1 「生命」

(中学校 第2学年 選択理科)
埼玉県大宮市立八幡中学校 金井 清

2 本時のねらいと題材設定の理由

 生命の誕生は,神秘的であり,だれでも興味をもてる内容だろう。調べ学習に慣れてきた中学2年生にとっては,生物や地球への科学的好奇心をもって,探索できる内容である。科学の楽しさを満喫できる内容として本時の題材を設定した。

3 利用ソフトの概要

(1)利用ソフト

「生命 40億年はるかな旅」(NECインターチャネル)

(2) 利用ソフトの概要

 生命の誕生,進化について,最新の研究成果を基にした情報が仮想博物館の中で提示される。画面は,幻想的な配色と構図で,「NHKスペシャル生命・40億年はるかな旅」で使われた映像も使われている。仮想博物館の中は,RPGゲームのように動き回ることができ,!,?をクリックすることによって,説明やムービーが表示される。また,メニューから,見たい内容を選択・検索して提示したりすることもできる。

4 コンピュータ利用の意図

(1) 利用場面

 科学の本を読むのは楽しいものである。しかし,科学の説明は,言葉だけでは難しいものがある。コンピュータの利用では,言葉だけでなく,精緻な画像やムービーの説明で理解しやすくなる。また,幻想的な画面の中から,発見的に科学的な内容が提示される構成をもつこのようなソフトを利用することによって,新たに科学への興味・関心をもたせることができるのではないかと考えた。

(2) 利用環境

1) 使用パソコン NEC98noteLavie(PC9821Na12)12台,Windows95
2) 明るく,静かな教室環境

5 本時の展開(3時間扱い) 1/3本時

(1) 指導計画

1) 第1話「海からの創世」,第2話「進化の不思議な大爆発」,第3話「魚たちの上陸作戦」,第4話「花に追われた恐竜」・・・・1時間(本時)
2) 第5話「大空への挑戦者」,第6話「奇跡のシステム”性”」,第7話「昆虫たちの情報戦略」・・・・1時間
3) 第8話「ヒトがサルと別れた日」,第9話「ヒトは何処へいくのか」,第10話「地球と共に歩んで」・・・・1時間

(2) 目標

 マルチメディアの科学ソフトを通して,科学のおもしろさに気付くとともに,調べていこうとする意欲を育てる。

(3) 展開

学 習 活 動 活動への働きかけ 準備・資料
1 学習課題をつかむ
・ 生命ビジュアル年表を見て,生命の大きな流れをつかむ。
○ 生命誕生のドラマを調べる楽しさを知らせる。
・ 生命ビジュアル年表から人間の時間に比べ,はるかに大きな時間の流れがある。
・ マルチメディア教材は,読書と違った楽しさがある。
生命ビジュアル年表
ノートパソコン12台
マルチメディア教材を使って,生命誕生のドラマをよみとろう。
2 課題解決に取り組む
・ ソフト利用の概要を知る。
・ 「生命40億年はるかな旅」 第1巻をセットして,読書するがごとく操作していく。
・ RPGのように仮想博物館の中を歩き回り,!,?のクリックで何かが見つかること。メニューから選択と検索ができることを知らせる。
・ 静かに,操作に没頭できるように指示する。
3 学習のまとめ
・ 感想を発表し,情報交換を行い,次回への意欲をもつ。
○ マルチメディア教材の楽しさを確認し,利用の仕方によっては,科学の本の読書と同様の良さがあることをつかませる。

6 今後の実践のために

(1) 利用場面の評価

 「なんだろう,これ」「あっ,そうか」など,いわゆる,調べる為のソフトとは違った感想が漏れた。調べる課題があって,それを調べるためにこのソフトを利用することも可能ではあるだろう。しかし,今回のように,科学の本を読むようなつもりで,マルチメディアに浸るようにして利用することは,マルチメディアによって初めて可能になったマルチメディア科学散策と言えるだろう。
 TVゲームに馴染んでいる生徒が多く,せっかちに画面をクリックする生徒が見られた。ソフトの画面や音響は,TVゲームに比べ,幻想的であり,心情面への影響が強いだろうと思われた。ノートパソコンのバッテリーで50分の利用が難しく,電源のとれる部屋に限定されてしまったが,もっと明るく,静かな部屋で,ゆったりした気分でマルチメディア科学散策を進めたかった。

(2) 今後の展望

 「まんがでわかる○○」という本があるが,今回のソフトのようにマルチメディアを使って,まんがとは違った感動と興味・関心を育てながら,理解を進めていくという方法が生まれてきた。このような心情面を重視した学習では,部屋の明るさ,机の形,壁などの装飾など,環境の設定も重要になってきている。コンピュータのモニターも改良されてきて,従来のような特別な照明装置でなくても良く見えるようになってきている。大型モニターなど,画面の大きさによって,心情面への影響が変わることがこれまでの道徳の授業研究から得られている。マルチメディア教材の利用では,実行速度や容量の問題から,どうしても画面が小さくなりがちだが,さらに大きく精緻な画面になるように期待したい。
 最近の映画では,コンピュータを利用した映像を用いた感動的な映画も見られるようになった。しかし,同じ内容の映画でもワクワクしながら観られるものと退屈なものがあるのは不思議である。マルチメディア教材でも,いかにして,心情面をゆさぶるストーリー性を持たせるかが大切になるだろう。リモコンチャンネルの普及によって,子供はいいとこだけをつまむようにして観るようになったといわれるが,メディアの進歩が情報選択の為だけの便利な技術としてだけでなく,本当の科学の感動を伝えるための技術として使われたいのである。今回のような科学散策のできるマルチメディア教材の利用が科学の感動を生み,科学を夢見る生徒が育つことを期待したい。


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