教育インターネット・サミット 

 

 これまでCECを中心として,1998年CEC主催「国際シンポジウム」「国際交流ガイドブック」「継続的国際交流の実践」などインターネットを利用した国際交流に積極果敢に参加してきたが,これらの活動を通して,インターネットのみならず,人的ネットワークも大きく広がりつつある。

 かつて,日本のインターネット利用の黎明期であった1994−96年は長い流れの中で国際交流のあるべき姿を模索してきた。しかし現在,生徒達も独自のアカウントを持つようになり,企業人だけでなく教員の多くが名刺に電子メールアドレスを記載するようになった。この状況は日本のみならず,世界同時に進行しており,昨年度CEC成果発表会における坂元先生の講演にも,ケルン憲章をはじめとするすべての国においてインターネットの教育利用が進められつつあることが報告されている。また赤堀先生のパネルディスカッションにおいても現場での工夫と熱意がつたわってきた。

 しかし,それでは誰でもすぐにインターネットを活用した授業や教育実践が可能か,というと別問題であり,そこには多くの困難や必ず通らなければならない道程がある。実際に学校でのインターネット活用はまだ始まったばかりであり,ましてや授業の中で国際交流活動を行っている学校は限られている。

 以上のような状況を踏まえ,本プロジェクトでは,これから国際交流を始めようとする学校現場の教師や生徒たちに興味を持たせるのと同時に,協働実践を通して教師や生徒達に実際に海外の現実の姿に触れさせ,そこから国際交流を始められるよう国際交流の輪を広げられる仕組みを創ることを目的とした。イベント開催や事前事後の交流プロセスなども公開し,これから国際交流の研究会や発表会を開催しようとする方々への指針となるべく,次世紀に相応しい国際交流の姿を模索した。

5年目を迎えるアジア高校生交流を国際連携へと高め,世界の教員,生徒が利用できる英語教材用のサーバを設置した。

ワールドユースミーティング2000

昨今のインターネットをはじめとしたニューメディアの進歩は,教育現場,国際交流団体,ひいては個人の国際交流のあり方を大きく変える可能性を持っている。こうした新しい交流の形を広く市民に紹介すること,ならびに時代を担う青少年の国際交流の機会を提供することを目的に,世界各地の青少年が情報の交換をし,その成果を持ち寄り,交流を深めるために本事業を開催した。

 2003年までに小中高校の全ての生徒,児童に対してインターネットをはじめとする情報教育が授業の中で展開される。高校においては新教科「情報」が授業の中で「必修」となる。情報立国を目指す政府施策も多く打ち出されており,また,このようなリテラシーを活用した生徒の自主的な活動を保証する「総合的な学習の時間」も小学校から高校まで設定される。

 インターネットの教育利用は世界同時進行で展開され,世界的にもネットワークを通した「共同授業」「国際連携」が取り組まれている中,今後の国際連携をさらに一層確固たるものにするためにも今回のミーティングは大きな意味を持つものとなったと確信する。

 インターネットというバーチャル上の世界を使い,下準備のための交流を行い,次に直接会うという「ワールドユースミーティング」と銘打った交流の場面を設定して,交流内容を飛躍的に高める。技術的にもテレビ会議など,Web,電子メールなどを活用し,多くの学校がどの切り口からでも参加でき,交流の方法が学べるようにする。

 学力テストに偏り気味な英語を,コミュニケーションのための英語として体験できるような場面をバーチャル上に設定し,さらにはホームステイ受け入れ体験などの直接体験の場を設定する。また,これらを多くの学校に広めるため,東京国際大学,帝京科学大学の教員に評価を依頼し,今後多くの学校が参加できるよう,インターネット時代の英語教育の指針を探る。

日時 平成12722日(土)〜23日(日)

会場 名古屋国際センターホール 財団法人名古屋国際センター

450-0001 名古屋市中村区那古野一丁目47番1号

定員 300名(高校生をはじめとした青少年,教師,一般,海外参加者)

