養護学校におけるインターネット活用の試み

山口県立豊浦養護学校 

 

 養護学校の生徒たちは、知的・精神的な障害や言語障害、身体的な障害がある生徒たちばかりである。このような生徒の実態の中で、いかにインターネットを扱った題材で活動できるのか。これは、養護学校においては大変重要な課題である。なぜなら重度の障害がある生徒にとっては、インターネットを自由に使いこなすことは、それ自体として大変困難なことだからである。

 そこで、本年度の文化祭のステージ発表において、「民族衣装ファッションショー」を企画し、そこでインターネットを使って学習したことを、同時に発表する形を取ってみることにした。この形なら、障害がある生徒が中心になりながら、同時に無理のない形で、インターネットの要素も取り入れられると考えたのである。

 山口県立豊浦養護学校は、山口県下で唯一の病弱養護学校で、小学部、中学部、高等部の3学部が設けられている。高等部は平成9年度に新設され、今年度初めて3学年がそろったという、スタートしたばかりの若い学部である。高等部には単一障害学級(1コース)と重複障害学級(2コース)の2つのコースが並立しており、教育課程もそれぞれの実態にあわせた2種類のカリキュラムが行われている。

 これらの諸条件を検討していく中で、「文化祭のステージ発表を組み合わせた形としてのインターネットの取り組み」ということが考えられてきたのである。その結果、「世界の民族衣装ファッションショー」というステージ発表が企画された。

 つまり、生徒たちがモデルとなり、各国の民族衣装を実際に着て、インターネットで調べた、それぞれの国の簡単なあいさつの言葉や民族のこと、歴史などについて発表したり、その国にちなんだアトラクションをしたりするわけである。もちろん、BGMなどもその国にちなんだ音楽を流すことができる。また、民族衣装ならば、抽象的な国の説明にならず、視覚的に国のイメージと結びつけることができるので、養護学校の生徒たちにも理解がしやすくなる。

 この形式ならば、文化祭の舞台発表とインターネットの要素とを、同時に交錯させながら、その上で、重い障害がある養護学校の生徒たちが、そのまま全員で主役となり、舞台の上に立ち、かつ動きながら、ステージ発表をする、ということが可能ではないかと考えられた。

 インターネットの利用による各国の情報集め(地図・言語・文化・習慣・音楽・衣装の由来、等々)は教員たちで行った。そして各国の情報を基にして、脚本を作った。

 今回は実現できなかったが、単一障害学級との合同ステージ発表も実現可能であるように思われた。インターネットでの情報収集などは、単一障害学級の生徒たちなら、可能なことである。生徒たちが自分で調べれば、とても良い勉強にもなり、コンピューターに親しみ、世界同時性の感覚の体験もできる、等々、貴重な得るものがあったと思われる。また、同時に、重複障害学級の生徒たちと単一障害学級の生徒たちが、それぞれの長所短所を補い合い、助け合いながら、集団で、ひとつのステージを作り上げていく、ということが可能であったかもしれない。それが実現できていたならば、二つのコースが並立されている病弱養護学校としての本校の特色が、とても良く現れたステージ発表になったはずだと思われる。

 また、学校という場において活用される限りは、あくまでも中心となるのは生徒たちの活動であり、インターネットなどの技術はその補助の役割となるべきものである。とりわけ、養護学校においては、「はじめにインターネットありき」「はじめにコンピュータありき」ではなく、「はじめに生徒の実態ありき」という立場を貫くべきである。インターネットやコンピュータでできることが先にあって、そこに生徒たちをあてはめていくのではなく、生徒たちの実態において、コンピュータやインターネットを使うことで何ができるのか、から考えていく、という視点が大切になると思われる。