個が生き,共に生きるたくましい生徒の育成

                      つくば市立手代木中学校

 

 1学年では,環境教育を進める過程で筑波大の環境グループ「エコレンジャー」との情報交換を行い,授業の打ち合わせから授業の内容・環境保全に関する情報交換をする。

 横断的・総合的な学習や生徒の興味関心等に基づく学習などを通して,学習指導法の改善を推進し,自ら課題を見つけ,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力を育てる。

 総合的な学習の内容としては,国際理解・情報・環境・福祉・健康などがあげられるが,本校では,国際理解・環境・福祉に重点を置いた。昨年度,今年度とも1学年が環境,2学年が国際理解,3学年が福祉の学習を進めている。学年が進むにつれ環境−国際理解−福祉と系統的に課題に取り組んでいる。

 このようなサイクルにしたのは,1学年で,自分たちの身の回りの地域の環境に関心 興味を持ち環境に関する課題に取り組み身近な地域を知り,2学年ではさらに視野を広げ,世界へ目を向け,国際社会の中の日本について学習する事により,お互いの立場を理解し,尊重できる能力を養い,3学年では1,2学年での学習をもとに,人と人との関わりの中で,奉仕の精神や,将来の職業生活へのつながりなど,人間としての陶冶を視野に入れて学習を系統的に展開したいと考えたからである。

テーマにそったねらい(どのような生徒像を目指すのか)を明確にすると共に,教科,道徳,特別活動の関連を検討し,教科・領域関連図を作成し学習に取り組むため,学びを(自ら獲得していく学習)を習得し,課題解決能力,自己学習力を身につけ,実践していける力が養われであろうし,また,自らを律しつつ,他人と協議し他人を思いやる心や感動する心など,豊かな人間性が育成されると考える。そのことにより,「共生」を根底に持ち,21世紀を力強く生き抜く生徒−「個が生き,共に生きるたくましい生徒」の育成が図られるであろう。各学年により,環境,国際理解,福祉とそれぞれに中心になる学習内容は違っても,学習を進めていく過程ではどの学年も総合的な学習が目指している国際理解・情報・環境・福祉・健康などすべての内容と重なり合う。特に情報教育はすべての学習内容の基礎となるものであると考える。

 そのためには,校内の情報教育環境の整備が必須であり,本校はつくば市の新しい試みであるNTTボランティアグループ(ネットピング隊)を中心として,他のボラン ティアとも協力をして情報教育環境を整備するという事業のモデル校として,現在整備が進みつつある。(現在は校内LAN構築,イントラネットの整備を進めている。)

 今年度の生徒会のリーダ講習会(生徒対象)では,コンピュータの講習を行い,その生徒たちが中心となり他の生徒へ伝達し生徒同士でコンピュータの活用を進めていく。

 環境の現状を認識し,問題を把握しながらよりよい環境づくりのために環境の保全に配慮して生活していこうとする実践的な課題解決能力を育成する。

 学習に入る前に,環境に関する意識調査をしたところ,ゴミ問題,水質汚染,大気の汚染,自然に関する環境破壊などに興味・関心が高かった。そこで,もっと身近なことに目を向け自分たちの課題づくりの手がかりとするために「野外観察体験」を実施した。この活動で生徒は,道端の植物の種類に注目したり,公園のゴミ箱の数に関心を持ったりと,環境に対する新たな疑問を見いだす機会となった。

 次には体験活動であるが,生徒自身が「学び方」を身につける上で効果的であった。より効果的に進めるために,教師がネットワークをフルに活用して,体験活動先を開拓し,生徒が自分の課題に応じて選択できるように仕組むだけの余裕があるとよい。同様に,地域の人材を有効に生かすため,環境保護活動をしているボランティア団体やナチュラリストなどの人材を発掘し,人材リストを整備しておくと,生徒が自分で資料を得る機会となるのではないか。

 国際理解学習を始めるに当たって,テーマを全員で話し合うと共に,生徒の実行委員会を組織した。テーマ「開け,世界のとびら」を決定し,世界に目を向けるため,1泊2日の社会体験学習に東京へ出かけることにした。まず,社会科でブラジルに関する学習を行い,さらに,ブラジル大学教授であり保護者でもある方を招いて,ブラジルに関する講演会を開催した。その後に,130名の生徒は男女混合の6名から8名のグループをつくり,班ごとの活動目標を話し合って,その目標を達成するための見学地探しを開始した。東京を中心とした見学・体験箇所は大使館,JICA(国際協力事団),ユニセフ,博物館,美術館,寺院などであったが,それぞれの目標「日本文化を見す」「世界のボランティア活動を知る」などに沿って観たり聞いたり体験したりこれまでの学習で,疑問に思ったことを明らかにしようという目を養い,活発にグループ活動をすることができた。2日目は3コースに分かれ,A.歌舞伎などの日本の伝統に触れる,B.横浜で外国との接点を探る,C.JICAでの体験活動をそれぞれ展開した。

 その活動から新しい目標を見つけ,調べ学習や調査活動を行うことになった。実行委員会で話し合って5つのテーマ(学習活動案の資料参照)を設定し,新しい分科会グループづくりをすることになった。各分科会では5人程度のグループをつくり,その課題解決に向けてどの方向から学習を進めるかを考え,それぞれの下部テーマを決めて調査活動を開始した。調査方法はインターネット活用(実行委員が指導者として活躍),つくば市立中央図書館からの団体貸し出しの利用(600冊まで6ヶ月間),外国人へのインタビュー,自分たちの手による創作,グループ討論などである。調査の間に討論会を数回行い,いろいろな考え方があることを知って,さらに自分たちの活動を深めていった。その活動成果をもとに,世界各地で活動している人と,いろいろなテーマについて自由討論をしたいと考え,外国人や活動家を招いてグループ国際集会を開くことにした。

事前学習である「ブラジル講演会」について,体験学習に役立ったと答えた生徒は約4分の1であり,それらの生徒の大半は大使館やボランティア団体見学者であった。外国に目を向けて自分の課題を見つける動機づけとなったと思われる。一方,役立たなかったと答えた生徒もいて,導入として選択する内容や展開方法をもっと工夫する必要があったようである。