1 「天下をねらった3人の武将」

(小学校 第6学年 社会科)
品川区立杜松小学校 鈴木茂雄

2 本時のねらいと題材設定の理由

 小学校の歴史教育では,人物の働きや文化遺産を中心に学習していくことが望まれている。
 「戦国時代」と呼ばれる時代は,テレビドラマなどでもよく取り上げられ,武将の名前を知っていたりその独創的な戦いぶりに興味をもっていたりする児童もいる。
 本単元では,天下統一を進めていった織田信長・豊臣秀吉・徳川家康の三人の武将に対して,基本的な歴史的な業績を理解させることを第一の目標としている。
 またその上で,その人物の立場になって考えたり,その人物に寄り添ったりして,一人一人がそれぞれの人物像を作り上げることをねらって,本題材を設定した。

3 利用ソフトの概要

(1) 利用ソフト

「歴史新聞記者『戦国時代』 (創育)

(2) 利用ソフトの概要

 このソフトは,織田信長・豊臣秀吉・徳川家康の3人の武将を取材しながら,新聞あるいは動画や音声を活用したマルチメディアレポートを作成できるように構成されている。
1) 「人物を選ぶ」…3人の武将のうちから一人を選ぶと年表が出てきて,そこから出来事や関連する人物を選ぶことができる。
2) 「できごとを選ぶ」…20の出来事の一覧あるいは年表から調べたい出来事を選ぶことができる。
 それぞれ関連する人物やエピソードなどがアイコンで選べるようになっていて,その人物や出来事を詳しく追求できるようになっている。動画や音声やイラストや地図などが豊富に取り入れられているので調べ活動ができる。
 また,選んだ情報をメモ帳に残すことにより,自分の新聞やマルチメディアレポートを作成することができる。

4 コンピュータ利用意図

(1) 利用場面

 まず,自分の追求したい人物や出来事について調べることができる。関連事項もアイコン一つで検索できるので,調べ学習に有効である。動画や絵などが豊富で親しみやすい。
 また,三人の武将や関連する人物にインタビューができ,出来事だけでなく児童のその人物に対する自分なりの人物像づくりに役立つ。
 そして,これらのことが比較的簡単に新聞やマルチメディアレポートとして作成でき,それを発表に生かすことができる。

(2) 利用環境

使用パソコン NEC PC-9821V12 3台 NEC PC-9821V16 1台
NEC PC-9821Cx 3台
プロジェクタ 1台

5 本時の展開

(1) 指導計画

1) 長篠の戦いを調べることを通して,織田信長の戦い方を知ると同時に,信長に興味・関心をもつ。
2) 織田信長の生涯や主な業績を調べ,天下統一を目指したことを理解する。
3) 信長の業績を発表し,自分なりの信長像をまとめる。 (本時)
4) 豊臣秀吉の生涯や主な業績を調べ,天下統一を成し遂げたことを理解すると同時に,自分なりの秀吉像をまとめる。
5) 徳川家康の生涯や主な業績を調べ,江戸幕府を開いたことを理解すると同時に,自分なりの家康像をまとめる。
6) 3人の武将を比べ,自分の好きな武将を発表することを通して,それぞれの人物についての考えをまとめる。

(2) 目標

・ 織田信長の業績を発表することを通して,信長についての理解を深める。
・ 織田信長について興味・関心をもって調べ,発表する。
・ 織田信長の思いや願いを想像したり気づいたりしながら,自分の信長像をまとめる。

(3) 展開

学習活動 活動への働きかけ 資 料
1 本時の学習問題と進め方を確認する。 ・本時の学習問題と進め方を確認する。  
信長の行ったことを発表し,信長はどんな人か考えよう。
2 自分たちの計画に従って、発表の準備をする。 ・信長の主な業績について分かりやすく発表できるように助言する。
・自分の言いたいこと・考えたことを分かりやすく説明するように具体的に助言をする。
・コンピュータを発表の道具として使っている児童には,コンピュータの必要な機能を助言する。
・「戦国時代」のソフト
・本
・ビデオ
・パンフレット
・掲示資料
・長篠の戦いを描いた屏風
・ワークシート
3 今までの学習を生かして信長の業績を発表し、自分の信長像をつくる。 ・その業績はなぜ行ったのか,どのようなねらいがあったのかなども発表させる
・信長について自分はどのような人だと思ったのかも発表の中に入れさせる。
・発表を聞いている児童には,信長の業績について新しいことがないか発見させたり,信長像について自分と同じところや違っているところに気付かせたりする
 
4 自分の信長像をまとめる。 ・友達の意見と比べ,自分の信長像を確認する。  

6 今後の実践のために

(1) 利用場面の評価

 3人の武将についての事前の実態調査を行った。
 それによると,織田信長・豊臣秀吉・徳川家康について「名前だけは聞いたことがある」児童はそれぞれ約50%・65%・100%であった。また,それぞれの人物に関する出来事まで知っている児童は約9%・22%・30%であった。しかし,その内容は「明智光秀に打たれた」ということや「信長の後を引きついだ」「江戸幕府を開いた」というのが大多数だった。3人の武将の主な業績について知っていると思われるのは約1割であった。
 今回の指導では,ワークシートをもとにして,理解させたい主な業績を詳しく学習していった。その内容には,参考書やコンピュータソフトを調べなければ分からない内容も含んでいた。児童は検索用のデータベースから目的の資料を探し,「戦国時代」のソフトや参考書などを見ながらワークシートの空欄を埋めていった。一枚のワークシートを完成するごとにその業績が理解できたとともに,その人物の新たな発見もあった。こうすることによって,織田信長の主な業績を理解できたのは無論のこと,その人物像に迫ることもできた。

(2) コンピュータ利用上の成果

 本実践では,資料検索と発表の手段,それに教師の教室の掲示資料作りにコンピュータを活用した。
 「戦国時代」のソフトには,調べたい内容が豊富に含まれているので,資料検索として活用する児童が多く,調べていくに連れて歴史的事象に対する理解が深まっていった。「詳しく勉強していくうちにだんだんと楽しくなってきた」などのように,映像や音声による解説により楽しく学習している様子も見られた。
 また,分かったことや自分なりの信長像について発表する場面では,本ソフトのマルチメディアレポートの機能を使って,比較的簡単に発表画面を作ったグループもいた。
 豊臣秀吉や徳川家康の学習でも,資料を検索したり必要な資料をプリンタで印刷したりして自分の作品作りに役立てていた。


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