1 天気の変化−友達と天気の変化を調べよう−

(小学校 第5学年 理科)
埼玉県狭山惨立狭山台南小蓋校 松澤 忠明

2 本時のねらいと課題設定の理由

 来年の冬,長野でオリンピックが開催される。長野オリンピックについて知っていることを尋ねてみると,オリンピックがあることは知っていても,くわしいことについてはあまり知っていない。早速インターネットで長野オリンピックのホームぺージをのぞいてみた。開会式まであと121日と出ている。「オリンピックを見に行く人いるかな?」何人かはすでに予定が入っていて,競技の話になった。そこで,「どんな支度をして応援に行ったらいいかな。」話し合いでは,寒さや雪,そして見に行く競技場の話など支度のための条件の話が出てきた。
 「明日の天気を予想しよう。」と言ってもTVでは毎時間と言っていいほど天気予報が設定されているし,新聞を見れば1週間先までの天気が予報されている。そこで,その天気予報がどのように出されているのか,自分たちにも同じような考え方で天気予報ができないかを考えてみることにした。毎年の天気の傾向や地域の言い習わしは,気象衛星や様々な観測からのデータを使った天気予報のような速報性はないが,統計的な経験やデータに裏打ちされた確実性の高い「地域予報」である。この事の理解の上で,科学的な天気予報も過去の経験やデータに裏打ちされていることにも気づかせたい。
 その上で理科年表をはじめとした過去のデータ活用した授業を展開した。

3 利用ソフトの概要

(1) 利用ソフト

理科年表96年版(丸善)

(2) 利用ソフトの概要

CD-ROM化された理科年表と従来の理科年表の違いは,以下の通りである。
1) 多様な検索方法を持っている。
ア 目次検索(複数年度のデータがある場合は一度に検索できる。)
イ 50音検索(5000語)
ウ 簡単検索
2) 関連情報を表示できる。
ア 他年度表示
イ 説明文の表示
3) データ処理ができる。
ア 数的処理(平均,合計,最大最小値,並び替え)
イ グラフ化
ウ 必要データのグループ化
エ 公式計算機能

(3)データの書き出し

CSV形式で保存ができるので,表計算ソフトで加工して,様々な形式にすることができる。

4 コンピュータ利用の意図

(1) 利用場面

 理科年表の中にある長野に関係していそうなデータを検索し,長野県や長野市の2月頃における気象の傾向について知る。また,必要に応じてグラフ化された資料を活用することによって,2月頃の長野の気象について理解をする。資料は理科年表にはこだわらずに,集めることとするが,グラフ化した物などはプリントアウトして全員に配れるようにする。

(2) 利用環境

1)使用パソコン NEC PC-9821CX13
2)周辺機器 OHC 29型TV ビデオコンバータ 各1台

5 本時の展開

(1) 指導計画

1) 長野オリンピックに行こう
2) 天気の観測をする
3)4) 観測の結果から天気の変わり方を予想する。
5) インターネット,シュミレーションソフトにより日本付近の雲の動きを知る。
6) 前日や今日の雲画像をみて,明日の天気を予想する。
7)8) 私たちの住んでいる地域の明日の天気を相模原の友達と予想しよう。

(2) 目標

・長野地方の今までの気象記録から2月頃の天気の様子を調べてみよう。

(3) 展開

学習活動 活動への働きかけ 準備・資料
1.長野オリンピックについて知っていることを出し合う。 ・インターネットのホームページを提示する。
・長野オリンピックの時期、種目、楽しみにしている種目等について発言させ関心を高める。
・観戦にいく予定の児童がいないか聞く。
・インターネットのホームページ
2.冬の長野地方の気候について考える。 ・冬の長野地方の気候について知っていることや聞いた情報等を出し合って考える。
・寒さに対する準備が必要なことに気づかせる。
 
長野オリンピックに行くにはどんな支度が必要だろう。
3.様々な情報から長野地方の2月頃の気候について予想する。 ・TVや日常の会話から情報を集めさせる。
・今年の冬は暖冬であるという長期の天気予報について取り上げなぜそのように予報することができるのか関心を持つ。
 
4.CD-ROMソフト
「理科年表」のデータから長野の天気や気温について考える。
・長野地方の12月から3月までの天気別日数のデータをグラフ化した物を提示する。
・地域別降水量のグラフを提示する。
「理科年表」
・提示用コンピュータ
・ビデオコンバータ
・大型TV

 
5.あらためて2月の長野の気温や天気の様子について考える。 ・暖冬だとすると天気の様子はどのように変わるか考えさせる。
気温の様子
天気
曇りや雪の日数
 
6.まとめる ・暖冬だとすると雪の日や曇りの日が減るかもしれないから,ある程度暖かな支度をしていけばよいのではないか。
・気温や天気の平均を使うと季節による天気の変化が予想できるのではないか。
・オリンピックと一緒に長野県地方の天気にも関心を持とう。  

6 今後の実践のために

(1) 利用場面の評価

 W君が「今年の冬は暖冬だからそんなに寒くないよ。」「そうなの。」「だってTVでそう言っていたんだ。」すかさず,「TVの天気予報をする人たちはどんなことから暖冬と言っているんだろうね。」と疑問を投げかける。”ひまわり”でわかるんじゃないかという意見もあったが何となくすっきりしない。そこで,グラフで示した。”天気の平均”ということを説明したあとで,「もし,今年の冬が暖冬だとすると,このグラフの変わるところがあるのだろうか。」ということを問題にしてみた。いろいろな意見が出たが,これだけでははっきりしないので他に資料が必要ということになった。このようなやり取りの中で子ども達はどのような資料を収集するかが重要なことになってくるということに気がついた。
 理科年表の資料は,机上版等の書籍では小学生の学習にはなじまない。しかし,CD−ROMによって活用したい資料をわかりやすい形で提示できたので,理科年表に掲載されているデータを活用し,平年の傾向を捉えることができたことは有効であった。

(2) コンピュータ利用の成果

 本単元で活用できるデータは
・最低気温の月別平均値・半旬別平均気温
・平均雲量 ・暖房,冷房デグリーデー
・日降水量の日数(1mm以上,10mm以上)等である。
 コンピュータを使って思いのままにデータを使いこなすには,日常からこのようなデータを活用していくことが重要である。今後は,このように処理しやすい形になっているデータを加工したり,データベース化して保存したりして,授業の目標に合わせて,活用したいと考える。


CEC HomePage平成9年度市販ソフト実践事例集III