内容 世界各地よりインターネットで交流した若者を国際センターに招聘し,市内近県の高校生,中学生,留学生,教員と意見交換,交流会を行う。

 ワールドユースミーティングはこれまでのインターネットを活用した国際交流の延長線上にある。Iearnの活動への参加,アジアインターネット高校生交流などである。

基本的には「バーチャルでの電子メールを中心とした交流――>直接会う――>さらなるバーチャル上での交流」という螺旋的な発展を意図した国際交流である。

 インターネットがあるから会わなくてもいいのではないか?という疑問の声もある。しかし,バーチャルとリアルが必要なのである。

 今回訪問した海外高校生の感想には「日本人の生徒とコミュニケーションしてみて,彼らの努力と真剣さに驚きました」「日本の生徒とのプレゼンテーション作成には戦いもありました」などの感想があった。共に過ごす時間の中でそれまでのバーチャルでのコミュニケーションが生きてくるのである。素材を準備し,さらにそれを結晶化させる時間として「直接会う日本での会議」が必要なのである。

これまでバーチャル上だけの国際交流にも参加してきた。最終プロダクトとして出版物や,ホームページがあった。生徒はある程度感激するものの,それは長くは続かなかった。卒業後続く生涯学習への大きな後押しにはならなかったこれまでの経験がある。

 ネット情報コミュニケーション>直接会いコラボレーションを行う>さらに交流という形にまで私たちは到達することができたと考えている。

 

参加国

 ドイツ,アメリカ,韓国,台湾,ジンバブエ,日本

韓国 新亭女子商業高校 Shin-Jung Girls' Commercial High School

ソウル女子商業高校(ビデオ会議参加)(Seoul Yo Sang 

ジンバブエ ムファコセ高校

日本 福井県立福井商業高等学校 名古屋市立西陵商業高等学校

名古屋市立緑高等学校 三重県立川越高等学校

三重県立員弁高等学校 三重県立四日市西高等学校

三重県立みえ夢学園高等学校 南山国際中学・高等学校

名古屋女子大附属高等学校 川崎市立商業高等学校

栃木県立氏家高等学校 菰野町立菰野中学校 松阪市立中部中学校 

内容 世界各地よりインターネットで交流した若者を国際センターに招聘し,市内近県の高校生,中学生,留学生,教員と意見交換,交流会を行う。

現状の相手国イメージを素直に伝え,インターネットを使った交流によって,どのように是正されたかを日本と相手国の生徒が共同発表を行う。

 

 今回訪問した海外高校生の感想には「日本人の生徒とコミュニケーションしてみて,彼らの努力と真剣さに驚きました」「日本の生徒とのプレゼンテーション作成には“戦い”もありました」などの感想があった。共に過ごす時間の中でそれまでのバーチャルでのコミュニケーションが生きてくるのである。素材を準備し,さらにそれを結晶化させる時間として「直接会う日本での会議」が必要なのである。

 これまで多くの国を訪ねてきた。また,国をまたぐ国際メーリングリストにも参加してきた。これらの経緯から今回の様な海外参加校と交流することができた。一例として台湾の例を挙げよう。

 台湾のナンシン・チェン博士とは福岡の学会でお会いすることができた。確か1995年頃だったろう。1997年に私の書いた論文がinet'97の発表レポートにも採択され,クアラルンプールで再び会うことができた。その後もインターネットを通して国際交流を行いたい趣旨を彼に伝え,日本で国際交流のシンポジウムが開催されるときなどは講演者として日本に来て頂いた。1998年には(財)コンピュータ教育開発センターの主催する「国際交流シンポジウム」や名古屋での「スクールネットカンファレンス1998」にも講師として参加して頂いた。このような機会を通し,このワールドユースへの企画をイメージしながら話し合ってきた。また,これらのアクティビティに参加して頂くことによって,日本でのインターネットの教育利用の現状も把握してもらうこともでき,台湾側には日本サイドのメッセンジャーとして動いてもらうことができた。

日本語教員サポート用メーリングリストでは,日本の先生だけでなく大学,サポート企業の方々を入れたメーリングリスト,主に各校での動きの報告,パワーポイントの作成打ち合わせ,当日のプログラムなどを中心に話し合った。

