1 単元名「ふしづくり」

(小学校 第4学年 音楽科)
平塚市立富士見小学校 中澤泰紀

2 単元のねらいと題材設定の理由

 即興的にふしを作るという活動は,児童の創造性を育てる上で重要な役割を果たしている。しかし,即興的にふしを作る能力は,ある程度の技能を必要とする。したがって,何の素地もないところからいきなり「ふしを作る」活動をすることは難しく,ともすると,その活動がいい加減な遊びに終わってしまうことも考えられる。
 そこで,活動を積極的に進めていくために,階名唱やリコーダーだけではなく,鍵盤楽器や木琴,鉄琴などの児童の得意な楽器と共に,コンピュータを楽器の一つとして利用していきたい。

3 利用ソフトの概要

「ハロー・ミュージック」(ヤマハ)
「ミュージックプロ FM」(ミュージカル・プラン)
「キッズタイム」(グレイトウェーブ ソフトウェア)
 いずれのソフトもコンピュータの画面上にある五線譜の任意の場所に音符を置くことができ,その楽譜を演奏することができる。

4 コンピュータ利用の意図

(1) 利用場面

 即興的にふしを作るという活動への導入として,階名唱でふしのしりとりを取り入れる。2名程度のしりとりから始めて,5.6名でのしりとりに広げたい。その際,リコーダーや鍵盤ハーモニカなどの楽器だけでなく,コンピュータも一つの楽器として位置づけ,利用させたい。
 児童にとって本単元が,コンピュータ利用の授業としては初めてのものである。コンピュータ操作の初歩的な注意から基本的な操作方法まで身につける必要がある。

(2) 利用環境

使用パソコン
NEC PC-9801RA 1台
EPSON PCV590 1台
APPLE Mac Plus 1台
3台のコンピュータを教室に配置し,自由に操作させる。

5 単元の展開

(1) 指導計画

1) 2人で階名唱でふしのしりとりをする (1時間)
2) コンピュータの初歩的な注意と基本的な操作方法を知り,操作に慣れる。(1時間)
3) 4〜5人のグループを作りふしのしりとりを通して作品を作り,発表する。(3時間)

(2) 目標

・ふし作りに興味を持ち,進んでふしを作ることができる。
・コンピュータの基本的な操作ができ,ふし作りに生かすことができる。

(3) 展開

学習活動 活動への働きかけ 準備・資料
1 学習課題をつかむ   ・簡単な節回しの楽譜
ふしづくりをしよう
2 簡単な階名唱を通していろいろなふしの感じをつかむ。 ・教科書にある簡単なふしをドレミで歌わせる。 ・ハ長調の階名を書いた五線譜と,各自がそこにふしを書き込めるようにしたワークシート。
3 二人でふしを作る。 ・二人で,4小節ずつの短いふしを作ってみよう。
・4分音符や8分音符,休符などの確認。
・コンピュータ
4 作ったふしをリコーダーで演奏する。 ・リコーダー演奏しながら,ふし作りをするようにさせる。  
5 コンピュータを使ってふし作りする。
五線譜上の音符を実際に音として確かめる
・リコーダーでうまくふしの確認ができない, 演奏できないなどの場合、コンピュータを使うことが有効な手段となることを知らせる。
・3機種のコンピュータによる音楽ソフトの操作方法について説明する。
・お互いのふしが書き込めるワークシート
6 4〜5人のグループでふしのしりとりをして,一つの曲を作る。
いろいろな楽器でふし作り
・リコーダーやオルガンなどいろいろな楽器を使ったり,コンピュータを使ったりしてふし作りをさせる。
・お互いに協力して,よい作品を作るように心がけさせる。
・休み時間など自由にコンピュータを使わせる。
7 作品の発表会をする。 ・発表会に向けて,自分たちで作った作品の合奏の練習をさせる。
最後に自分たちの音楽を発表

6 今後の実践のために

(1) 利用場面の評価

 コンピュータを次のような状況で利用した。
・男女混合4〜5名のグループで4小節ずつのふし作りをさせた。
・コンピュータで余分な操作をさせないためキーボードをはずして動作させた。
・事前に3種類のソフトについて使用法を簡単に説明したが,子ども達なりに理解し,起動から終了まで行っていた。
・コンピュータの音は楽器の音に負けてしまう。そのため楽器を使う部屋とコンピュータを使う部屋を分けて節作りを行った。
・休み時間なども自由にコンピュータや楽器を使って節作りを行っていた。
・節作りに使った楽器等は(重複回答で,36名中)
リコーダー 34名
鍵盤ハーモニカ 10名
コンピュータ 31名
オルガン 19名
ピアノ 4名
・コンピュータの利用は自分の考えた節を確認するのには最適であった。
・最後にグループ毎に作品の発表演奏会を開いた。
 音楽,特に楽器の苦手な児童にとって,五線譜上の音符がどのような実際の音になるかを想像することは非常に難しい。一方,現在の子どもたちは多様な音楽を日常的に耳にし,メロディーやリズムに対しては感受性が高い。そこで子どもたちの思いついたメロディーをいかに記録し,表現するかが大切な問題と思われる。今回の実践では多分に試行錯誤を繰り返し,共同してふしのつながりを作っていくものであったが,子どもたちの中には音のつながりや,音楽の終わり方にこだわっている姿も見られた。
 3種類のコンピュータで3種類のソフトを使うということは非常に煩雑な印象があったが,子どもたちは特にまごつくこともなく,自然な感じで受け入れていた。これはそれぞれの音楽ソフトの豊富な機能のうちごく一部の共通する機能しか使わなかったために,オルガンで鍵盤を押せば音がでるというのと同じ感覚で扱っていたためと思う。
 また,3台という不利な条件に対して,設置場所としての教室,使用時間無制限,この二つが大きな役割を果たし,子どもたちが十分にコンピュータ接する時間を保証できたと思う。


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