メディアリテラシー教育とその環境に関する国際交流および調査

同志社国際中学校・高等学校 

 

 同志社国際中学校・高等学校コミュニケーションセンターは従来の図書館,コンピュータラボ,視聴覚施設,展示・プレゼンテーションスペースを統合したまったく新しいタイプの複合学習施設として,この2年あまり生徒・教員による利用を重ね,様々な実践を行なってきた。筆者は,そうした活動を支えるスタッフの一員として,新施設における情報サービス提供に関わる問題に対応してきた。

 本企画では,英国,ドイツの教育機関への訪問調査を通し,またそこで学習環境を支えるスタッフとの交流を通して,よりスムーズな学習活動および国際交流を可能にするための,学習環境の整備と支援のあり方を,学校司書の視点を通して考察してみたい。

 同時に筆者は,高校1年生必修科目である「コミュニケーション&メディア」で,センター主任とともにティームティーチングを行なっているので,イギリス,ドイツの訪問校の中からEメールを利用した交流を授業の中に取り入れる試みを行ないたい。

<まとめ>

 本校コミュニケーションセンターの施設や人員配置は,アメリカの学校図書館の影響を多く受けている。しかし日本においては,学校図書館専門職の業務や配置についての問題がいまだ解決しておらず,学習活動に対する学校図書館のサービスが十分に行われないケースも多い。イギリスの自主体単位のサービスセンターの存在や,ドイツのように公共図書館と学校との連携の強化など,さまざまな複合的な支援のあり方を考えることが重要ではないかと思われる。こうした横断的な施策を実現するためには,学校図書館の未来像・理想像について,幅広い討議がなされる必要がある。コンピュータやインターネットの導入を核に据えた学校の情報化の過程に学校図書館のスタッフの参画が望まれるとともに,学校図書館の論議に,情報教育や教育工学の専門家,各種情報やメディアの専門家に参加してもらい,新しい時代の学習センターに関する議論が幅広く行われる環境を作っていくことが大事ではないかと思われる。 

<英国・ドイツ訪問調査からの知見> 

 ホーリークロスコンベントスクールは情報教育をも視野に入れた教科横断型学習の推進校として国際的にも注目を集めている。同校では,Director of Studies(総合教科主任とでも呼ぶべきか,教科横断学習の各教師間のコーディネイトも行なう)のローレンス・ウィリアムズ教諭の精力的な活動により,ナショナル・カリキュラムに則りながら,かつ教科横断的なプロジェクト学習とポートフォリオ形式を用いた生徒たちのリサーチ・プロジェクトが進行している。興味深いのは,IT(情報技術)教育のスキルがポートフォリオ制作の中に織り込まれていることで,様々なコンピュータソフト活用の技術を使いこなしていく様子がポートフォリオのページを繰るにつれてわかるようになっている。  

 「学校図書館サービス」は,学校図書館に対する総合的な支援を行う第3セクターの機関であり地域の学校図書館活動に対してさまざまなサポート業務を行っている。サポートの内容は,基本図書の選定,単元単位で使用する図書資料のセット貸し出し,移動図書館などである。移動図書館ならぬ移動コンピュータ室を兼ねたワゴンもあり,デスクトップコンピュータ3台と携帯電話を搭載し,まだコンピュータ設備のない小学校などを巡回している。機器と共にCD-ROMなどのソフトも搭載しており,扱う資料は図書から視聴覚資料,コンピュータソフトに及んでいる。同サービスでは施設内に地域の教員のIT対応の研修スペースも設けており,随時教員が利用できるようになっている。

 ロンドン大学では教育学担当の教授陣にインタビューを行い,IT教育についての方法論とその評価についての研究が整然と進められている様子に強い印象を受けた。現在日本でもさまざまなコンピュータの教育利用の実践が進められているが,そうした多様な学習活動の理論化や評価が今後は重要になるだろう。

 ドイツでの訪問校のひとつ,ボン近郊ヘネフにあるヘネフ・ギムナジウムのドイツ語の教諭であるカール・アッシェンマッハー氏はEメールを使って日本の小学校との交流活動を行なうなど積極的にコンピュータを活用した授業を推進しておられるが,そうした経験を買われて,地域の小学校にコンピュータ・コーナーを作る(コンピュータを地域の行政機関が各学校に一定数配当する代わりに学校側で導入,活用のための努力を行なう)プロジェクトの委員を務めていた。滞在中に地域の教育行政官が主催する小学校教諭向けの初集会があり,見学する機会があったが,小会議室に100名近くがすし詰めとなる大盛況となり,関心の高さをうかがわせた。