1 アニメーションづくり −4コマ漫画のアイデア表現−

(小学校第6学年図工科)
大宮市立大宮南小学校 塚本 俊行

2 本時のねらいと題材設定の理由

 これまでに児童は,図工の時間や生活科の時間を通して自らの考えを絵の具やクレヨンなどを用いて表現してきている。これらの教材教具を用いて表現しようとしたとき,他の児童にないアイデアが浮かんできたとしても表現技術が伴わず,思い通りの作品が仕上がらないことが多い。そこで,本題材では,コンピュータの利用により,自分自身のアイディアを思う存分表現出来るように支援しながらアニメーションづくりを行うことにした。
 高学年の児童ともなると,4コマ漫画作成へのアイディア等にもストーリー性だけなく大人以上の工夫がなされていたりする。本時では,アイディア等も含めて作品を評価したいと考えている。

3 利用ソフトの概要

(1)利用ソフト

絵本ライタープロ (富士通)

(2)利用ソフトの概要

 絵本ライタープロは,マルチメディア対応のお絵かきソフトである。操作は,マウスで画面上のツールバーをクリックし提示されたメニュー選択することが中心になっている。移動・拡大などの機能も用意されており,作成した文字や絵画などについても簡単に利用できる。また,児童が作成するアニメーションに登場する作品や人物については,アイコン作成機能を使うことができる。多くの児童は,アイコン機能を使い場面ごとにアイコンを1部修正しながら作品を完成させていくことが可能になる。
1) アニメーション機能
 ツールバーメニューの1つに組み込まれており,マウスで操作することが出来る。動きの速さやアイコンの大きさ等の変化にも対応できる機能を備えている。また同時に3つまでアニメーションを操作でき,動的な4コマ漫画が作成できる。
2) 絵本作成機能
 4コマ漫画であるため実際に使用するのは4ページとなるが,必要に応じて増やすことや減らすことができるようになっている。

4 コンピューター利用の意図

(1)利用場面

 本校にはコンピュータを用いた学習指導を専門に行う専任教員が1名配置されている。各学年の全てのクラスを対象とした学習指導は年間を通じて行っている。指導教科は,学校課題で実施する教科を1・2学期に実施し,3学期以降は学年との対応で内容を決定している。当初実施したのは国語・図工・音楽である。本稿で取り上げた教科(図工)は2学期に実施したものである。
1) TTによる教科指導
 コンピュータの利用方法やサーバ機への保存といったハード面での管理は主に専任教員があたることになっている。担任及び教科専任教員の役割は,対象児童の学習指導と支援や児童の管理などを行うことになっている。また,場合によっては効果的な指導が行えるように,TT相互の役割を変え環境を変化させ,個に応じた指導や個性に対応できる体制をとっている。
2)背景画の作成
 4コマ漫画作成へのアイディアがまとまった児童には,画用紙等を利用させ,目的に合った背景画を作成させる。作成意図は,図工のセンスを最大限に生かすためである。出来上がった背景画は,イメージスキャナを用いて画像取り込みを行いTIF形式で保存する。場合に応じて背景画はコンピュータでの処理等も行い,目的とする背景画に修正していく。修正を行えるようにした状況には,絵画に対して十分な表現技能を持ち合わせない児童への配慮と作成過程でのイメージ変化に対応するためである。

(2)利用環境

1) 使用パソコン 富士通 15台
2) 周辺機器
大型モニタ(35型ディスプレイ) イメージスキャナ1台
カラープリンタ 4台 室内LAN サーバ1台(2G)
CD−ROMライタ 1台

5 本時の展開

(1)指導計画(7時間扱い) 本時 3/7

単元名 「同じものは,どれとどれ」
第1時 4コマ漫画のストーリーを作ろう。
・自分だけの背景画を工夫して作ろう。
第2時 自分だけのスタンプを作成しよう。
第3時 いろいろな機能を生かして楽しく表現しよう。
第4時 4コマの全体構成考えて色や背景画のバランスを考えよう。
第5時 絵本作成ツールで4コマをつなげる。
第6時 LAN上で作品鑑賞し意見交換する。
第7時 プリントアウトし教室に掲示する。

(2)目標

・4コマ漫画の構成を考え想像しながら楽しく表現する。 (関心・意欲・態度)
・自分のアイディアに合った表現方法採り入れる。 (創造的な技能)
・自分や友達の表現したもののよさに気付き,楽しさを感じる。(鑑賞の技能)

(3)展開

学 習 活 動 活動への働きかけ 準備・資料
1.学習課題をつかむ
・自分だけの4コマ漫画を描く。

○実在する形にとらわれずに,いろいろな形や色を考えさせるようにする。
・背景画の入ったフロッピーディスク
・個別のフロッピ−ディスク
2.アニメーションとの組み合わせをする。
・動かすためのパターンやアイコンを登場させ全体の構想を練る。
○機能を十分に扱えない児童にはメニュ−の内容を伝え,機能を生かせるように支援する。
○形のおもしろさや色の美しさを考えながら作成させる。
・大型モニタ−
・ここでは操作手順やメニュ−画面の位置などについての説明に用いる。
3.声や音を想像し録音する。
・4コマ漫画に応じてバックミュージックや声を挿入する。
○いろいろな声や音を出させ,聞き合い楽しい雰囲気の中で録音させる。 ・録音マイク
・CDラジカセ
・自分の思いが込められた音や声が出せることで作品を効果的に表現するために用いる。
4.軌跡を描き保存する。 ○サーバ機の状況が不安定な時にはフロッピィディスクに保存させる。
5.鑑賞する。 ○それぞれの作品のよさと1人1人の努力を賞賛する。

(4)備考

男子18名 女子15名 合計33名

6 今後の実践のために

(1)利用場面の評価

 いろいろな資料が蓄積されコンピュータが利用できるようになった段階では,子供の特性を捉えた学習指導が実現しやすくなる。これまでの学習場面では教師が適当な学習資料及び学習環境を提供したり指示したりしていたが,次第に子供の関心や必要性が優先されるようになり,学習における全ての側面で子供自身の選択権が尊重される。つまりコンピュータの利用により,自己教育力を重視した学習場面を実現することが可能になると言える。また,授業設計を行う上でも1人ひとりを大切にした設計が求められる。今回実施した授業実践から以下の点でも評価を検討してみた。
1) 個性診断
・子供が求める絵画作成の順序。
 子供の学習状況から全体構成・部分構成念頭に入れた作成手順での違いが認められる。
2) 学習意欲
・作品の完成度を高める関心・意欲・態度。
 コンピュータを用いた授業であっても明らかに作業・修正・配色時間等で意欲が違っている。
3) 学習スタイル
・思考を優先するタイプと作業を優先するタイプ
 明らかにイメージして完全に構成が出来てから取り組む子供と作品を作る作業
 を行いながら試行錯誤を繰り返す者との違いが認められる。
4) 不安
・操作への不安と学習内容への不安
 4つの項目での評価は,今後個々の子供に合った授業設計をする上でも必要となる。

(2)コンピュータ利用の成果

 コンピュータを学習に用いることは,これまでの図工という教科に於いては新たな可能性を求める上でも必要であると考えられる。特に本実践では,豊かな子供の発想をそのまま思い通りに近い表現ができるといった側面で効果が認められる。また,基本ソフトの操作に慣れた段階では,使用可能な機能を十分に活用しようとする働きがあり,完成度を高めようとする心的作用が認められた。
 また,子供たちが作成している状況からは,思考の順序の違いや画面構成の方法などにも個性が認められた。情報教育の視点からは,自分の目的に向かって情報を選択し加工していく技能の向上が著しく認められた。


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