総合的な学習へのインターネットの活用

中辺路町立近野中学校

 

 本校は,和歌山県南部に位置する人口約850人の山里にあり,全校生徒数は17人(平成11年度)という“へき地校”である。また,この地域では平安時代以降,熊野詣での宿場町として栄え,教科書に登場する多くの偉人や文学者が数多く訪れた歴史を持っている。折しも,平成11年度には南紀熊野体験博が開かれ日本全国から多くの人々が訪れた。このような背景の中で,本校の特色である“ふるさと学習”をコンピュータの活用でさらに発展させ,生徒にふるさとの素晴らしさを再認識させたいと考えた。さらに,インターネットを通じ,多くの人々と交流を深めることが出来れば,少しでもへき地のハンディを克服できるのではないかとも考え実践を企画したものである。

 本校に現在のコンピュータが設置されたのが平成11年730日。本研究の目的の一つであるホームページの作成期限120日までのわずかな期間の中で,不安ばかりの取り組みであったが,コンピュータが設置されたその日から,夏休みのクラブ活動の前後を使っての生徒の自主的なコンピュータ室通いが始まり,2学期の初めには,起動や終了はもちろんワープロを使った文字入力まで,全ての生徒がマスターしていた。このような状況を受け,2学期には,生徒のコンピュータ操作能力の向上を目指す取り組みが行われた。

 基本的には,技術家庭科の時間(3年生においては情報基礎),学活の時間,総合的な学習の時間の一部を使って実施した。 熊野学とは,熊野地方の歴史や文化は言うに及ばず,自然や言葉なども含めて熊野地方のこと全てを対象にしている学問である。本校では,校区を通る熊野古道に着目し,古道に点在する王子の学習を中心に,ふるさとの良さを見直す取り組みを本年より総合的な学習の柱として位置づけ実践した。

 古道が成立した大きな要因となった熊野信仰についての学習や,京都から熊野へ“蟻の熊野詣”と言われたほど多くの人々が歩いた時代的な背景。さらに古道に点在する各王子の学習を京都から熊野本宮まで,順に自作のビデオなども用いて学習した。さらに,現地を訪ねての学習なども企画し実施した。

 夏休みの課題として,「私の推薦する近野」の課題を全員に出した。南紀熊野体験博で近野を訪れている人に,近野の良さを知ってもらうという視点で生徒一人一人が考え各自が考えた場所について,自分の推薦する場所の絵を描くこと,俳句を作ること,推薦文を書くことの3点で実施した

 1学期に実施した王子の学習や「私の推薦する近野」の調べ学習の成果を,913日に中辺路町が熊野体験博のイベントの一つとして企画した「私たちの南紀熊野体験博」の場で発表した。発表に際しては,生徒の発表と同時に,発表の内容をパワーポイントでスクリーンに表示した。作成したのは教師であるが,当地方では,パワーポイントをこのような場で使ったのは初めてであり,以後,多くの研究会でパワーポイントが使われる先駆となった気がする。もちろん,聴衆の驚きも大きく,コンピュータに対する興味関心をかきたてたと考えている。また,この発表の内容は地元の新聞に取り上げられ大きな反響を呼んだ。

学校間の交流には発展していないが,個人レベルでは,メール交換をおこなっている。

また,へき地校においてはインターネットを積極的に活用していくべきだと考える。本校でも始まったばかりであるが,メールによって交流を推進し視野を広げることは特に大切である。