学校図書館でインターネットを活用する

滋賀県立八幡工業高等学校

 

  学校図書館は,読書指導を通じて生徒の心や教養を育むばかりでなく,学習センターとして授業に役立つ教材を豊富に用意し,生徒の知的好奇心を刺激するような存在でありたいと願っている。そのために,従来の図書資料ばかりでなく,インターネットによって得られる情報も活用して,調べ学習を支援する体制を整えることにした。多様で豊富な情報に接する驚きや発見を通して,生徒たちの情報整理能力や情報活用能力を育成したい。

  本校は平成10年度から3年間,文部省の光ファイバー事業の研究指定を受け,校内にネットワーク網を設置して,全校をあげてインターネット活用に取り組んでいる。図書館にも端末をのばして,今年度からインターネットが利用できる環境になった。

  これから紹介する3つの授業事例は,いずれも図書館を利用して,約15千冊の図書資料とインターネットから得られる情報を使って行われたものであるが,最終段階では図書館にある1台のコンピュータでは到底間に合わず,情報電子科のコンピュータ室に移動して,40余台のコンピュータを使って授業を行うことになった。

世界史3年「20世紀の世界」 

 数年来,生徒が各自のテーマを設定し,レポートを作成して発表,討論するという授業を行っている。教師の側からの一方的な知識の伝達にならないよう,生徒が主体的に参加する授業を目指している。今回は,従来の図書館の図書資料を活用しての調べ学習に加えて,インターネットによる情報収集を取り入れた。

 生徒はまず,20世紀に起こったさまざまな世界史上の出来事から,自分が最も関心のある社会現象や社会問題について,テーマを設定する。そのテーマは,「チェルノブイリの原発事故とその後」「ベルリン封鎖と東西ドイツの成立,ベルリンの壁の崩壊」「マザー・テレサの救済活動」など非常に多岐に渡っている。

 インターネット検索の際には,キーワードの選択の仕方と,自分の疑問に応えてくれる情報かどうかの見極めが大切であることを指導した。生徒は情報量の多さに驚きながらも,活発な発表と討論,感想交流をすることができた。

国語U 3年「『近江の文学』の鑑賞」

 近江は歴史の宝庫であるばかりでなく,文学の世界でも,そこに生きる人間の生活が美しい自然と共に語られてきた。その伝統を受け継ぎ,さらに発展させるために,滋賀県国語教育研究会が編集した『近江の文学』(京都カルチャー出版)を使用して,郷土の文学に興味を持たせたい。さらに,図書館資料やインターネットを活用して,作家の著作への関心を高め,作品の舞台となった郷土への理解を深めるように指導したい。

 『近江の文学』を読ませて,興味を持った作品や作家を挙げさせ,同一作家ごとにグループを作って,調べる内容についてそれぞれ分担をきめさせる。図書館での調べ学習の時間には,図書資料だけではなく,インターネットで出版情報や市町村のホームページにもアクセスして,情報を収集するように指導しておく。

 作品の中に登場する地名から関係市町村のホームページへアクセスして作品の背景となった地域の特色について学習し,またこれに関わる伝説や物語がどのようにホームページに取り上げられているかを再確認した。作家や作品に関する情報収集に留まらず,郷土の歴史や文化,自然に関する様々な情報に触れることができたため,生徒たちは,身近な郷土を再発見して感動することもあった。

 美術I 1年「美術作品鑑賞と検索」

 美術における総合的な理解を深め,作家の心情や作品の意図,表現の工夫などを知るために作品鑑賞の時間を設けている。従来,教科書の図版を見るだけではなく,図書館を使かって美術全集や画集で興味を持った作家や作品を調べる学習をしてきたが,ここでは図書に設置されたでインターネットも活用して,作家や作品の情報を得ることにした。また,検索で得た情報により,世界の美術館にリンクして,更に多くの美術作品に触れることで美術作品鑑賞の環境の幅を広くしていきたい。

 またこの研究を進めるに当たって,学校図書館におけるインターネット活用の先進校である,滋賀県立草津高等学校(http://www.biwa.ne.jp/%7Ekst-high/)と滋賀県立日野高等学校(http://shg-hino-h.ed.jp/)の図書館を見学させていただき,いろいろ教えていただいた。近隣に,このように気軽に実際の様子を見せていただける所があると,非常に心強いものである。