バーチャル図書館

富山県立大門高等学校

 

  最近,本を読まない生徒が多くなり学校図書館を利用する機会が少なくなった。学校図書館の利活用を見直すために,パソコンやネットワークを活用した図書館の在り方を研究する。

 3つの企画は,おもに1年生「情報科学」の授業で実践した。自分の選んだ本の図書紹介Webページの作成は,まず身近な存在としての学校図書館を意識させることをねらいとし,CD-ROMソフトの利用は本による情報収集の一歩となるように知的興味をいだかせた。また,図書に深く接することができるように全国読書会を企画した。

(1) 学校図書館の図書紹介Webページの作成

本を読み,感想文を書いた経験はだれにでもある。そこで,学校図書館から自分の好きな本を選び,「書名」「著者名」「出版社名」「概要」「書評」などを記述した本の紹介Webページを作成させた。また,自分の読んだ本に関係する最適なWebページをインターネットで検索しリンクをはらせた。リンク先には『リンクのお願い』と題するメールを出させネットワーク社会につながる実感を持たせた。図書紹介Webページはデータベース化し,校内イントラネットで検索できるようにした。この活動を継続することにより,学校内で利用できる『学校図書館蔵書データベース』ができる。現在,約700冊がWebデータ化されている。

(2) CD-ROMソフトを活用した教科学習

 イントラネットで活用できる百科事典CD-ROMソフトを教科学習に利用した。CD-ROMソフトを活用した授業は,1年生の「現代社会」と「情報科学」の授業でティームティーチングとして行った。コンピュータ操作にあまり慣れていない社会科の教員とコンピュータ操作に慣れている教員がTTを組むことにより,お互いが協力してその得意分野を分担することができた。パソコン操作とプレゼンテーションの指導は「情報科学」の教員,課題決定や発表内容の指導は「現代社会」が担当した。表面的な情報収集は,百科事典(マイペディア’99)を利用していたが,より詳しい情報は図書館での書籍やインターネットを活用していた。

(3)ネットワークを利用した全国読書会

 2年前より学校内で実施している「メーリングリストを用いた読書会」を,全国複数の学校と実施した。読書会を活発に行うためにはどうすればいいのか。(しゃべれない)=(何も考えていない)ではないと考え,人前でしゃべることが苦手な生徒達が,ネットワークを利用することにより自分を表現できるかもしれない。そんなことを考え,生活環境・学校環境・文化環境などの異なる人たちが,メーリングリストを利用して意見をぶつけ合って,お互いの交流を深めることと本に深く接することをねらいとした。

 生徒にとっての読書感想文は,先生に見せるだけで友達に見せるものではなかった。当然,生徒は同い年の人が書いた文章を読んだ経験がほとんどなかったのである。彼らがふだん話している会話の内容は,テレビ・異性・勉強・遊びの話であり,本の感想や物事に対する自分の考えを述べたり,議論したりすることが皆無に近い状況であった。今回,書評の評価会をすることは大きな意味があった。「本の内容を深く読み取っていて感心した」「自分の意見や感想を述べるのがとても上手ですごい」「深いところまでちゃんと考えていてびっくりした」「それぞれ違った視点で考えていて,自分との考え方の違いを発見できた」など友達の作品を見て「すごい」という意見が多く見られたのは大変よかった。

 本を読むことで,論理的な思考が養われたり,物事を深く考えたりすることができると考えられている。また,文章をまとめる力やプレゼンテーション能力が養われ,質の高いコミュニケーションの手助けにもなる。また,パソコンとネットワークをうまく利用することにより,読書に対する意欲と学校図書館に目を向けるきっかけになればと思う。