバー機)
pc-semi GW (パソコン室内LAN)

5 本時の展開

(1) 指導計画(7時間扱い) 1/7本時

第1次 「せいりのしかた」…1時間
・ポケモンのキャラクターを数えて整理し,表にまとめる。
第2次 「ぼうグラフ」 …3時間
・数表を見やすく表す方法を考え,グラフに表す。
第3次 「表」 …2時間
・クラスで人気のある遊びを調べ,二次元表にまとめる。
第4次 「まとめ」 …1時間

(2)目標

・資料の落ちや重なりがないように数え,見やすい整理のしかたを考えることができる。
・資料を工夫して数え,それを整理したり数表にまとめたりするよさに気づくことができる。

(3)展開

  主な発問と学習活動・児童の反応 ☆教師の支援◇指導上の留意点



T.ポケモンのキャラクターが何種類いるか知っていますか。
T.(アニメを見せて)何種類出てきましたか。
C.5種類。
T.何が一番多く出てきたかな。
C.ピカチュウ。
C.ゼニガメ。
◇パソコンのアニメーショで、ポケモンのキャラクター(5種類)を1〜12匹ずつ表示する。
◇アニメの内容ではなく、資料の種類や数に関心を持つような導入をする。
ポケモンのキャラクターを数えて、分かりやすく整理しましょう。



T.5種類のキャラクターが何匹ずつ通ったか、工夫して調べ、わかりやすく整理しましょう。
C.アニメを見て1種類ずつ数えている。
C.線などをひいて数えている。
C.数えた結果を数値にしている。
C.数えた結果を表にまとめている。
◇キャラクター名を書いた(自由に貼ったりはがしたりできる)と画用紙を与え、児童が自由な発想で資料を数え、整理できるようにする。
◇アニメーションは何度も見直せるようにしておく。

T.調べた結果を発表しましょう。どうやって調べたかも発表しましょう。
C.何回もアニメを見て、1種類ずつ数えた。
C.1から順に数字をかいて数えた。
C.線をひいて数えた。
C.「正」の字をかいて数えた。
T.もっと分かりやすく整理する方法はありませんか。
C.表にする。
C.グラフにする。
T.記録したものを元にして、表にまとめましょう。
T.表にしてよかったことはありませんか。。
C.線が引いてあって見やすい。
C.何匹、何匹と毎回かかなくてすむ。
C.たてに数字をたすと、合計が出る。
C.数字で書いてあると分かりやすい。
C.種類と何匹いるかがきちんと並んでいて見やすい。
◇資料を「正」の字を使って整理する方法も押さえる。
☆既習の内容を思い出させ、数表にまとめるようにさせる。
◇グラフは次時間に扱うことを知らせる。
◇表の枠をかいたワークシートを与え、表題、項目、資料の数などを全員で確認しながら、表を作り上げていく。
☆最初にかいたものと比べさせて、数表にまとめるよさに気づかせる。


T.もうひとつ、海の生き物が登場するアニメーションがあります。それぞれ何匹ずつ泳いでいたか表にまとめましょう。
C.クラゲが一番多かった。
C.合計26匹だ。
C.表にすると、何匹ずついるかすぐ分かる。
◇もう一度、自分で数表化することで、数表にするよさを実感させる。
◇資料を数えるスペースと表の枠をかいたワークシートを用意する。

6 今後の実践のために

(1) 利用場面の評価

 今までたくさんのパソコンを活用した研究授業をしてきたが,今回のようなパソコンの用い方をしたのは初めてであった。つまり,計算ドリルや図形シミュレーションのような市販の算数用学習ソフトを使用するのではなく,「おはなし玉手箱」というアニメーション作成ソフトで児童の興味あるポケモンのキャラクターを登場させたアニメを自作し,それを算数の課題として使用したということである。
 本時は単元の導入であったので,単元を通して児童の興味・関心が持続することを願って授業を行った。パソコンを使用するというだけでも,児童の意欲が喚起され,学習効果が高まるという経験をしてきたので,本時に児童の身近なキャラクターを登場させた課題をパソコンを通して与えたことで,予想以上の児童の反応と意欲的な活動を見ることができた。
 最初に何の課題も与えずに,ポケモンのアニメーションを皆に見せたところ,喜びの声で教室が一杯になった。そこで,「何が出てきた?」「何が一番多く出てきた?」と問いかけたところ,児童から「もう一度見て,数えたい」という課題が出てきた。
 課題の必然性が見い出せたところで,各自,パソコンに向かい,数え始めることができた。また,何度見てもよい,ということにしたので,自分たちのペースで数えたり,確かめたりしていた。
 特に普段算数を苦手としている児童が,一生懸命パソコンの画面を見て課題に取り組み,手をあげて発表する姿も見られ,パソコンの効果的な利用の一提案になったのではないかと思う。

(2) コンピュータ利用上の成果

 今回は,紙のメディアでは実現が難しいアニメーションを簡単に表示することができる,というコンピュータの機能を活用した。またコンピュータを使って,人気のキャラクターを容易に画面上に取り込み,美しい背景と音楽も加えて,目からも耳からも楽しみながら学習できる導入場面を設定することができた。。
 また,コンピュータは場面の再現も容易であるので,児童は何度もアニメーションを起動して,よりよい数え方を模索していた。
 ポケモンのキャラクターを数え,表とグラフにするという学習の後,さらにパソコンの活用として「スーパーYUKI」のグラフ機能を利用した授業を行った。単元を通しては計3時間のパソコンの利用であった。
 数量が縦軸のグラフをノートに手書きした後,それをパソコンで簡単に数量が横軸のグラフに変換したという授業では,それぞれのグラフのよさを一目で確認することができた。これからの週休2日制に向けて効率よくかつ効果的な学習方法ができたのではないかと思っている。まとめにおいても,学習したことがしっかりと定着していることを実感した。


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