ビデオクリップを使った体育学習

大津市立平野小学校 

 

 本校では,平成7年度より,小学校におけるインターネットの利用について研究をすすめ,情報収集や情報発信系などの授業を数多く実践してきた。動画の撮影や編集も,技術的に容易になり,文字や静止画を越えたコンテンツとして学習に利用できるようになってきた。体育学習で,コンピュータ(インターネット)を利用することは少なかったが,動画を利用することで,自分の運動の姿を確認できる有効な手だてになるのではないかと考えた。

 今回の実践では,自分の運動を振り返る自己評価活動の一つとしてビデオクリップを使った体育学習を行った。また,ビデオクリップによるデジタル体育図鑑の制作にも試みた。

 体育学習では,自分の運動を振り返り,うまくできていないところを改善しようと意欲を持って活動できることが大切である。そのようなときに,ビデオに撮影し,それを見て自己評価することが多かったが,機材的な面から40人の児童が見るには,あまり効果的な学習活動とは言えない。しかし,ビデオクリップとしてネットに組み込むことで,一度に多くの児童が,自分自身の運動について容易に繰り返し確認することができる。また,見本となるような運動を同時に見ることも可能で,具体的に改善点が見いだせる利点がある。積み重ね取り込むことで,自分自身の上達具合を残していくことも可能であり,児童の学習意欲が高まるものと予想できる。

 学習単元としては,器械運動や体操領域など体育学習全般について行うことができるが,今回は6年走り幅跳びの学習での利用に取り組んだ。

 体育の学習では,自主・自発的な学習を押し進め,運動の楽しさにふれさせながら,運動への関わり方(学び方)を身につけさせることが必要であると言われている。自らの運動の課題を設定し,それを解決する「めあて学習」や「スパイラル学習」といった学習法も定着しつつあるが,取り組むべき課題が児童の実態にあっていない。また,多様化した課題への教師の指導のあり方など,いくつかの問題点もあげられている。

 特に,「課題設定」については,自分の運動技量に合っていない場合が多く,学習内容が曖昧になりがちである。効果的な「課題設定」をするには,まず,自分自身の運動の姿を確認できることが重要である。その手段として,今回の実践では,ビデオクリップを利用した。今まで,教師や友達からの指摘により自分の運動の姿を思い描いていた児童は,ビデオクリップを使用することで,より具体的で明確な課題を設定することができた。

 また,毎時間,児童の動きを撮影しクリップ化したことで,自分の運動についての足跡を残せたばかりでなく,次の時間への課題も新しく設定でき,児童の意欲の継続が見られた。ただ,幅跳び運動のような各個人の運動能力・運動基盤が大きく左右し,運動の流れが速い競技においては,自分自身の課題を理解しつつも,それを活かすだけの体の統制・制御ができない部分があり,発達段階と運動領域・運動の特性をさらに検討して,より効果的なビデオクリップの利用になるようにしていきたい。