踊るこらぼ

大阪教育大学教育学部附属養護学校 

大阪教育大学教育学部附属天王寺中学校 

 

 大阪教育大学教育学部附属養護学校では平成8年より,インターネットをつかって様々な学校間交流を行ってきた。今回は,本校の中学部,高等部の生徒が,同年代もしくは,近い年代の中学生と一つの事柄について,コラボレーションし,相互理解を深めていくことをねらいに取り組んだ。目的は次の通りである。

・両校生徒の表現力の向上

・活動を通じてノーマライゼーションの考えを共に深めあう

である。

 その方法として,本校の学校行事「ふようまつり」での創作ダンス「踊るこらぼ」を大阪教育大学附属天王寺中学校の生徒とマルチメディアを使ってコラボレーションし完成させる。

 ネットワーク上の会議室「踊るこらぼ」はBBSFTP機能がついたもので,大阪教育大学に設置された「OK11(大阪教育大学附属11校園)サーバ」内に作った。会議室は,関係者が出入りできるように設定した。

 まず,ビデオやホームページを利用して相手校の様子を調べる。中学生は障害を受けている子の基本的な理解のために調べ学習を自校で行なう。中学生は各自で「知的障害(児)」という言葉からイメージマップ(概念地図)を描くということから始めた。

 5/15(土)

本校生徒「パソコンサークル」

以下,中学生はすべて「選択教科技術」

中学生が附養のパソコンサークルに参加。養護学校生が中学生にメールの送受信の方法とお絵書きソフトキッドピックスを教える。その時の様子は次の通りであった。

 6/5(土)今日は,大阪教育大学附天王寺中学校の学校訪問がありました。パソコンサークルでは,S君の様子が印象的でした。メール送信の方法を一通り説明した後「では,実際にやってもらいましょう」と中学生と交代になった時,彼は自分から1人の生徒を指名しました。「全然できないのに・・・。」とためらっている彼女に対し励ましたり,指示通りにできると拍手をしたりととても彼の優しさがでていました。N君も「趣味はなんですか」など質問したり,こちらから積極的にアプローチしていくことにより,相手も少しずつ親しみを感じることができたように思います。(参観していた実習生の日誌より)

 それぞれの学校でテーマに沿って考える。思いついたら,どんどんメール等で提案していく。伝達方法,技術面は,教師が援助する。生徒は動き,音楽,衣装,大道具等を各自の興味あるところからネットワーク上の「踊るこらぼ」の会議室に投稿していく。

 毎週月曜日の11001200の中学部,高等部合同授業「運動」にて「忙しい,疲れた」「楽しい」などのイメージで,動きや群による表現をまとめていく。「忙しい,疲れた」などは,わかりやすかったのか,数人からアイデアがでてきた。

 養護学校生徒は,美術の授業で2点の中学生より提案されたデザイン画を元に,模造紙16枚を合わせた背景用紙2枚に描いていく。制作の様子をデジタルカメラに撮って,写真を「踊るこらぼ」へ投稿する。

 ネットワーク上の会議室「踊るこらぼ」には,65()のメール交換開始より116()の中学生選択教科「技術」の授業終了時までで127ファイルの書き込みがあった。

 障害者理解等の手助けにと「こらぼ質問箱」もつくったが,中学生からのアクセスはなかった。学校訪問でのパソコンサークル参加や3.10.2)に報告したようなメールがかわされるなど,生徒たちは,コラボレ−ションすることにより,自然体でつきあうことができたと考える。

 中学生は,授業前の段階では,初めて体験する附養との交流に対して,知的障害に対する認識が表面的であったり,知識偏重になっているため,不安要素が多くイメージされ,全体と結びついていたが,授業後は,障害を受ける子に対する偏見や憶測が取り払われ,その結果として多くのプラス要素のみが残ったのであろう。

ワンポイントアドバイス

電子メール指導を行う場合,(児童生徒,または教師であっても)イントラネットの環境でメールや電子掲示板の練習を行ってから,インターネットメールへ移行していった方が安全面や体験的学習ができるという点から良いと思われる。