 生徒用も英語版,日本語版を作成し,それらを全て日本語教員サポート用メーリングリストに自動転送させた。

 今回はプレゼンを各ユニットで行った。従って生徒用のメーリングリストも台湾グループ,ドイツグループなど発表グループごとのメーリングリストを作成し論議しやすい仕組みとした。

 主立ったMLは西陵商業高校のサーバで行ったが,台湾グループのMLは福井商業高校,韓国ユニットのMLは四日市西高校で行うなど,負担の分散化と参加教員のML管理スキルアップを考えた。

 

テレビ会議システムの利用による交流促進

10月18日に同じ韓国のチョ先生の学校とCu-SeeMeセッションを行う機会があったが,会場はホテルでISDNの臨時回線を引くほかはなかった。そこでこの「画像を止める」手法でストレス無くセッションを続けることができたのである。

 これは,NTTのテレビ会議システムであり,ITU−T国際標準( H.320) に準拠した方式ですので,その規格の機器を使っている相手であれば国内海外を問わず通信をすることが可能である。コンピュータを使ったテレビ会議の代表的なソフトには,CU-see-MeNetMeetingなどインターネット回線を利用するものもありますが,フェニックスは,電話回線を利用します。国内を相手に利用する場合の通信費は通常の電話代(接続の方法によって2台分)と同じであるが,国際交流で利用するには,国際電話代が必要であり通信費の確保が問題となるかもしれない。しかし,その分,音声・画像とも安定しており,時と場合によって使い分けをするとよいであろう。

 フェニックスには数種類のタイプがあり,手頃な価格の物としては,コンピュータに挿すボード型(約20万円)の物や画面も備えた小さな一体型のフェニックスミニ(タイプSが約6万円,タイプMが約7万円)などがある。海外ではピクチャーテル(PictureTel),ポリコム(POLYCOM),ブイコン(Vcon)などとして知られており,日本の製品との互換性がある。 電話代は,テレビで宣伝している「アメリカまで1分50円」というアナログ電話でなく,自動的にISDN回線を使うことになるので料金体系が異なっており高価である。しかも,普通128Kbpsを利用する。これは通常2B通信と呼ばれ,2回線分を束ねて利用するので料金も2倍になる。目安として,1時間あたり約2万円程度の国際電話代が必要と考えればよいであろう。片方だけ使って64Kbpsだけでの通信もできる場合がありますが,画質音声が劣化するのであまり勧められません。それよりも,むしろISDN回線を3本束ねて384Kbpsの高速接続をする高性能機種もある。

 毎週の授業で国際電話をかけてテレビ会議をすれば,その電話代が膨大になるので,あまり現実的ではないと思う。したがって,校内の国際交流イベントとして行うか,授業の場合でも,節目としての位置付けで動機付けのために行い,そのイベントを目標に授業を組み立てるといいのではないか。生徒達も,そのイベントで,海外の生徒と話をしなくてはならないという状況におかれると,英語の学習に意欲がわくのは当然のことであろう。

 接続地点が1対1のテレビ会議だけでなく,参加者が何人でも可能である。受信する画面を分割してそれぞれの参加者の画面を同時に映し出すこともできる。画面をあまり分割すると見にくくなるので相手が4者程度の場合に適していますが,それ以上の数の場合は,送受の2画面にそれぞれ1者だけが映し出され,発言した音声により,自動的に発言者の画面に切り替わる接続方法がよいと思う。この多地点接続は,参加者の電話番号にダイヤルをするのではなく,あらかじめNTTフェニックス通信網に申し込んで会員になり多地点接続用の電話番号を予約して,その電話番号へダイヤルする方式である。

 台湾の高校生と,名古屋で開催されるワールドユースで共同研究発表をするための打ち合わせとして,日本側のプレゼンを右の小さなスクリーンで映して,それをカメラで撮って相手にもリアルタイムに送信して,コメントを交換した。即答できない難しい質問も多く,考えながら回答しなければならず,考える時間は沈黙の時間でもあり,相手校の質問に答える前に,会場に参集している日本の生徒の間だけでの小声の会話もあり,それが,本格的な会議の雰囲気でした。カメラは天井に2台設置されており,舞台を撮ることも客席を撮ることもできるので適宜切り替えて使う。ワイヤレスマイクを数本用意して,前の画面に向かって会話をした。会場は,ボード型フェニックス(Ver1.5)がパソコンに設置されており,120インチの画面に映し出すことができる三重県立みえ夢学園高等学校の国際経済総合実習室である。

