1 「植物のなかま」

(中学校 第1学年 理科)
埼玉県大宮市立八幡中学校 金井 清

2 本時のねらいと題材設定の理由

 小学校でも植物の観察を行ってきたが,栽培植物など,人工的なものが多かった。初めての中学校の理科学習で,身近な自然観察を行うことは,日常生活の中で科学的な態度を持つことの入り口になると考える。自然の中の植物を科学的に見ることによって,特徴を見つけ分類していけるという考え方の良さや,実際の植物を調べることで五感を発揮する良さを体感させていきたい。

3 利用ソフトの概要

(1) 利用ソフト

「草花の観察 すみれ」(東京書籍)

(2) 利用ソフトの概要

 茎,葉,花期・生育地,花,果実の条件の絵を選択することによって,絞り込み検索のできるソフトである。植物の画像は,植物の特徴が明確でわかりやすい。ユーティリティが付属していて,データの追加,修正が行える。

4 コンピュータ利用の意図

(1) 利用場面

 植物を同定するには,絞り込みと分岐木が考えやすい。絞り込みの方法では,生徒が考えてもカードとコンピュータがあげられる。絞り込みという考え方の良さが体感できるためには,小規模な検索ソフトの利用が有効であると考えた。

(2) 利用環境

使用パソコン
NEC98noteLavie(PC9821Na12)12台
MS-DOSver.6.2

5 本時の展開(5時間扱い) 4/5本時

(1) 指導計画

1) 被子植物のなかま・・・・・・・・・・・・・・・1時間
2) 種子植物のなかま・・・・・・・・・・・・・・・1時間
3) 花のさかない植物・・・・・・・・・・・・・・・1時間
4) 植物の検索・・・・・・・・・・・・・・・・・・1時間(本時)
5) 学習の整理・・・・・・・・・・・・・・・・・・1時間

(2) 目標

 植物検索ソフトを通して,植物の特徴を調べることによって,植物を同定できることを理解し,植物の特徴を指摘できるようにする。

(3) 展開

学 習 活 動 活動への働きかけ 準備・資料
1 学習課題をつかむ
・ 用意した植物の名前を調べる方法を考える。
○ 植物の特徴によって,どの植物が分かるのか考えさせる。
・ コンピュータに植物の特徴を入力することで,特徴の条件にあった植物を絞り込めることを知らせる。
学校のまわりで採取した植物
・ハルジオン
・ジシバリ
・セイタカアワダチソウ
・ヒメジョオン

コンピュータを使って,植物の特徴から,植物の名前を調べよう。 ノートパソコン12台
2 課題解決の取り組み
・ ハルジオンの条件を入力して検索し,条件を入力するごとに該当する植物が絞り込まれていく様子を理解する。
・ 数種類の植物の名前を検索してみる。
・ ハルジオンの条件を例として入力して見せ,絞り込みを理解させる。
・ 条件無しでは,150種類ほど該当する植物が,条件を入れると該当する植物が減ってくることを見せる。
ハルジオンの条件一覧
3 学習のまとめ
・ 調べた植物の特徴をノートにまとめる。
・花のつくり、葉のつきかた、茎のつくりが植物の特徴(条件)になることをまとめる。  

6 今後の実践のために

(1) 利用場面の評価

 植物の条件を決めることによって,該当する植物が絞り込まれていくことは,前時の学習で扱っていた。しかし,実際にコンピュータを使って150種類もあった植物が絞り込まれていくことを見て,多くの生徒からため息が出た。検索の方法とコンピュータの良さが実感を伴って理解されたと思われる。
 検索の為の植物の条件は,検索を考えた人によって少しずつ異なるようだが,今回のソフトでの葉の特徴である「波状」と「フリル状」の違いは,生徒にとって区別が難しかったようである。ここでは,植物を同定することよりも,植物の特徴によって検索ができることを理解することがねらいであるから,あまり,条件を多くして絞り込まなくても良いであろう。表示される画像は,写真ではなくて,手書きの画像であるが,かえって,植物の特徴が明確に表現されていて,学習に好都合であった。

(2) 今後の展望

 このソフトでは,新しい画像データを利用する方法も用意されているので,実際に学校のまわりで見られる植物データにできると良かっただろう。学校のまわりに普通に見られる植物で,学習に利用しやすい植物となるとそれほど多くの植物は無い。専門家が植物の同定をするのに利用するようなソフトではなくて,検索の理解のしやすさを考えたソフト,つまり,学習者が学習の為に利用しやすい検索ソフトがあっても良いであろう。植物の特徴がはっきり出ている植物写真を撮ることは,けっこう難しい。これは,撮影技術の問題ではなくて,植物の特徴をとらえられるかどうかという問題である。コンピュータの最新の技術を追いかけたコンピュータソフトもあるが,教育ソフトに関しては,学習という観点から見たソフトを追求してほしいものである。


CEC HomePage平成9年度市販ソフト実践事例集III