ネットワークを利用した海底からのリアルタイム遠隔共同学習

盛岡白百合学園中学高等学校

 

 岩手県には陸中海岸国立公園という自然の景勝地として有名であり、その沿岸・沖合は世界三大漁場の一つに数えられる地域を持つ。地域の子供たちがこうした世界に誇る郷土の自然環境を理解し、その大切さを学ぶことはアイデンティティー形成の上でも環境教育の視点からも重要なことであると考えられる。 

そこでこうした郷土の自然をフィールドとして、子供達と「一緒に」潜ってみるような実験的な授業ができないかと考え、平成11年9月29日に海底からの双方向型授業を行った。これは三陸のリアス式海岸の海底7bに教師が潜り、その海底と学校にいる小学生120名とがネットワークを通して画像・音声・文字をやりとりしながら生物や自然環境について学習していくライブ授業であった。

 大まかな仕組みは、海底からは5つの学校の教室までリアルプレイヤーを使用してライブ映像と音声が到達し、逆に子供達の感想や質問が一旦教室で教師のパソコンから文字として岸壁まで送られ、岸壁にいるアシスタントが音声で子供達の意見を次々と海中の教師に伝えるというものである。こうした双方向のやり取りを行うことによって子供たちは一緒に潜っている臨場感を体験し、三陸海岸について理解を深めたいと考えた。参加したのは、5つの小学校の4年から6年生まで120名の小学生であった。

 参加した子供たちのアンケートからは、どこの学校においても海への理解が深まった様子が伺えた。共通した意見として以下のようなものが抽出できる。「地元の海がこんなにきれいだと思わなかった。」「まるで自分も潜っているような感じだった。潜ってみたくなった。」「アメフラシが紫色の液を出すのにはびっくりした。」「先生とタコの格闘が迫力があった。」「タコが墨をはいて逃げていくところ。」「先生の(リクエストに応えて)宙返りしたところがおもしろかった。」「今まで見たこともない生物がいた。」「海の底がどうなっているのかわかった。」「海の色が青ではないことがわかった。」「その場で自分たちで考えた質問がインターネットに出してもらえるところがうれしかった。」

 参加校の先生方の意見は、実験的な取り組みながらも未来を感じさせる授業で概ね好評であった。

 また保護者は参観したわけではないが、事前に家庭用にパンフレットを配布してもらっており、家に帰った子供たちから授業の様子を聞いてアンケートに記入してもらった。その中の一例を紹介を紹介したい。「とてもいいと思いました。ニュースでも見ましたし子供から話しを聞いてとても感動している様子でした。」「とても楽しそうに話してくれました。内容の充実度、主旨がうまく子供に伝わっていることが感じられました。」「インターネットでは滅多に行けそうもない場所や、ふれることのできそうもない物が見られるという、こんなインターネットの使い方もあるのに驚きました。これから学校の授業も変わっていくのでしょうね。」「何回もやって下さい。」「我が家では子供が初のインターネット体験者となり、家族に自慢げに話す子供の姿が印象的でした。」など予想をはるかに越えた講評を得た。

 準備に相当の時間をかけたが、授業のインパクトは大きく子供達の驚き、郷土の自然の素晴らしさを満喫できた授業を実施できて本当に良かったと思っている。今後も環境教育の分野で情報ツールを活用した夢のある授業を展開していきたいと考えている。