理科教育とインターネット
筑波大学附属小学校
理科は,自然を対象にした教育である。実際に自然の生き物に触れ,現象を観察することが大切になる。しかし,現実には,それだけでは止まらないこともでてくる。
例えば,理科の柱になる「命の大切さ」を学ぶとき,昆虫や小動物の飼育をする中で,その思いを育てていく。その時,「命を大切」にするためには,適切な情報が必要になってくる。そのために,本やインターネットといった情報を得る道具が必要になってくるのである。
今回,もっと直接的に,「人の命」を考える学習を行った。身体的な機能や心からみた「命」から,命を維持するための巧みさ,強さを学ぶ。そして,自然や社会問題からみた「命」から,命の弱さ,小ささを学ぶ。そうした「人の命」の両面を学ぶことで,たくましく,そして尊大にならない生き方をしようとする心を育てたいという願いを持った活動である。
この活動では,実際に観察から得られる情報は少ない。インターネットの利用が,大きな役割を果たした。この活動では,インターネットの果たす役割は,大きく分けて2つあり,情報を得るための役割と,表現するための役割である。
まず,情報を得るための役割として,広範囲の多様な情報を取得できるということがある。広い空間,つまり空でも海でも土の中でも,人の体の中さえも擬似的に行き,その様子をみることができるし,科学館や博物館の情報も取得することができる。また,教室にいる人以外の考えに触れることもできる。それにより,より多様な自然と人,人と人の関わりをみつけだすことができた。
特に,WNN(World Nature Network)http://www.wnn.or.jp/menu.htmlには,自然,環境,社会,伝統メニューがあり,多くの情報を得ることができる。
しかし,インターネットからの情報取得は,便利なことばかりではなく,危険性を秘めていることも忘れることはできない。子どもたちにとって,有害な情報,考えが入ることもある。自分にとって有効,有益な情報であるか,情報選択する能力を育てる必要がある。
そのためには,クラス全体で考え,話し合う場も必要になってくる。
次に,表現の役割として,ホームページ作りがある。自分たちが考えた「命」についての思いをホームページにまとめ,公表する。本人たちの名前等は,安全のため公表しないが,そのホームページに対する意見は,得ることができる。また自分たちで,そのホームページを検索し,みんなで見ながら議論することもできる。
こうした活動を通して,自分たちの活動を振り返り,次の活動へ生かすことができた。
インターネットの活用は,自然に直接触れなくても体験したつもりになってしまうので,本質的なものを見落としてしまう危険があると,その活用に疑問を投げかける人も多い。
しかし,その危険性を十分に認識しながら活用していけば,大変有効な情報処理能力を育成していくことができると考えている。