 

アジア高校生インターネット交流プロジェクト

 リアルな交流として,日本の高校・大学−台湾の高校・大学生との交流プロジェクトを行った。相互のプレゼンテーション,パーティーなどは,自分たちの手で行うことの連帯感・充実感などを実感でき,「コミュニケーションとは・・・」を十分体感できたプロジェクトとして終了することができた。

2000年12月23日 東京 名古屋より 生徒25名 教員ほか17名

(東京国際大学,帝京科学大学,愛知淑徳大学,東海地区高校 7校の連携の下)

台湾高雄市を訪れる。現地はAJET組織(高校,大学,中学)の連携組織

歓迎レセプション 日本側挨拶 生徒 英語・中国語にて

          福井商業 「日本の年中行事と台湾文化」

員弁高校 「台湾と日本の誤解−解決−イメージ」

現地高校との共同クリスマスパーティー

12月25日 高雄−台北  異文化交流 異文化理解

 台湾側の組織は我々の目標となるものだった。大学生をコーディネータとして運営を彼ら彼女たちの主体性に任せていた。事実私たちのとの電子メールによる交流はすべて細部にわたるものは大学コーディネータとの連絡によった。また高校,中学の先生も主体的に加わっており,組織あげての歓迎,受け入れができていた。

中山大学 陳先生――大学学生

高校,中学の先生――高校生徒の自主的,主体的な活動

(プレゼンテーション,クリスマスパーティーの企画運営)

 台湾の生徒とプレゼンのあとホームページを作成した。

 それぞれ台湾と日本の生徒を8グループに分けそれぞれで作業を行ったが,事前のミーティングを十分にできなかった状況の中,フェースtoフェース交流の結果としてWebページのような成果を出すことができた。

共同作成したWebページ

 生徒はプロジェクト参加によってどのように自分が成長したかを記録しWebで発信・共有した。

プロジェクトの成果

プレゼンファイルの作成,自己紹介英文の作成など,生徒の努力の結果をすばやくWebに掲載するなどして,その評価をあたえる。そのことによって行ったことを返してやり,達成感を味わわせることが重要である。このようなコミュニケーション型でない,英語を学んできた日本の生徒に生涯教育も含めた英語学習のあり方を提示し励ました。そのため相互の国のインターネット教育情報は短くとも相手に情報提供することが必要である。 

 海外生徒の感想も含めた形で,報告冊子を作成し,学校機関,教育委員会,図書館などに配布した。資料請求が多く寄せられている。

 インターネットからの情報提供を考え,英語の教材として,国際交流の題材として利用できるようwebから情報を取れるようにした。

 ワールドユースミーティング2000とアジア高校生インターネット交流プロジェクトを機軸とした本プロジェクトにおける教育実践活動は,全てWebに掲載している。

本プロジェクト概要

http://www.japannet.gr.jp/cec/e-square.html

ワールドユースミーティング

http://www.japannet.gr.jp/w2000/

アジア高校生インターネット交流プロジェクト

http://www.japannet.gr.jp/w2000/tw/

テレビ会議セミナー

http://www.japannet.gr.jp/w2000/cu/index.htm

 今回のプロジェクト活動を通じてプレゼンデータ等事例や発表者を始め実際に携わった関係者から各々の記録を集めモデル的なドキュメントの蓄積を行った。

 課題として,今後も活動を継続・発展させていくためには,国内においては学校連携をより拡大し学校を中心とした教育関連支援組織の生成,国際的にはそれを基とした国際連携組織への発展が重要になるだろう。

 さらに,具体的なインターネット・コミュニケーション・ツールとしての英語という観点からの英語教育のモデルの再構築も視野に入れて,前掲の活動支援環境システムと相乗させ,単に情報教育というフィールドからのアプローチだけだけでなく,多くの学校が参入しやすい活動モデルと支援環境を共有できることが,今後の活動を発展させるもう一つの課題となるではないだろうか。