インターネットを使ったメディアコンテンツ会議室の実践

神奈川大学附属中学校 

 

 生徒たちにとってパソコンやインターネットが身近な存在となった今,うちに向けられた目が外に大きくシフトしてきていることは,教師の目から見ても明らかである。インターネットを活用することによって,校内の限られた中での学習活動から,全国,世界へと活動の場が広がってきた。小中高校生を対象とした電子会議室「メディアキッズ」では,インターネット上に全国の子どもたちが集まる会議室を設置し,様々な研究活動,実践を行っている。このような電子会議室を使った実践は,インターネットを学びの道具として活用していく上で大きな魅力を持っている。

 本校では,1989年よりコンピュータ教室を設置し,技術・家庭科「情報基礎」を中心に,様々な教科,課外活動において情報教育を実践してきた。実践を行う中で,情報教育をコンピュータ,インターネットを学ぶための学習として位置付けるのではなく,最終的には「ものづくり」にこだわるべきだと考えるにいたった。生徒自身が,コンピュータ,インターネットを使って情報を集め,選択し,発信することにより,自己表現,自己実現のための一つの手段として位置づけ,教育活動に取り入れていきたいと考えたからだ。

 今回の実践は,インターネット上に生徒と教員が同じ会議室を使って出会い交流しながら,質問やアドバイスのやり取りを行う中でマルチメディア作品を完成するというものである。優れた作品を作ることも目的の一つではあるが,インターネットをバーチャルな世界としてとらえず,アクセスした先には同じ年代の同じ目標を持った人間がいることを理解させ,ともに悩み,喜び,そして成長していくことがこの実践の最も重要なねらいである。

 1996年にインターネット専用回線(64Kbps)を導入し,DNSWebFirstClass,ファイルサーバを設置するとともにすべての生徒用コンピュータからインターネットが利用できるようになり,授業,課外活動での活用を始めた。1997年に学校全館の校内LANを構築し,専用回線を光ファイバーに切り替え1.5Mbpsの速度が得られる環境となった。1998年からATM回線に切り替え,回線速度が3Mbpsとなりインフラの整備がほぼ完成した。回線速度が上がったことにより,生徒40人を対象とした授業においても快適なネットワーク利用ができるようになった。今年度4月にコンピュータ教室を改装し生徒用コンピュータ,サーバ機器の入れ替えを行った。

個人Webページの制作,グループ研究Web制作

 本校の情報教育の具体的な内容としては,情報リテラシーの学習と,インターネットを活用した電子会議室の活動がある。電子会議室の活動には,メディアキッズやインターネット上で海外校との交流を行う「継続的国際交流の実践」,携帯端末を使った「モバイル活用実践研究」を行っている。

 最初のステップとして,WWWや電子メールを活用することによって,自分が欲する情報を探すとともに,ネット上で他者とのコミュニケーションを確立することである。そして,得た情報を正しく処理することによって知識を身につけることである。二つ目のステップとして,自分の持っているもの,学習した成果を具体的に表現することである。例えば,HTMLエディターを使えば,ワープロ感覚でWebページを制作することができる。画像処理ソフトを使えばWebページで使用するアイコンやロゴを制作することもできる。Webページをサーバにアップすることによって,校内ネットワーク,WWWに公開でき,他の生徒たちや世界中の人々に観てもらえることになる。3つ目のステップとして,ATTバーチャルクラスルーム,ThinkQuestのような国際Webページコンテストやメディアコンテンツコンテストに参加することによって,これまで出会ったこともない人々とコミュニケーションを確立することができ,世界中の人々から評価を受けることができる。

教材WebページコンテストThinkQuest@JAPANの参加者募集のアナウンスを行い,全国の中学生,高校生から参加に関する質問やチーム編成の話し合いが行われた。また,研究内容に関する質問などが教師を中心とした大人へ多数寄せられ,具体的な活動が始まった。

ThinkQuest@JAPANhttp://www.thinkquest.gr.jp/)とは,2,3名の中・高校生が一つのチームを組み,半年から1年かけて他の生徒が学習に利用できるWeb作品を制作するというものである。異なる学校の生徒同士がチームを組み,協力しながら作品を制作する事が奨励されており,作品制作は全て生徒自身が行う。各チームには1-3名までコーチと呼ばれる大人(多くの場合教師)が制作上の指導役・相談役として付き,作品のテーマによって「科学・数学」,「芸術・文学」,「社会科学」,「スポーツ・保健」,「学際(複数の学問分野にまたがるもの)」の5つの部門に応募する。