へき地小規模校の児童の主張性向上プロジェクト

宮城県東和町立嵯峨立小学校

 

 質問紙を用いた調査によって,他人を意識したコミュニケーションに関して大規模学校群の因子得点が小規模学校群の因子得点より有意に高いことが報告されている(小松1999)。

 ネットワークを利用して,擬似的に形成される集団を拡大することによって,情報教育で求められている「相手の状況をふまえて情報を発信・伝達できる能力」をへき地小規模校の児童にもつけさせたいという思いが本プロジェクトのはじまりである。

 当校の児童の実態として,「内向的であり,自校内でのコミュニケーションは円滑に行えるが,対外的なコミュニケーションは緊張してしまい不得手である。」ことが挙げられる。

 情報教育のねらいに即せば,小学校で求められている「課題や目的に応じて情報手段を適切に活用することを含めて,必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し,受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力」=「情報活用の実践力」の「相手の状況などをふまえて発信・伝達できる能力」が不足しているということになる。

 本プロジェクトにおいて,海峰小学校との児童の交流は,情報機器を次のような場面で活用した。

(1)      児童はメールアドレスをもっておらず,学校のメールアドレスや担任のメールアドレ

  スを利用して送信しあった。

(2)      発表の練習とテレビ会議の様子をビデオに撮影し視聴することによって自分のコミュニケーション活動の話題に気づかせる。

 当校の児童にとって,交流学習は全く初めての経験であり,期待も大きい反面,不安も大きかった。

 2回目の交流は,海峰小学校の児童が椎茸栽培に取り組んでいるが上手に栽培できないということを聞いて,当地区の地場産業が椎茸栽培であることから,椎茸栽培の仕方について説明することとなった。また,2回目の交流前後に海峰小学校からはケナフ煎餅や椎茸煎餅が届き,本校からは特産の椎茸を送った。

 本プロジェクトは,ネットワークの利用促進やネットワークリテラシーの育成を正面からねらうのではなく,ネットワークを利用しながら児童のコミュニケーション能力の育成を目的に取り組んだ。ネットワーク機器としては,インターネットに接続されたコンピュータ,FAX,電話などを利用した。ネットワークの教育利用は,ネットワーク利用や機器操作が目的になる傾向があるが,ネットワークを利用するからこそできる学習形態,学習内容を模索したい。

参加・協力校

富山県氷見市立海峰小学校 ホームページ http://www.tym.ed.jp/sc200/

引用・参考文献

国立教育研究所(1988)『へき地教育の特性に関する総合的研究―児童の教育環境としてのへき地性・小規模性の測定を中心に―』

三好京三(1977)『先生も涙ながれたぞ 僻地で教えた14年間の記録』,学陽書房,pp.19-20.

小松英明(1999) 小規模校における児童の主張性に関する研究 上越教育大学大学院修士論文