生物・英語で国際交流

岡山県立岡山芳泉高等学校

 

 海外の高校生との交流を行い,両国の文化の違いや共通点の発見をし,互いに理解を深める方法の一つに,距離と時間の壁をなくし,また,情報を蓄積しているインターネットを利用する方法がある。電子メールを利用して,生活・文化の面だけでなく,身の回りの生物を写真や音声で紹介して自然環境の違いも理解させたい。また,インターネットが新教育課程における総合的な学習の時間に利用可能であるか本実践を通して検証したい。

 これまでの実践(平成9年度:電子メールで異文化理解講座,平成10年度:パソコン英語講座)から,互いに共通の話題があれば生徒達のメール交換が活発になることがわかっている。そこで,今年度は生物と英語の教員が協力し,身の回りの生物の画像・音声などのマルチメディアデータを活用することで,よく取り上げられる生活・文化・学校など日常の話題だけでなく,環境の違いを理解させ,生徒達の国際理解にも厚みをもたせたいと考える。同時に情報活用能力や自己表現力の向上を目指す。

 身の回りの生物をテーマにして,画像・音声を英文の電子メールに添付してメール交換を行ったり,またマルチメディアデータを活用して英文ホームページを製作することによって,英語によるコミュニケーション能力・コンピュータ及びソフトの基本的な操作能力に加え,視聴覚を通じて表現する方法を身につけさせる。テーマと表現方法の拡大により,より内容のある情報交換を図り,国際交流の意義を深めることをねらいとする。

 芳泉高校の第2学年では授業日となる土曜日を活用して教員各自の得意分野を生かした独自の講座を設定し,生徒は自由に選択して希望講座を受講する。今回の海外交流プロジェクトは,「パソコン英語講座」(開講3年目)及び「パソコン生物・英語講座」という名称で生徒に紹介した。希望者が多く,使用可能なコンピュータの台数(23台)を考慮し,両方の講座について,各46名を受け入れ,いずれも70分の講座をティームティーチングの形態で実施することにした。Eスクエア・プロジェクトには,「パソコン生物・英語講座」の方で参加しており,生物の教員1名,英語の教員1名が担当している。

ネットワークコンピュータの基礎と講座内での電子メール交換

  ネットワークにつながることによって,どのようなことが可能になるのか電子メールを中心に概略を理解させる。ネチケットに対する自覚などを深めつつ,AL-Mailによる電子メール交換の基本操作を理解させる。

 自分の持ってきた写真・絵などをスキャナを使って取り込み,ファイルにする操作方法を理解し,さらに,その画像処理にも挑戦させる。また,班内での電子メールの交換を行い,タイピング及び,AL-Mailの操作に習熟させる。

 ブラウザ操作の基礎的な知識を習得し,自己紹介や日常生活・学校行事などの様子を紹介するメールを作成,保存する方法を理解させる。

 交流相手校に生徒の電子メールアドレスのリストを送り,11のメール交流を開始する。第5回で用意しておいた紹介を利用しながら,できるだけ独自の個性を表現したメールが書けるよう助言する。放課後,希望者にはコンピュータ教室を開放し,自由にメールチェック・返信ができるように配慮する。

 本時はメールチェック・メール返信,及び相手に理解しやすい工夫をしたメール作成を行うことを指示する。

 1学期はワープロの入力から,スキャナによる画像の取り込みと画像データの加工の仕方,そして,AL-Mailによる生徒同士のメール交換の練習など,2学期からのシルバークリーク高校とのメール交換のための準備を行った。生徒が喜んでいたのは,画像データの加工であった。自由に色彩を変更したり,絵を上書きしたり,様々な変形文字を入れたりと,その発想力やデザインのセンスの良さは講座の意図するところとは異なるが目を見張るものが多かった。それにもまして喜んでいたのが,2学期になって初めて交流校の生徒から一人一人に宛てた電子メールが来たときであった。あちらこちらで歓声(喚声)があがり,早速英文でお礼と自己紹介の返事を出していた。生徒の生き生きとした表情がみられた。

 国際交流という面では,海外からメールが送信されるのを心待ちにして熱心にコンピュータ教室に通い,返信メールを見つめる輝く眼差しが印象的であった。相手にメールを書くために和英辞典を引いて下書きをしてくる生徒,相手の日本語のたどたどしさに自分が完全に正しい英文を書かなくてもいいとわかったという生徒,自分の英文メールに返事がきたことで英語に自身をもった生徒,相手が頻繁にメールをくれ友達ができたと喜ぶ生徒,日本では当たり前に見かける生物もアメリカでは見かけないらしいと環境の違いに改めて気づく生徒など, プラスに評価できる多くの面が生徒の姿に見られた。