Webページ作成を通して地域のまちづくり・人の輪作りを支援する

三重県立石薬師高等学校 

 

 現在,学校教育では「総合的な学習」,生涯学習では「地域のまちづくり」がキーワードとして注目されているが,インターネットを利用することで,この2つを連携させることが可能になる。本企画は,「Web作成」を通じて生涯学習の支援を行う,高校生情報ボランティアの育成を目指したものである。

こうした試みについて下村らは「Webページ作成と情報発信を仲介として,総合的な学習と情報教育,地域と学校,生涯学習と学校教育との3つの連携を図る」としている(1998[i])。

 生涯学習を直接支援し,高校生が地域社会に参画しやすくする準備として公開講座を実施する。

 三重県では生涯学習のための学校開放講座「まなびぃハイスクール」を開いている。この企画は公募制で,企画立案から受講生募集,運営まですべて学校に任されている。本校では19997月〜8月に「まちづくり・ひとの輪づくりに生かすホームページ作成講座」を開設した。参加者は28歳から63歳までの21名であった。講座の前半はインターネットおよびWebページ作成の基礎,後半は先に述べた「まちづくりをテーマ」としたWebページ作成である。本講座は,各自がテーマを設定し,調査・取材を行って作品を制作,最後に発表会(相互評価)を行う「学習者参画型(データベース作成)学習」とした。

課題発表(講座の趣旨説明)

企画書作成・テーマ発表会

調査・取材(デジタルカメラ貸出し)

作品製作

作品発表会(プレゼンテーションと相互評価)

評価による作品の改善と一般公開

 ティーチング・アシスタント生徒に本企画の趣旨を説明したところ,6名の賛同を得た。彼らには「出前型Web作成」用モバイルツールとして,デジタルカメラ・ノート型パソコン・ハンディスキャナを適宜貸し与えてた。

 阪神・淡路大震災以後,全国的に活躍するようになった災害救助ボランティアの全国集会「率先市民ボランティア三重サミット」が,近隣の三重県消防学校で開催された(99/12/4-5)。

 その際に使用された防災マップは,地域住民とともに本校生徒が調査・作成したものである。

 本プロジェクトは,この防災マップをWeb化して,一般に提供する試みである。今後,各自治会が調査・作成した防災マップを,地域住民と本校生徒が協力してWeb化作業を行うことになっている。

 本プロジェクトは,障害を持った生徒と仲間の高校生が,自分たちの手でバリアフリーマップを作成することを通じて,障害者問題への意識を高めるとともに,バリアフリーマップをWeb化して公開することで,情報提供と地域社会への呼びかけの試みである。現在予備調査は済んでいるが,本格的な活動はこれからである。

 学校と地域社会の双方が,お互いに足を踏み入れるようになって,「インターネットは石薬師」という意識が徐々にではあるが地域に浸透しつつある。本校はこれまでも,老人ホームや養護学校等の交流を行ってきたが,この取り組み以降,地域の清掃活動への協力依頼や,小学校・老人会行事への取材依頼(Web作成依頼)が頻繁に届くようになった。

 当初は公民館や授産施設等にこちらから出かけていくスタイルの「出前型Web」を考えていた。「佐佐木信綱プロジェクト」がこのタイプである。ところが「防災マッププロジェクト」のように,逆に地域から,活動への参加とWebの作成依頼を受けることになってしまった。言わば「注文型Web」とでも呼ぶべきものである。仕事は忙しいほどやりがいが沸いてくるものである。