1 からだのつくりとはたらき

(小学校 第6学年 理科)
神奈川県横浜市立東汲沢小学校 竹下 護
協力者 同校 黒木英晴

2 本時のねらいと題材設定の理由

 これまでに児童は,自分たちのからだや運動前後の変化について調べたり,メダカやうさぎなどの動物の発生や成長について調べたりしてきた。また,道徳や学級活動などを通して自他の生命を尊重しようとする態度が育ってきた。また,体育科の「病気の予防」で病原体や環境によって病気が起こることとその予防について学んでいる。
 そこで,この単元では,動物の体の内部の観察などを通して,呼吸,消化,排泄,循環,などの働きについて学習する。具体的には,ヒトと魚の呼吸の様子を調べたり,魚の解剖を通して消化・排泄のしくみを調べたり,血液の働きやからだを動かすしくみについて調べたりする。そして,動物は体内に酸素を取り入れ体外に二酸化炭素を出し,食べ物は口・胃・腸などを通る間に消化・吸収・排泄されることを理解させたい。また,観察や実験を通して,生命尊重の態度も育てていきたい。さらに,この単元は,音楽科の変声期における声の出し方や環境とのかかわりの学習へとつながっていく。
 本時では,血液のはたらきや血液を全身に送り出すしくみについて予想し,調べる場面だが,血液が肺から酸素を取り入れ全身に送り出し,不要になった二酸化炭素を体外に送り出していることや腸から養分を取り入れ,全身に運んでいることを知っていても実際にどのようにして運ばれているのかということは理解しにくい。そこでそれを補うためにコンピュータソフトの利用を行う。このことによって,血液の循環の様子が動画によって興味をもつことができ,そのはたらきについて理解しやすくなることを期待している。

3 利用ソフトの概要

(1) 利用ソフト

マルチメディア人体「ダ・ヴィンチの書」(NECインターチャンネル)

(2) 利用ソフトの概要

 このソフトは,人体の構造,しくみ,健康・病気をまとめた映像の辞典である。人体の画面や説明の言葉にたくさんリンクがはられ,様々な関心や興味にしたがって調べることができる。さらに臓器に関係した健康や病気についても調べることができる。教科書や図鑑よりインパクトが強いように感じられる。しかし,小学生にとっては解説が少し難しいのでやさしく分かりやすい説明が望まれる。

4 コンピュータ利用の意図

(1) 利用場面

 からだのつくりとはたらきの単元の中に,資料をもとに調べて理解する内容がある。その内容は,1)肺のつくり,2)魚の呼吸のようすやしくみ,3)消化のしくみ,4)人や他の動物の骨格や運動の仕方,である。これらの内容について教科書や図鑑などの図や模型を使って調べてきた。このソフトによって動く様子を動画によって理解を深めることができると思われる。

(2)利用環境

 NEC PC-9821 Cu13 1台

5 本時の展開(第三次 1〜2/3時)

(1) 単元の指導計画(14時間扱い)

第1次 呼吸のしくみを調べよう 3時間
・ヒトと魚の呼吸の様子を調べる。
・動物の呼吸のしくみを資料を使って調べ,ノートに記録する。
第2次 消化・呼吸について調べよう 5時間
・動物が体内に食物を取り入れて,どのようにして消化・吸収・排泄しているのか予想し,資料で調べる。
・魚の解剖計画を立てる
・魚を解剖し,消化・吸収,排泄のしくみを調べる。
第3次 血液のはたらきを調べよう 3時間
・血液のはたらきや,血液を全身に送り出すしくみについて予想し,資料を使って調べる。(本時)
・メダカを使って血液が全身にいきわたっていることを調べる。
第4次 骨や筋肉を調べよう
・ヒト,うさぎ,魚の骨を調べる。
・ヒトの手,うさぎの前足を比べ,骨と関節の様子を調べる。

(2) 目 標

・呼吸と血液の循環について進んで調べようとする。(関心・意欲・態度)
・吸う空気と吐く空気の違いから,呼吸と血液の循環について調べたことを関連づけて考えることができる。(科学的な思考)
・血液の流れる様子をコンピュータ画面で観察し,記録する事ができる。(観察・実験の技能・表現)
・血液は心臓のはたらきで体内を巡り,酸素・二酸化炭素などを運んでいることがわかる。(自然現象についての知識・理解)

(3) 展 開

学習活動 予想される児童の思いや願いと教師の支援 留意点・評価
1 課題を知る。   ・血液の流れと心臓のはたらきを関係づけて考えさせる。
血液はどのように循環しているのだろう。  
2 肺やえらでからだの中にとり入れられた酸素は、どのように全身に運ばれているのか考え、話し合う。 T:血液は何のはたらきで運ばれているのだろう。
C:心臓
C:心臓がドキドキして血液が送り出されている。
T:人の心臓のはたらきを調べよう。
C:図書室の本で調べよう。
C:保健室にも参考図書のコーナーがある。
C:理科室には,模型もある。
C:コンピュータでも調べられる。

3 コンピュータを使って調べる。 T:コンピュータで調べてみよう。
C:コンピュータだと心臓が実際に動いている。
C:血液の流れる様子がよく分かる。
C:制止画面やスローモーションもできて分かりやすい。
C:拡大して見ることもできる。
C:心臓の弁の動きがリアル
C:この画面から肺や血液についても調べられる。
C:心臓から太い血管が出て,枝分かれしてだんだん細くなって,網の目のように血液が全身にいきわたっている。
C:細い血管は集まってだんだん太くなり,心臓につながっている。
C:酸素の多い血液と二酸化炭素の多い血液があって,色分けされている。
・コンピュータの動画や静止画を活用して調べる。
・調べながら新しく興味をもったことについても簡単に調べる。
4 学習のまとめをする。 T:調べて分かったことを簡単な図をかいて学習カードにまとめよう。
C:肺やえらでからだの中にとり入れられた酸素は,血液によって全身に送られる。
C:心臓から出た太い血管は枝分かれしながらだんだん細くなり,網の目のように全身にいきわたっている。
C:細い血管はだんだん集まって太くなり,心臓につながっている。
C:心臓に集まった二酸化炭素を多く含んだ血液は肺に送られ,二酸化炭素を出し,酸素を取り入れて,酸素を多く含んだ血液となり心臓へともどる。
・肺や心臓のしくみやはたらきをもとに,血液のはたらきについて模式図などを書かせて,各自まとめる。
【評価】
[科学的な思考]
 吸う空気と吐く空気の違いから,呼吸と血液の循環について調べたことを関連づけて考え,自分なりに説明できたか。

(3)備 考〈参考画面〉

6 今後の実践のために

(1)利用場面の評価

 からだのつくりとはたらきについて調べるとき,実際に動く様子を観察しながら調べることは有効である。そのためにメダカやウサギなどを観察するわけだが,実際に観察する上で子供たちの理解を深めていくには,コンピュータの動画を利用することが有効である。何度も見ることができたり一人一人の興味・関心によって学習が広がったりすることが見られた。また人体の学習においても,教科書や模型,図鑑の図で調べて理解していくよりも効果的であった。

(2)コンピュータ利用上の成果

 動画で観察できたり,それを繰り返したり,静止させたり,スローモーションで観察できたりするので理解しやすかったようである。また,調べる中で生まれた新しい疑問(例えば,血液の循環,血液の種類と役割)にもその場で別のウインドウをクリックするだけで解決していける。子供たちが興味や関心をもったことに対してすぐに対応できることが一人一人の学習を大切にする点においてよかった。このことは子供たちの学習意欲が高まることにつながる。


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