高校生のネットワーク・コミュニティ形成プロジェクト

北海道旭川凌雲高等学校  

 

 インターネットの教育利用は,一般にはその利用基盤が各地で整えられ,実証実験から実用実践の段階へと移りつつある。そこでは,生きるために必要な基礎基本となる知識の習得はもとより,自ら学ぶ態度や生涯に渡って学びつづけることへの動機付けがなされることが望ましい。そのためには,学校の枠組みの中だけで学習が完結するのではなく,社会との結び付きの中で学習を実感として捉えていくことが必要である。本プロジェクトは,こうした目標実現のため,自律的学習環境を創り上げようとするものである。

 全国の高校生が自らの学びたいという意欲からインターネット上に集いあい,テーマを設定し,インターネットテクノロジーを用いて学習環境を作り上げる。生徒たちが学びやすいと思われる環境を,生徒たち自身が工夫して作っていくのである。

 このプロジェクトは,インターネットの良さを手っ取り早く学習の成果に結び付けるようなものではないが,生徒たちが自発的に学習や課題解決に向けて行動を起こそうとするとき,必ずやその行動基盤としての役割を果たすであろう。そのような学習環境を提供するためにはどのような構造で環境作りをすれば良いのか,その時に生徒や教師はどのような態度で臨めば良いのか。社会が今求めている教育の基本的な姿を,このプロジェクトのもとに垣間見ることができる。

  (地域)分散プロジェクトは,Webやネットワーク・ニュースによって自律的学習環境として統合される。当初のWebは,ネットワーク・ニュースのアーカイバとして活用されることになろうが,本来はプロジェクトの顔としての機能や,実践が「協調・蓄積・継承」されていくための仕組みとして大きな役割を果す。

生徒たち自身が地域との関連を考え,企画し行動する経過をメールのやり取りで「共有」しあう。そしてその実践成果をWeb上に公開することで互いに評価し,生徒たち自身が次の活動の参考にする。それらを「蓄積」することで次世代へ学習資産として「継承」し,さらに望ましい学習環境として充実していくことが期待される。(広域統合)

さらに,これらの活動をWeb上で不特定に対して公開することに加え,意欲を喚起するためにも特定できる購読者に対して情報を発信していこうと,電子メールによる情報発信も行われる(ネットワーク・ニュース)。

 集いを終えての広域統合に関しては,Web編集が思うようにいかずに最終的には頓挫してしまった。これには,「Webを共同作業で作成すること」「地域分散プロジェクトのコンテンツ収集」「ネットワーク・ニュース担当への負担」など種々の要因が絡み合い,広域における協調作業の難しさを学んだ。

 協調作業を妨げる要因として,まず世代交代の難しさが挙げられる。それは基本的には地域分散プロジェクト運用の問題であるが,これらを広域統合しようとすると協調作業に支障が出る。各学校でのプロジェクト参加生徒が多数であり,生徒数の学年間のバランスがとれていれば良いのだが,簡単にはいかない。

 「地域分散プロジェクト広域統合」において,地域をグループに,広域を学級に置き換えると授業における実践の構造となる。また,地域を学級に,広域を学校に置き換えると学校を挙げてのプロジェクトを推進するエンジンとなる。このように,それぞれの置き換えによって,地域的に適当な規模でのプロジェクトを展開することができる。つまり,本プロジェクトの構造は,フラクタル(自己相似型)のように,実践を展開する規模に応じた活用が可能なのである。